2話 冠は棺の中にある
「四肢を切り落として苦痛で悶え苦しみさせてから殺す!」
ヤバッ。これは俺らでもギリギリの戦いを強いられそうだ。
どころか殺されるッ!
普通に反射神経は天使が優っている。動体視力も然り。
反神霊剣で受けると、スゲェ衝撃波で何メートルも吹っ飛ばされる。
圧倒的な力の差、というのを痛感した。
確かに、技術力は上回っているだろう。
だが、力が違いすぎる。これはもはや、圧倒的な暴力だ。
蛇に睨まれた蛙だ。
――このままじゃジリ貧だ。
「カール!俺が隙を作る。その間に、重い一撃を叩きこめ!」
「おうよ」
❊ ❊ ❊
勝利すること。それが、生きるためにつながる。明日を灯す光になる。
この天使が明日、生きとし生けるものを殺すかもしれない。
故に殺すのだ。明日を灯すために。信念と復讐と自己のために。
だから、冠は棺の中にあるのだ。薄い薄い光の帳のなかで、自分が今この瞬間に死ぬかもしれないという恐怖と、自分が待ち受けるその『本当』の地獄を味わうのだ。
噛んでも噛んでも味がするもののように。
きっと明日が自分の死に場所なのかもしれない。自分が生きている価値がなくなってしまった瞬間までが、死に場所になる。だが、その前に、肉体的にだ。明日が、未来がその待ち受ける絶望そのままが『死』という全生物が帰結するものになろうとも、一歩を足踏みするのだ。
だれも知らない英雄が、死のうとも、誰も気にされない、だれにもわからない。淵まで粘るだけで終わり。そして、忘却されて自分がいなくなったことさえ覚えず、数千年が過ぎるのかもしれない。幾星霜の時が、悠久の時が立とうとも、生きた証は残るものであろう。
自分の自己欲求の中に立つ、それでもいいという名の願いだ。
棺に沈まれ、木にも飲み込まれ、腐食しても、自分の冠は頂くのだ。
❊ ❊ ❊
俺は反神霊剣と、天使の拳がぶつかり合い、幾何学模様を描く。
「――ッ!」
「雑魚がイキってんじゃねぇッ!」
ぐうの音も出ないが、イキっているわけではない。
ただ殺すだけなのだ。
能天使の攻撃は重い。さっきの天使とは比べ物にならないレベルで早く、鋭く、重い!
剣と拳の応酬で、衝撃波が駆け抜ける。
(足が持っていかれそうだ)
能天使は翼を使いクルリと一回転しながら拳や脚を使って絶え間ない攻撃を仕掛けてくる。
だが、見える。この絶え間ない攻撃のなかの終撃のあとは、わずかに隙があるということに。
(来たっ!)
俺は瞬間的に終撃のあと一瞬の隙で、反神霊剣(ブレ―ド)で刺すことに成功した。
「カールッ!」
「ああああああああああ!」
カールは反神霊大型斧両手で構え、振り下ろした。
――結果は。
能天使が真っ二つになり、肉と肉の間から血が絶え間なく噴き出していて、「糞がッ!なんでだよチクショウ死にたくなっ――」と死に際まで怒りがあった。
「はぁはぁはぁはぁはぁっ」
意外とあっさりだったかもしれないが、数時間も戦闘をしている。さらには精神的なストレスもあり、あっという間に体力がなくなったため、一度対神霊叛逆教会に帰還することにした。




