9話 憑代 転
:軍事司令長官視点:
「大君燵日頃汝臣民ト一刀之御霊二告グ。無常明星之光之怨敵二向カイ位相之原光ト億劫之物撚リ、怨敵之強大タル力ヲ以テ滅殺致ス。我望ミ、力欲シ怨敵ヲ殺セヨ!」
神はなにかを言っている。
何を言っているかもわからない。そもそも言語体系が違うのかもしれない。
とてもじゃないが怖い。違う。それは謎めいているからこその恐怖なのだ。
分からないというのは恐怖だ。
故に、俺が滅ぼされる前の祈りなのかもしれない。
俺を殺そうとしてくるための前段階なのかもしれない。
そういう憶測が飛び交うのだ。
だから、「怖い」のだ。
「一刀之太刀」
音はなかった。
ただ、俺の体から血が噴き出しただけ。
「アッ」
身体が真っ二つにされた。
再生によってすでにくっつき始めているが、殺されるのは目に見えている。
「終わりだ」
冷たい視線と、冷ややかな鋭い声が耳を切り裂きながら、剣を俺の首に突き出す。
スッと首を切られるはずだった。
それを、誰かが受け止めていた。
❊ ❊ ❊
俺は神の子孫なのだと教え込まれていた。
いや、神々の凱旋が起こるときのキオク、それを代々受け継いでいた。
そのキオクは能力、【記憶閲覧開示】によって子孫たちがキオクし、その子孫たちに見せる、ということを繰り替えしてきたらしい。
ともあれ、今の現状は目の前に神がいて、その横には死にかけがいる。
俺からみれば弱者であり、神もそう思っているだろう。
――この世界には、特定の人物のみ使用できる能力がある。それは、【能力値閲覧】というものだ。
これは能力ではなく、人や自分の能力値、つまり自分が何の適正があるか、などを示す数値を見れる代物だ。
ただ、これは限られた人にしか使えず、現代では数人しか行使できない幻の特殊能力などである。
「なん……で生き…ている……んだ…?」
「俺が受け止めたからだ」
いつの間にか、体がくっつき始めていいる。
多分能力なのだろう。すごいな、これは。
「俺はキネルテルだ。お前は?」
「俺は……ラードル…という」
「そうか、あいつの子孫か……まぁ、それなら神に挑んでいてもおかしくはない。俺も殺すのは悲願なわけだ。その勝負は乗ったぞ」
「何を言っているんだ?」
「関係ないぞ、お前には。多分」
俺は思わず濁す。
「お前は、忌々しいクソ家系か!」
「おっと、それは心外だねぇ。貴様も凱旋の中で死体打ちをしたクソっていうくらい知っているんですよ?」
「チッ!」
神は歯ぎしりと舌打ちを何回もしながら、殺意を高ぶらせる。
「俺らの子孫もまたお前を殺すために動いているんだ。まぁ、これは俺の悲願でもあるわけだが」
「何ぃ!?」
神は驚きながら情報を探らせようと模索しているようだ。
しかしながら、急に時刻が変更されるのは驚いたものだ。
発動地点に赴いたら、まさかまさか。神がいるなんて思いもしなかったぜ。
とはいえ、ここで戦っても負ける、というか足手纏いがいる時点で負け確なんだよなぁ。
ま、とりあえず転移しながら逃げるか。
「キネルテル。貴様はなぜこのタイミングでここにいるのだ?まるで仕込んだように」
「知るかよ。お前が急に時刻調整をしたからこうなっているんだよ」
「そうか。じゃあ殺しに行くぞ!」
神は地面を蹴って地盤ごとくり抜く。
砂埃と土砂によって視界が遮られ、少しばかし後れを取る。
神の初速は約音速といったところだろうか。
最高速になったらもう手が付けられなくなるな。
「一刀之太刀ィぃィぃィっぃ!」
「魔装防御」
受け止めたが、衝撃波によって後ろ側の地面に風穴が開く。
背中に背負っている死にかけは痛そうが無視だ。
死んでないならいいだろ。
「その足手纏いをなぜ守る?」
「守ってるわけじゃねぇ―よ。利用価値があると言ったらいいだろ」
「そうか」
一瞬なぜか神の気が緩んだ。
「転移ッ!」
俺は背中の死にかけと一緒に転移した。
❊ ❊ ❊
「あっぶねぇっ」
俺は思わず愚痴ってしまう。
しかしすごい反応速度で一刀之太刀を放とうとしてきた。
この転移って発動から0.00008秒しかないんだぞ?
俺の髪切られたんですけど。
神を侮っていたな。
さすがに足手纏いだと遅いのか?
そんなことないと思うが、死にかけのせいで死にかけたのは間違いない。
「んで。ゲホゲホ。ここは……どこ…なんだ?」
「ああ、ここ?ここは女神の箱庭だぞ?」
「女神の箱庭?」
「神は絶対殺す」
「ああ怒るな怒るな?女神の箱庭といっても、女神はもう死んでいるし、俺の能力で自分の空間にしているから安心しな」
「そうなのか」
「早とちりはやめてくれ」
「少年に諭されるとはな……」
目が映ろになっているが、って俺のこと少年だと思っているのか。
「少年ではないぞ。こんな少年顔だが、中身は1000歳越えだ」
「え……?」
すごく変な目で見られている。
とても嫌悪感を感じている人の目だ。
「え、もしかして幼児趣……」
「黙れ!」
俺は一喝する。
ラードルとやらはすごくすごく冷ややかな対応を俺にしてきそう……。
やっぱこの姿だめなのかもしれない、と俺は凹んだ。




