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素の私と強権女王

 そして、私の転移した場所はキルカスパートスの付近のはずだが


「グルァァァァ! ギャアア!」

 目の前には、見た目にも寒そうな氷のように青いドラゴンの見えるが、氷で構成してるわけではない。

 しかし、そんな悠長な事を考えていると、ドスン! と尻尾が私に襲い掛かる。当然、当たらない程度に左側に回避する。

 この時点で立ち位置がドラゴンの真正面となっていて、すぐに氷のブレス攻撃をしようとしてきたが私がやらせる訳もなく、ドラゴンの口まで飛び込んで、強力な雷魔法を大きな球状で送り続ける。

 すると、最初はほとんど氷のブレスは勢いを弱めなかったが、ある時点を境にして、ただの大きな水玉になり、帯電して、やがては全身を感電させ、その巨体は立ったまま絶命した。

 私は地面に降り、黒焦げになったドラゴンを眺める。

「寒そうなのは見た目だけかな」

 凍らせる攻撃をしていたので寒さに強そうではあるけれど、氷の体と言う事でなければ普通のドラゴンと大差ない。

(あれ? 普通のドラゴンって何だろうか)

 いや、そもそも普通のドラゴン自体を見た事もないから普通も何もない。私はドラゴンに対して特に役に立たなさそうな事を考えていると

「なあ、あんた。突然姿を現れたようだけど、どこから出て来たんだ?」

 背後から声が聞こえたので後ろを振り向いた。すると、先ほど声をかけたと思しき男性冒険者と、さらに後ろには二十人ほどの同業者らしき格好をした男女が集まってこちらを見ている。

「こんにちは。ここはキルカスパートスで合ってますか?」

 臆している場合ではないので、場所だけは最低でも聞く事にした。

「ああ、キルカスパートスの町から少し離れた場所だが、俺達はそこに息絶えている〝ブルーアイスドラゴン〟の討伐をこいつらと一緒にやってたところだ」

 彼の言葉を聞く限り、どうやら集団でしか倒せない物らしい。今の私には些細な問題でしかない為、目的地を教えてもらう事にする。

「キルカスパートスの城への道を教えて頂きたいのですが、どちらに行けば良いですか?」

「ああ、それは構わないが……このドラゴン、俺達が討伐したって扱いにしても良いか?」

(多分、手続きが面倒だからと言う理由だろうな)

「とりあえず、私が倒したと言う事だけ伝えてください。後は討伐処理の手続きをそちらでやって頂けると助かります」

 突然出てきたこの巨体に時間を取られたくないので、冒険者達に丸投げするように頼む。

「分かった、完了手続きはこちらでやっておこう。それよりもあんたは、あれ? ひょっとして……おい、ケンプ。さっき、異世界の女史がどうこう言ってなかったか?」

 後ろの集団から一人が出てきた。この男性も普通の冒険者に見える。十字架が上部の飾りとして目立つ杖と言う事を除けば。

「今、調べます。上級ドラゴンを単独討伐できるのはどう考えてもおかしいので」

(運悪く出てしまったドラゴンよ、自らの不運を嘆いてください)

 私の前にさえ出なければ、命永らえる事ができたのにと思わざるを得ない。

 ほんの数秒で私の鑑定が終わり、彼が怯えている。

「間違いありません。彼女は先ほどブンターヒンメルを転移で移動した方らしいです」

「おい、位が高そうだからって態度を豹変させる事が失礼だろうが」

 代表らしき冒険者はケンプと言う冒険者に注意をした。

「すみません、この国の近くと言う事しか頭にありませんでしたから」

 私は冒険者にとりあえず謝罪をする。しかし、注意した彼は首を横に振って

「いや、貴女が謝る事じゃないですよ。それと、女王様が到着を心待ちにしてるので、そこの城門から町に入ってください」

 目的地である国の入り口を左手で示す。確認すると、横に続く無機質で平坦な白壁にぽっかりと四角でくり抜いたような入場口が見える。内部の右側にさらに空洞があるが、そこに一人座って待機している。しかし、その人は衛兵には見えないので聞いてみる。

「この国は衛兵は居ないんですか?」

「ああ、衛兵じゃなくて〝入国管理官〟だな。あいつの職務って言うのは」

 ファンタジー感を台無しにする単語が出て、私は思わず顔が引きつってしまう。その様子を見た彼は

「まあ、なんだ。入国はあいつ一人で全てやってるから、手続きはあそこでやってくれ」

 まずは手続きをして入れるようにしてくれと言う事だろう。私は一刻も早く彼女と対面したかった為、彼らに一礼して入場門に向かった。


 一分半で着いた場所で、右側に座り続けていた彼は私に声をかける。

「お待ちしておりました。先ほど突然出てきた時は驚きましたが、女王様が認めるだけの事はありますね」

(私の扱いって、この国ではどうなっているのだろうか)

 どうも、私への扱いが女王である彼女と同等の扱いを受けている気がして、別の意味で警戒してしまう。

「通常であれば、入国手続きは魔力反応による個人特定できる物を登録して行うのですが、貴女の場合は既にここからでも確認できましたので、私が紋章を写せば手続きは完了です」

 そう言って彼は私の左手に魔法で紋章を写す。出てきた物はウサギに外側を二重丸で囲んだような紋章で、十秒ほど経つと消えてなくなる。

「これで入国手続きは完了です。今の紋章は女王様に託された物でして、キルカスパートスの中であれば、どこにでも入る事ができます。この紋章と同じ物で登録してる方は、他には静菜様のみとなりますので、慎重な行動をお願いいたします」

 私に注意事項を言って入国を促した。私は「ありがとう」と彼に一礼してから入場門の向こう側に行った。


「しかしこれは……異世界じゃないね、どう考えても」

 歩いて最初の建物を見て思ったが、もう少し足を進めた結果。見覚えのある施設が並んでいる。

 基本的にあるのは住居ビル、そして食べ物屋、カード屋って何? 後は図書館や劇場、学校、病院は魔法で完治できるような気がする。公園は大きめの広さであり、道路自体は舗装されてない為、ギリギリ異世界感はある。あるのだが、やはり現実に引き戻される瞬間の方が多い。

 思わず声が出てしまったほどだが、女王である彼女は何を思ってこのような景色にしたのだろう。


 気を取り直して私は奥と思われる道を行くのだが、他の国と違って一本道で城に行ける構造ではなく、適当に真っすぐに行っても別の施設が見えるだけで目的地へ行けそうな気がしない。

(魔力反応も当てにできないとは……普通にセキュリティを考えたらこのくらいは考えられるか)

 少しばかり盲点だった。私自身、この世界に関しては魔力反応を頼りにすればどうにかなるだろうと高を括っていたのもある。しかし、この国においては別の道順判断が必要で、今はそれが何かは不明だ。仕方ないので、付近を歩いている人に聞く事にする。

「すみません、城へ行く道を教えて頂けないでしょうか?」

「ああ、あなたは確か美結様ですね。他国から訪れた方は皆、このような事になるんですよ。女王様の城に迷わず行けるのは我が国で生まれ育った者だけですね」

 どうやら、この国独自の道順判断があると見ていいだろう。

「それから、道でしたら領地の中央が城になりますので、右往左往しながら頑張って近づいてください」

 今の説明で、道を複雑にして手順を多くし、城を襲えないように対策している事が判明した。

(日本的と言えば日本的だけども……)

 いや、前もって情報を聞いてない私も迂闊(うかつ)だったのかもしれない。

 とにかく、改めて足を進めて目的地を目指す事にする。


 今度は三十分ほどで目的地に着く事ができた。

 領地内に入ってから道を聞くまでに三時間半経っており、最初から道を聞けば一時間もせずに到着した事を考えるとかなりのタイムロスと言う事になる。正直、疲れたのは言うまでもない。

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