三章 2
翌日、昼食前の対面で私はギルドメンバーへの情報共有を希望した。
国王達も提案に賛同して、昼食後にギルドへ向かう事になった。
前回と同じ時間でギルド内に入り、今回もウセアに会った。
初対面であちらも顔を覚えている為、私を見るなり座っていたテーブルに誘って彼女と同じテーブルの席に座る。今はまだ、彼女しか居ないが、少しすれば仲間が来ると言う事だ。
「私はキュールと話してくる。昨日の件はどう考えても、無視できる物ではないからな」
私が身を竦めてしまうところを見て、ただ事ではないと思ったのだろう。ギルドに素早く情報が行き渡るよう、話し合いをする事になっていた。私もまずはウセアと話し、どうにかしないと言う思いはある。
「それにしても、あちらの世界は基本的に平和なところだと聞いたんだけどねぇ。どうにもならない奴と言うのは、どこに居てもおんなじと言う事かね」
どうやら、既に情報はそれとなく伝わっているらしい。そして、彼女は私の為にどうにもならない両親に対して怒ってくれている。
「申し訳ございません。こればかりはどうにもなる物ではありませんので」
「いや、静菜様が謝る事じゃないよ。娘に対するの件も私にそっくりな叔母って人が助けなきゃ、されている可能性を考えると尚更ね」
家庭内の性的虐待についてはこの世界の方が多いとは思うけど、私の世界でも表立っていないだけでそれなりにはある。両親の事を考えると恐怖でしかない。
「それで、昨日話してたって言う叔母の娘とやらは頼りになる奴なのかい?」
「はい、美結は華奢に見られがちですが、叔母と義叔父を見て育っているので〝プロレス〟と言う格闘系の技を使い、大体の人を撃退する事ができます」
私がプロレスと言う単語を出すと、やはりと言うかウセアが反応して質問してくる。
「プロレスって何だい?よそでも聞いた事ないけどねぇ」
(私も戦後のプロレスしか聞いた事がない)
今度、美結に聞いてみよう。その辺りの知識も豊富だから。
「私も百年前の時代にプロレスがどうかは聞き及んでいないので知る人ぞ知る、なのかもしれません」
正直、そこまでは不明なので無難な受け答えをする事にした。
「まあ、そんな物があろうがあるまいが、実際に組んでみれば分かるからいいけどねぇ」
叔母に会ったら、すぐに戦うつもりらしい。本当の闘いにならないよう、今から祈っておこう。
「異世界からの侵略があった場合はこちらも全力で迎え撃つ準備はしてるけど、他国と組まれたら厄介だねぇ」
そう言えばシーグルの国は敵国だらけだった。普通に考えるとここぞとばかりに共同戦線を張り、侵略してくるのが目に見えているがどうしたものか。
「今日はこっちに一人呼んでるんだけど、随分と遅いねぇ」
同席予定の人を待っているらしいけれど……その時、ギルドの入り口から黒いローブに身を包んだ人が入ってきた。昨日、確認した第三皇子の着ていたローブとは若干色が違う。入ってくるなり、周囲を見渡してウセアを確認すると、迷わずこちらに向かってきた。
その人は私達のテーブルの傍まで来ると、ローブの頭を被った部分を後ろにやり、顔を露わにした。短髪で精悍な顔に黒目勝ちな好青年、年齢は私よりかは下な気がする。
「すまない、女王様との打ち合わせに手間取ってしまった」
(女王様? と言う事は他国の民と言う事だけど)
ウセアは座ったまま、彼を右腕で示して紹介を始める。
「こいつはキネルって言うんだけど、ここシーグルから離れた王国で護衛と偵察をやっているらしい。もっとも偵察の件は数日前に知ったんだけどね。あちらの国も体裁は構っていられないのだろう」
彼は私に一礼し、ウセアの左側に移動して椅子に座った。
「女王様から有事の対応をするよう、命を受けて来ましたキネルと申します」
今度は座ったまま、私に礼をして挨拶をする。
「初めまして、私は九塚静菜と申します」
私は名前を言って彼に挨拶を返すと、思い当たりがあるような素振りで再び見る。
「名前は一致……ですか。どうも、女王様はあなたに何かしらの縁があるそうで、身の危険が迫るようなら護衛をしてくれとまで言われました」
本来は裏で見えない形で職務を執行するのだろうけど、この場で宣言した事を考えると、半分公認と言ったところだろうか。
(誰だろう、全く思い当たりがない)
基本的に叔母と美結しか心当たりがないし、美結の関係者と言っても訃報があって異世界に転生した、と言うようなパターンがそもそも考えられない。なぜなら、みんな若くして亡くなったなんて事は聞いていないからだ。とにかく、今は話を聞いてみるしかない。
「それで、異国の女王様とやらがどうして、静菜様を護衛する事になるんだい?」
ウセアも要領を得ない話でそれとなく聞いてくれた。彼は早速、話を始める。
「それは私にも分かりません。シーグル国と協力関係を築いても良いとは言っていますが、具体的な交渉内容が提示されてないんです。いつもの女王様であれば、取引の内容を始めに検討するはずなのですが」
どうも今回に関しては具体的に相手国と交渉をして、と言う事ではないらしい。だとすれば余計に妙な話とも言えるけれど。
「気になったのですが、キネル様が仕えてる国と言うのは何処の事でしょうか?」
当然、何の情報もないのは不安要素でしかない為、聞いてもいいだろう。
「こちらに来てから一ヶ月半ほどで何も分からないでしょうが、どの国の所属かは言ってもいいでしょう。私はキルカスパートスで女王様の護衛を行っております。今は特命で九塚静菜の緊急護衛の任を頂いてシーグルに滞在しています」
つまり、女王の命令がなければ本来この任務は無かった事になる。とは言っても、別の任務もありそうなので、ついでにやっていると言う事でもある。
「しかしキルカスパートスとはね……あの国も周辺国からしょっちゅう侵略されてるからねぇ」
「キネル様の国は知らなかったのですか?」
てっきり彼の所属している国を知ってる前提で話を進めていたと思っていたので驚いた。
「私は他国から来た者と言う事を知ってたが、女王なんていくらでもいるだろ? 例えば南の島国なんて言うのは権力闘争なんか、いくらでも起きるからねぇ」
(ああ、そう言った治安の不安定な地方ってあるのか)
だから、その内の一国の女王と勘違いしたと言う事だろう。としても、今挙がった国がどんな国なのかは一切不明。他の人に聞けばもっと詳しい情報が分かるのだろうけど。
「国の位置なら簡単には説明できます。シーグル国は世界の中心に近い位置にありまして、キルカスパートスは北西、北端に近い場所に位置しています」
思っていたよりも離れた位置にある国らしい。しかし、問題は国の位置ではないとウセアは話す。
「あの国の女王って言うのが、戦上手と言われているけど、実際は女王一人で敵国を全滅させていると言う表現が正しいね。つまりは彼女に敵対した者は容赦なく国と言う命を持って償うと言った具合さ」
何だか物騒な事を言ってるが、それならシーグル国の書物を見ても似たような顛末となっている為、似た者同士と言えるのかもしれない。そして彼はと言うと、私の表情を見てなぜか右側の口角だけ上げて何かを確信した。
「今の表情で、大体は分かりました。女王様がなぜ、あなたに肩入れしているのか。とりあえず、今日は女王様に連絡し、改めてこちらに来る事にします」
そんなに時間は経っていないけど、彼は今日のところは一旦去るとの事。私も必要以上に引き留めるのも申し訳ないので、彼の別れの挨拶を聞いてギルドを出て行くのを見守った。
また、ウセアと二人になり、話を続ける事にする。
「あの国と同盟関係になれば、戦力は万全になるねぇ。そうなるともう、こちらに侵略するって愚行をしようとはしないだろうね」
彼女としては、キルカスパートスと同盟になった方が色々と都合が良いのだろう。おそらく、国王や妃としても望んだ結果を期待できるだろう。しかし、相手国の実態を知ってる訳ではないから何とも言えないところもあるけれど。
「それにしても、まだ終わらなさそうだね」
ウセアは二人の皇子が話をしてるであろうカウンター奥の扉を確認する。しかし反応はない為、まだまだ話が続いているのだろう。
「美結は結構、重要な事を大した話ではないように言いますから」
美結の話はどこかに重要な意味が隠れていて、注意深く聞いてないと取り返しのつかない事になる場合が多い。仮に注意深く聞いた場合、今日のように綿密な話し合いが必要になり、それなりの騒動に発展する。
その時、またギルドの入り口から人がきた。それなりの年齢を重ねた茶色で統一した皮鎧を着た作業用の服装をした男性である。
「今度はコディカスかい。おーい、コディカス。あんたも会話に入ってくれ」
ウセアは彼を同じテーブルに呼び付ける。彼は彼女のお願いに素直に近くまで来て、今度はウセアの右側の椅子に座った。
「何だか将来的に一騒ぎ起きそうだな。ゲズントハイト様の婚約者絡みで、ってあなたがその人ですか」
どこで仕入れた情報は不明だけど、私を見るなりすぐに誰かと言う事が分かったようだ。
「いやあ、初めまして。私は以前、国王の護衛をやっていたコディカスと申します。今はギルドの依頼で客人の護衛をやっているから、これからよろしくお願いいたします」
彼は私に一礼して、話に加わる事になった。
「それでカリオとの話ではどうなってるんだい?」
知らない名前が出てきたので、何の話か見えてこない。しかし彼はそんな私の疑問に答える。
「カリオって言うのは城壁内側を周回してる奴の事です。勿論、ギルドの依頼で業務としてやっています。異変と言うなら、城門前で見張りをしてる二人も見てたんですが、朝に一瞬だけ魔力を感知したらしいです。転移系の魔法です」
ウセアはそれを聞いて、渋い顔をして黙ってしまった。美結の言ってた三つ目の脅威は案外すぐに起こる事も考えられ、少しばかり顔色が悪くなってしまう。そんな様子にコディカスは慌てて訂正する。
「ああ、いや。まだそんなに身近な危険ってほどではないですよ。魔力を検知した場所に爆発魔法を送り込んで嫌がらせしておきましたから」
転移元に爆弾のような魔法を発動させ、相手に被害が出るような状態にし、計画を遅らせると言う事をやったらしい。もしそれで相手が攻撃がどうこう言えば、無意識な自白として自滅すると言う算段になると言う事だ。良く考えれば、ここは戦争が当たり前に起こる世界なので、これくらいの報復は当然なのかもしれない。
(何はともあれ、この人達が味方で良かった)
敵だったらと思うと恐怖でしかないので非常に助かる。
「でも、どこが相手であれ、現時点では相手の場所が不明と言うのも変わらないので、来たるべき時に準備くらいはしてた方が良いですね」
巧妙な敵であるほど自らの手の内は見せない為、おそらくは下手は打たないだろうが、時間稼ぎでしかないのも事実である。
「今の話、今すぐ皇子達に伝えた方が良いと思うけどねぇ」
ウセアは彼に忠告した時、カウンター奥の扉が開き、二人が出てきてこちらに歩いてきた。
「おまたせ、悪いけど静菜が話していた内容。最初からこそっと聞かせて貰っていたから悪く思わないでね」
今のキュールの言葉からすると、私がウセアと最初に話した時から何らかの方法で全て聞いていたらしい。私にとっては特に不都合がないから良いけれど。
「父上が城の所属を解任した者達の働きで、このような形で上手く行くとは思わなかったが」
ゲントの発言を察すると、やはり城の兵士がやるような職務をしていた人達は以前、城で働いていたと見て良いだろう。
「魔力の感知について、何か思い当たる事はあるのかい?」
聞いていたと言う事であれば、ウセアを話の続きをするけど、ゲントは顔を曇らせながら
「静菜を召喚した世界と他国からの両方から魔力を感じた。どのように連携を取っているのかは見当がつかないがな」
このような事をするのは両親が関わっていると見て良い。私に虐待していた時も何重にも偽装工作をし、警察にバレないようにしていたから。
「なるほどね。どうやら静菜の両親は上級魔族すらも従える程度の悪知恵を持っていると言う事かな」
キュールの分析はこのような感じとなったが、ウセアは私を改めて見てから溜息をつき
「平和だと言われてる世界に魔族のような人間、やはり静菜様はこの世界に来るべき人間だったと言う事だね。じゃないと、とっくの昔に殺されていたかもしれないねぇ」
助けてくれた当時の叔母もこんな考えだったと思えると、なんだか懐かしさを覚えてしまう。
「キルカスパートス……あの国の女王は恐ろしいので正直協力を仰ぎたくはないのだが、贅沢は言ってられないな」
ゲントはキネルが言っていた国を口にし、なるべく早く同盟を結ぶ案を考えているらしい。
「しかしまあ、強国の女王がどうして静菜を知っているのかは不明だけどね。話し合う時に聞いてみた方がいいだろうね」
キュールからも女王をイメージしただけで緊張が走るほどだ。
「静菜様自身、つながりのある人に心当たりはないそうだから、一回城に戻って色々と調べたほうが良いと思うけどねぇ」
先ほどの私の表情を見ていたウセアはこれ以上、ここで話す意味は薄いので城へ戻るように提案する。
ゲントは一度大きく息を吐いて、私達を見直す。
「そうだな、ここで話していても敵に情報を聞かれては意味がない。城に持ち帰ってから相談する事にしよう」
私達は彼に無言で頷き、肯定の意思を示す。
「静菜、今から戻って父上と母上にも相談する。一旦帰る事にしよう」
「分かりました。それではウセアさん、キュール様。今日のところはお暇しますので、またの機会に会いましょう」
私達は彼の先導で去ろうとすると、ウセアは私の目を見て
「ギルドに来てる人達にも情報を行き渡らせるおくから、こっちは心配しないで自分の身を守るんだよ」
言っている彼女の目はやはり、叔母に似た物を感じてしまう。私は無言で礼をして改めてギルドを出て行った。
城に戻り、私は自室に戻され、ゲントはすぐに国王と妃にギルドでの話の内容を詳細に報告し、今後の対応を相談していた。
私が聞くと心を痛めるのが分かっている為、配慮してくれたのだろう。正直、両親の存在を思い出すだけで吐き気がするほどだから。そして、その両親が今度は異世界に実害を与える事が可能な人達と協力し、私に害を為そうと画策してると言うのは何の冗談だろう。そこでふと、美結の話を思い出す。
(静菜の場合は極大魔法しか使えないでしょう)
どうやって調べたのか全くの謎だけど、私は極大魔法だけは使えるらしい。しかし、それは星を滅ぼす程度にしか抑えられない為、実用性が全くない。
(せめて、ゲント達みたいな国を滅ぼす程度まで抑えられれば使えそうだけど)
世界を終わらせたい。つまりは悪魔としか言えない両親のような人間しか居ない世界であれば力を行使する事を可能だけれど、同時に星が滅ぶと言う事は私も息が出来なくなる為、道連れの禁じ手と言える。
幸い、私には地球においても、この世界においても私にとって優しくしてくれる人が居るので、この手は使いたくない。その事が分かってるからこそ王族同士で話をしているのだと思うと心苦しくなってしまう。
「お茶でも頂きますか?」
部屋の中で声を掛けてきたのはメイドのユーリ。実は今、話し合いをしてる間、私の部屋にはユーリとゲントについてるはずのキュルマが同室を命じられていた。
「お願いします」
私は断る理由はないのでお茶を頂く事にする。ティーポートからカップに注がれたお茶はとても良い香りがする。
(ほんのりとした香りだけど、甘みを感じるような気がする)
少しだけ落ち着いてからカップに注がれて物を見ると
「え、真っ黒だけど、大丈夫? 飲める?」
てっきり普通の紅茶と思っていただけにその見た目の衝撃に驚いてしまう。
ユーリは少し笑ってみせ、説明を始める。
「今回、使用している植物はブラックヴァルガリスと申しまして、見た目は非常に残念ですが味は保証できます。効能自体も不安や緊張、不眠など今の静菜様には打ってつけの物となっております。騙されたと思って飲んでみてください。私の家も育てている植物ですので心配は要りません」
どうやら、一般人の通が知る一品と言う立ち位置らしいけど、近くで様子を見ていたキュルマは
「私であれば、配下に取り下げるように申し付けますね……いえ、失礼いたしました」
王国に居た頃の自身を思い出しながら私的な感想を述べ、また身の回りの世話に戻った。
私は体が警鐘を鳴らす様子を堪え、カップに注がれた黒い液体を恐る恐る口にしてみる。
「甘い、非常に美味しいですが、これは紅茶ではないような気がします」
「お口に合って良かったです。この植物自体は私の実家が品種改良を重ねて今の形になり、それを国中の農家に広めてお菓子の甘味料として栽培しています」
彼女が自信を持って私に勧めたのは実家の自信作だったからと言う物だった。しかし、お菓子に使われるとなると
「本当にこれ、お茶として出して大丈夫ですか?」
お菓子に使うと言う事は材料不足で提供できないと言う事でもあり、念の為に聞いてみる。
「それなら問題ありません。お菓子自体は後から出てきた案の物になりますし、元の植物の名は〝グリーンヴァルガリス〟と言いまして、ほとんど無味無臭の植物になります。とは言っても、お茶として出すには問題のない物となるので、元々の効能自体は今お出ししている物と変わりありません」
私の居た世界なら一部の人達には流行りそうだとは思う。運良く一時的にブームが来る程度ではあるのだけど、とにかく美味しいのは良い事だ。と思っていたら彼女はボソッとついでに注意事項を言ってきた。
「でも、虫歯になりやすいので歯磨きは丁寧にやってくださいね」
これが今飲んでいるお茶の唯一の欠点らしい。
そう言えば、こちらに召喚されて夜寝る前に口が気持ち悪い為、不安になっていたら歯磨きだけは私の世界と同じくらいの道具が揃っていた。中世と思えるこの世界には違和感としか言えないほどに……でも、そのおかげで虫歯には無縁の生活ができると思い、少しだけ嬉しくなった記憶が改めて思い起こされる。
「あなたの家は虫歯事件で身分を落とされたのでしたね。元々はシーグル城専属の農家として城内で働いていたようですが」
またもキュルマがユーリにチクりと皮肉を言った。言われた彼女は不自然に発汗し、目が泳いでいるようだ。しかし、キュルマは涼しい顔で後の話を続ける。
「結局、この件については私達の生活に問題がある事が判明し、あらゆる国に〝歯磨き〟に有効な鉱物を用いる事が重要との事で、今のような形となりました。皮肉にもユーリの家が行った事が衛生面の向上に一役買ったと言う事になりました」
そして何を思ったのか、彼女は目を光らせてから決めポーズでさらに言葉を続ける。
「ちなみに〝歯磨き〟の鉱物と商品については私が生まれた国で主体となって開発し、虫歯で困る事は無くなったと様々な国の方達に喜ばれています。それまでは良かったのですが調子に乗って幅を利かせ、次女である妹がシーグル国を乗っ取ろうとしたばかりに滅ぼされてしまいました」
と思うと、最後は少し落ち込んだ様子で語気が弱くなるような結末の話で終わる。
今の話で思い出した事がある。それは召喚された日から今日まで歯磨きをしてる時はなぜか、キュルマがこそっと私を凝視してるような気がして何故かと思い、あれはもしかして喜んでいたと言う事なのだろう。当人は全くもって無表情だったけれど。何はともあれ、日常の疑問が一つ解明して良かったと思う。
後思った事があるとすれば、メイド長と副メイド長の二人は案外、相性が良いのかもしれない。お互いに皮肉を言ったりする事もあるけれど、自身の欠点は互いにカバーしてる事が良く見られる為だ。二人の性別が違った場合は理想の相手になるのかもしれないとそんな事を思っていると
「勝手に私達を頭の中で結婚させようとしないでくださいませ」
キュルマにツッコミを入れられてしまう。どうも城内の人達には私が考えてる事が分かってしまうらしい。顔に出すぎているのか、口が動いてしまっているのか、本当にいつも分からないのでどうにもならなかったりする。
それから私は用意されていたお茶を全て飲み切ると、入り口の扉が開いてゲントが入ってきた。
「異世界から話をしていた彼女を一週間後にまた呼ぶ事になった。同時にキルカスパートスの女王陛下を正式に招待する事になり、今回の静菜の両親が企てている事について、話し合いの機会が欲しいと言ってきた。当日は静菜と二人にも同席させる予定だ。必要な準備はそれまでに終わらせておくように」
それだけ伝えると彼は入口の扉から部屋を出て行った。
「随分と大事になってきましたね」
「噂の強権女王ですか……戦争にならないといいのですが」
不安を口にしたユーリに私がギルドで聞いた話をまとめてから答える。
「多分、問題ないと思います。あるとすれば、美結と口論になる事が原因と思います」
美結は普段は穏やかな性格だけど、逆鱗に触れてしまうと権力で殴ると言う、叔母に似て喧嘩っ早い性格だったりするけど、それが権力での殴り合いなので叔母よりも質が悪かったりするので少々不安ではある。
「あの強権女王に対抗できる人がいる想像が全くしないのですが」
キュルマも似たような感想を述べる。
「一週間後の女王陛下が訪問で有事とならない事を祈るばかりですね」
「美結様と言う方が何者なのか、気になってきました」
不安を口にするユーリに対し、キュルマはと言うと美結の事が気になるらしい。どれだけ恐ろしい人物なのかと言う事に。
私は今後の不穏な動きに不安を抱くのだけど、二人にとっては女王と美結の会話に不安を覚えているらしい。
それからは通常通りに食事をして、風呂に入ってから夜になって寝た。
今回は物語の進行上、二話分を載せる事になりました。




