11話 帰結しない、帰還する
:軍事司令長官視点:
「それでどうするんだ?ここから」
俺はキネルテルに質問する。
「そうだな。お前の拠点にでも案内してくれたら助かるのだが」
「お、おう」
少しばかし戸惑う。確かに俺を助けてもらったが、そこまで信用できるかが分からない。
いや、でも結局負けるんだったら、抗うほうがいいか。
俺は少し考えをまとめキネルテルに話す。
「わかったが、余計なことはするなよ。だが、ここからどうやっていくんだ?」
「まぁ、それは転移ってやつで」
「そうなのか。それはさておきだが、俺の拠点の位置はわかるのか?」
「まぁ分かるけど。お前の気配が特に残っているところに転移する。手あたり次第みたいなものよ」
「そうか。じゃあさっさと転移してくれ」
「了解。手握れ」
俺はキネルテルの右手を握った。
「転移」
青白い光とともに、俺らは転移した。
❊ ❊ ❊
転移すると、俺の自室だった。
「っと」
「着いたな」
「ここで合っているか?」
「ああ」
俺らはとりあえず自室から出ることにした。
扉を開けると、とてもじゃないが叛逆教会は大慌ての様子だった。
「どうしたんだ、これ」
すごく焦っている。何をどうしたらこうなった。
「って長官!?」
「おおカール2日ぶりだな」
「そうですけど、大変なことが起きました。まず、ここに天使が侵入しました」
「そうか。それで?」
「ベートがさらわれました。修練場からはとても強い反響音が鳴るようになっています」
「ほお?」
「それと、後ろにいるのは誰ですか」
「完璧に気配を消していたのに。気づくなんてさすがですね」
「誰だよ」
「俺ですか?」
キネルテルは自分を指さしながら言った。
「キネルテルです。この長官が死にかけていたときにちょっと助けただけですよ」
「え?」
少しばかりカールが驚いている。俺だって無敵じゃないということがよく分かったみたいだな。
まぁ、でも一応世界最強というのは変わらないがな。
「これからどうするんだ?キネルテル」
「そうですね」と言い、キネルテルは唸る。少しばかり考えたあと、キネルテルは言った。
「とりあえず、その修練場?に行き、そのあと聖域に行く流れでいいでしょう」
「ああ、わかった」
「あ、理事室にはいかないんですか、長官」
「そうだな、一応顔は出しておくか」
コツコツと理事室に向かって歩く。部屋からは意外と遠く、約200mほど離れている。
(今頃ベートはどうしているのやら。そして、この教会は天使が侵入されたことによってどう変わるのか)
俺は思案しながら歩く。外野がうるさいがそんなことは気にせず考えを続ける。
(天使はどのように侵入した?経路はって、あのキネルテルが転移を使えるなら、天使が使ってきても不思議ではないな。そして反響音とはなんだ?痕跡を残すということは意図があるはず)
いつの間にか理事室についていた。おそらく対等な立場なため、ノックする必要はないだろう。
「チワッス」
手を前に少し掲げながら言う。
「ノックもなしかと思えば、君か。よく戻ったな」
「そうですね、まずは金剛王フェアマセトとやらと相対しました。その後神と戦闘に入りました。それとベートが神の肉体となり、神が顕現。戦闘状態に入れ、敗北しました」
「そうか」
他愛もなく話を進める。しかし小話が進まない。関係があまりないからか、特に報告は最低限になってしまう。
「それで状況は?」
俺が無理やりにでも話を進めようとする。少しばかり早とちりでも、ある程度は察してくれるだろう。
「そうだな。まずはどう侵入されたのか、ということを話させてもらおう」
「分かりました」
「……説明するぞ。修練場の中心に黒い跡があった。それはおそらく我らが使っている転移魔方陣などと同じものと見た」
「それで?」
理事長は言葉を考えながら言う。
「その黒い跡は二回使われているということが分かった。なぜならば、黒い跡が二重に重なっていたからだ。それだけでは断定できないが、おそらく攫うためと移動の二つだったのではないかと」
「で、白い粉は?」
「……それはわからない」
「分からないだと?」
「……」
無言になる。突然の出来事のために、状況も把握できていないだろうか。そして、神のこととなれば関係はごちゃごちゃになる。そりゃ、わからないというのも分かるが。
「俺が見に行く」
「分かった」
そのあと、会釈をしながら理事室を退出した。
そして、すぐ修練場に向けて歩き出した。
修練場はいつもベートとカールが使っていた。ほとんど修練場なんぞに行くやつがいないからな。なぜなら、もう一つ修練場があるからだ。あそこは設備も整っているし、何より近いというメリットがあるからな。だが、二人はそこを選んだ。聞いた話じゃ、木漏れ日がきれいだからと、雑音があまりなく、集中できるから、だそうだ。
歩きを止める。この道は、能力で覆われている。
「なるほど、これが反響音の正体ってことか?」
ただ、反響が大きくなるのは、人間にとってはほとんど影響がない。大体の生物はそうだろう。で、なぜこんなことをするのかといえば、隠したい何かがあるからだと俺は推察する。
フェアマセトとかは、きちんとしたトリックがあった。それと同じだと思ったからな。
ということは、隠している何かを探し出せばいいってことか。
修練室に進む。少しばかり何があるのかという好奇心と、恐怖が混じる。
「これは」
白い粉を触る。これは能力で作られたものだと思う。
「ああ、それはね」
キネルテルがひょっこりと顔を出してきた。しかしびっくりするもんよ。というかどこに行っていたのやら。
「それは盗聴するためのものだよ。さっさと消しとかないと」
「消す?」
「…燃やすんだよ」
「燃やす、か。能力は普通効力を失わせることは不可能なはずだ。だがキネルテル、それを言う限り、この白い粉は効力を失わせられると?」
「ああ」
しかし本当なのだろうか。俺は一度も能力の効力を失わせることが一度もできたためしがない。だが、キネルテルが言うならたぶんまちがいないだろう。なんてたって年の功とか言うやろ。そういうことだと思う。
「燃やすぞ」
キネルテルが謎に指に炎を巻き付けていた。ふっと息を吹き替えると、白い粉が燃えた。本当効力が消えるかと思ったが、すぐに消えた。灰になって。
一週間サボっていたのはなぜなのだろうか……




