18話 宝物は普通の日
私に「また明日」と約束を交わせたことはあるだろうか。物心ついても、記憶は簡単に忘れる。
ある程度の記憶が保持できる年齢から、私はその約束が果たせたのか。
分からない。人は死にゆくものだとして、寿命や病気で亡くなるのは、そこまで通った道があるから果たせたと私は思う。けど、その前に死んでいった人の約束はどうなるのだろうか。
そこまで考えること自体が、その約束を交わした人を無下にするようで。私と関わっている人間は、大体死んでいる。私の両親、おそらく亡くなっている幼馴染。
……おじさんも。
結局死ぬ運命は変わらない。だけど、死にざまが私にとって重要だ。
大人になって疎遠になったりすることはザラにある。ただ、それを経験せず、周りが死んでいくのは孤独だ。私だっていずれ死ぬ。
だけど、こんなのってないと思う。周りが全員生きれる年齢なのに死ぬなんて、そんなのあんまりだよ。
❊ ❊ ❊
「……」
「今から実技試験を始める」
話しているのは、私を担当した面接官だ。
周りはざわついており、いかにも余裕そうな雰囲気だ。
「全員で俺を倒しに来い。それが、実技試験だ」
「随分と余裕じゃないか?ボコしてやんよ」
「……」
面接官はいきり散らかしていた相手にに手刀を当てた。そして、すぐに手刀をしまった。そのことに誰も気づいてない。実践なら、相手はもう死んでいる。
「来い」
「行くぜぇ!」
周りが一斉に攻撃を始める。遠距離要員やら、中距離、近距離の三種類に分けられた。
「終わりだよ!」
一斉に魔法、弓矢が飛ぶ。ただ、そのころにはもう、近距離部隊は気絶していた。
おそらく、始まった瞬間に全員を蹴りや手刀で気絶させてた。遠距離や中距離は前衛がいるから成り立つ戦術であり、もう無力だ。
開始から3分もたっていないだろうか。もう私以外残っていない。
「来ないのか。いい判断じゃないか」
「邪魔でしたから」
「まぁ君の実力なら俺を殺すのも容易だろ?」
「技術と経験だと圧倒的に足りていないので、私があなたを殺すのは不可能でしょう」
「よくわかってるじゃないか」
会話が途切れた瞬間、それは超高速の剣技の応酬。
経験から成り立つ面接官の攻撃は、私の隙を完全に暴いている。逆も然り、私の才能はおそらく面接官の才能を凌駕している。ただ、やはり対格差、経験なのでは完全に負けている。
しかも面接官は剣をあまり得意としていない。剣技が成り立っているのか分からないくらい下手だ。
ただ、それでも食われる。
というより早すぎる。私より何倍も速い。ただ、大振りなおかげで助かっているだけだ。
面接官が多少剣技を扱えたなら、私は負けている。
「ふーん。そろそろ本気出していい?」
「別にいいですけど、こちらも怒りを振るう剣があるので」
「そっか……いいんだね?」
すこしばかり会話が止まる。
「神器、解放。狂うような重さの斧」
「すごい力ですね、まるであなたがその重さに乗っ取られているように。怒りを振るう剣、来て」
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「あーあ、抜かれちゃった」
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戦闘は第二段階に移行した。
私の技量は面接官にはかなわない。ただ、才能と感覚だけで上回ってやる。
面接官の一撃は重い。衝撃や威力を剣を斜めにして相殺しているが、それでも足りない。そして早い。面接官は重量感がありそうな斧を振りかぶるはずなのに隙がなく、私の剣技と同じくらいの回転率だ。
「君は怠惰だな。俺よりも才能があるくせして努力を怠るなど理解ができない」
「私は戦いとは無縁だったんですよ。非力で弱い女性なんですよ」
「そんなことはどうでもいい」
目つきが変わった。私はその冷徹なる瞳に絶望……何もかも諦めている感じがした。
「俺はこの10年で失ったものが多すぎた。自分の力が増大したところで意味がなくなってしまった」
「だからなんですか」
「君には後悔してほしくない。これは俺の願いであり、強欲なものだ」
「……」
「これで終いだ。――崩万」
私は面接官の武器の柄で剣を弾かれ、高速の二段攻撃で、負けた。
「私の負けですね」
「いや、俺が負けただろうな」
「どういう――」
「そのうち分かる」
そのうち分かるといわれても、分からないものは分からない。人の心なんてわかりやしないのに。




