7話 憑代 起
:軍事司令長官視点:
「人間としては強者であり、並大抵の天使を凌駕する。が、私に勝てない」
あの天使は勝てると判断したそうだ。だから、潰しに来る。
「エンジェルダスト」
「……?」
なんだ、何が来る?
俺はあたりを見回した。何もない。本当に?
「チッ」
何の舌打ちだ?
「どうやって……どうやってエンジェルダストを無効化したのだ⁉」
「は?」
『そこまでだ』
とても冷たい声が、脳に直接、エコーになって響く。
冷たいのではない、声にわずかなる震えと、とても低い声が重なり合って生まれているのだ。
あたりが暗くなる。
まるで。
自分が死んだ。
ような。
錯覚に。
――陥る。
手先が硬直し、心臓が張り裂ける寸前のごとく高鳴る。
『貴様には失望したよ、フェアマセト』
「も、申し訳ございません!敵が……」
『言い訳はいらん。また作り直せばいい』
フェアマセトは全身をぶるぶると震え始めた。
「お許しくださいませ、我が神よ!」
『黙れ黙れ黙れ。消すぞ』
あたりが静寂に包まれ、空気が重くのしかかる。
「ところで貴様はだれだ!」
『ほう、これは驚きだ。まさか人間がこの声を聴きとれるとは。そうだな。我は『神』だ』
「殺す!」
『まてまて。我は憑代を探しているのだ。故に、害するつもりはない』
「そうか」
なんだ、コイツは。憑代?確かに実態は見えないが……。
そして探しているという言葉に引っかかる。まるで、もう憑代を見つけているように。
『仕方ないか。この技の初陣だぞ?見ておけ。『時刻調整』
何も起きない。ただ静かなのだ。
――静か?
今は昼なはずで……。
「は?」
時刻は夜になっていた。月光が世界に包まれる。
「なぜこんなことをした?」
『それは、憑代を奪取するために決まっているだろう?』
「奪取?」
❊ ❊ ❊
:ベート視点:
「な、急に夜に……」
俺は急に時刻が変わったことに驚いていた。
突然木漏れ日からチリチリと眩しい光が消えたからだ。
いつも通り修練場で鍛錬をしていたのだが。
「……なんだ?いやな予感がする」
「こんにちわ」
突然、後ろから声を掛けられる。
誰だ?こんなところに来る奴なんてカールくらいしかいないが。
だが、カールの声とも違う。そもそも、俺が記憶している中で叛逆教会にとても鋭い声をしている奴買いなはずだ。
「誰だ?」
少しばかりの殺気と、いつでも先頭に移行できる体制に整える。
「僕?そうだねぇ、宝石王十四天使最弱にして最強。月光石キュリアスだよぉ」
身の丈に合わない衣装をきて、手や足が見えない。
だが、その衣装から手や足をぶらぶらさせて話している。
間違いなく異質だ。
子供らしさがあるはずなのに。
――恐怖。
背筋が凍り、頬を伝って汗が落ちる。
心臓がバクバクと胸から飛び出ようとする。
「なんでこんなところに来たと思う?」
「知らねぇ―よ」
「じゃぁ正解を教えてあげるよぉ。神に捧げる憑代のためだよ」
眼の光が消えた。
さっきの子供らしさとは裏腹に、完全に殺そうとしてくる。
「能力【月より美しい涙】」
「能力【月の魂魄の意志】」
「能力【月と光と貴方の力を捧げる】」
――【月より美しい涙】
彼はきっといつかいる。耐久力が1000倍になる。
――【月の魂魄の意志】
無視の抜け殻のごとく、刹那で意識を立つ。自身と対象の同期させる。
――【月と光と貴方の力を捧げる】
発動により、「月光王」へと変貌する。「月光王」のすべての力が100倍になる。
「能力【反転・同期覚醒】」
――【反転・同期覚醒】
自身や対象の存在の能力を強制覚醒させる。さらに月光王の力が100倍になる。
そして――?
ベートは薄暗い漆黒の闇に飲まれた。




