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世界最強の元騎士と  作者: ユタニ


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23話 呪われた公爵令嬢(1)


ゼントに依頼を受ける旨を伝えた翌日には、シャイナとエスカリオットはグラリオーサ公爵家へと招待された。公爵はとにかく急いでいるようだ。


朝一番で、グラリオーサ家がよこした馬車に乗り、その乗り心地に驚愕しながら屋敷へと向かう。


着いた先はさすが公爵家、門からは屋敷がとても小さくしか見えない噴水付きの広大な庭があり、庭の中も馬車で進めるように石畳みの道が続く、馬車から降り立ち仰ぎ見たのは白と青を基調にした小さな城みたいな豪邸だった。

「おおぉ」

シャイナは庭を見て感嘆し、屋敷の全貌に感嘆し、屋敷の玄関ホールでシャンデリアを見て感嘆し、ホールの床の大理石の鏡のような輝きに感嘆した。今回のような貴族の依頼は初めてではないが、ここまでの高位の貴族の屋敷は初めてで圧倒される。

「おおぉ……」


「シャイナ、落ち着け」

エスカリオットは全く動じてない。

「でもでも、公爵家なんて初めてなんですよ。もう入れないかもしれないし、しっかり見ておかないと、ふわあ、天井も高いですねえ……」

遠慮のないシャイナの視線に迎えてくれた執事は苦笑いだが、最初にちゃんとギルドAランク魔法使いのライセンスを見せたからか、咎めたりはしてこない。


応接室までの廊下にも、立派な絵画や彫刻や壺が飾ってあって、シャイナはいちいち足を止めて「おぉ」と言いながら見ていく。


「あっ、エスカリオットさん!あれ!あれは、アルクヨロイの鎧ですよ!しかも金!私、昔、これの依頼を受けてステファンさんと倒しに行った事あるんですよ。金のアルクヨロイは魔法の耐性があってですね、耐性の属性を瞬時に変えてくるんですけど」

「シャイナ、執事が困っている」


興奮気味になって、熱弁を振るいだしたシャイナをエスカリオットが止めた。


「あ、すいません、公爵様がお待ちですよね」

シャイナは、我に返って今度は大人しく執事に付いて歩いた。


応接室では、既にグラリオーサ公爵その人がシャイナ達を待ち構えていて、簡単な自己紹介の後、ふかふかのソファに腰掛ける。


公爵は穏やかな笑みをたたえているが、いかにも貴族らしく、胸の内は探りにくそうな感じのする男だった。

エスカリオットにも意味ありげな一瞥はくれるが、突っ込んでいろいろ聞いてきたりはしない。あくまでもシャイナの護衛に対する態度で接してくる。


「娘のイザベラは、呪いをかけられてしまって気がふれているのです」

シャイナが呪いについて聞くと、グラリオーサ公爵は穏やかな笑みを暗くした。


「気がふれている?」

「はい、突然、奇声をあげるようになり、最近は目を離すと髪の毛を自分で切るので、ハサミは取り上げて隠しています」


「はあ……なぜ呪いだと分かったんですか?お心当たりでも?」

「イザベラが自分で、呪いにかけられたと言いました、それに、心当たりはなくもないのです」


「お嬢様が自分でですか?お嬢様には魔法の心得があるのですか?」

「いえ、ありません」

「……そうですか。先ほどの心当たりとは?」

シャイナの問いに公爵は、部屋をくるりと見回した。公爵の視線に、控えていた侍女と執事が部屋を下がる。

公爵はエスカリオットにもちらりと視線を向ける。


「エスカリオットさんには、奴隷の首輪の拘束があります。私の秘密は漏らせません、私は今から公爵様より聞く事を秘密にしますよ」

「その首輪がないようですが……」

「あれは無粋なので、形状を変えました。首もとのミスリルのチェーンがそれです」

公爵がエスカリオットの首もとを確認し、その目が少し強く光る。


「なるほど、シャイナ殿はお若いのにさすがはAランク魔法使い様ですね、ゼントに紹介を頼んで良かった」

「ええ」

シャイナは営業用の笑顔で答える。

「それで心当たりとは?」


「イザベラは輿入れが決まっているのです。相手はタイダル公国のコーエン・タイダル大公です」


公爵の言葉にエスカリオットが少し身を固くしたのが、シャイナには分かった。

エスカリオットはタイダルがまだ公国でなく、王国であった時に、タイダル国の貴族で騎士だったのだ、いきなり出てきた祖国の名前に驚いたのだろう。


「大公様のお嫁さんなんですね」

「はい。敗戦国のタイダルにハン国王家の血を入れておこうという縁組です。グラリオーサ家は元々、初代国王の末弟が興した家ですし、私の母は元王女でした」

「へえぇ……」

どうりで、庭も屋敷もすごい訳だ。


「タイダル公国では、この縁組に反対の意見もあるようです。ハン国の中にも我が家門が更なる力を手に入れるのでは、と牽制してくる家もあります」

「なるほど」

「なので、呪われる心当たりはあるのです。婚姻の正式な発表は3週間後なのですが、この話に関わった家門はいくつかありますし、そこから情報を仕入れる事も出来るでしょう」

「出来るでしょうねえ……」

現に、ゼントはその情報を知っていた様子だった。


「婚姻が正式に発表されれば、イザベラはすぐに公国へと向かう予定です、なので発表までに何とかして呪いを解いておかないといけないんです」

「確かに、呪われてる花嫁なんてダメですよね……うーん、でもなあ、個人を狙っての呪いはそう簡単には……呪ってきてる相手の特定って出来ます?」

「国内であれば、我が家に好意的でない家名はいくつか挙げれますが……特定までは」


「そっかあ、うーむ、力は尽くしてみますね。着手金は既にいただいてますし、まずはイザベラお嬢様にお会いしてもいいですか?」

「はい、よろしくお願いします。イザベラは本日は落ち着いているので、お話も出来るとおもいます」

公爵は手元のベルを鳴らして、侍女を呼びシャイナ達を娘の部屋へ案内するよう告げた。






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