羊2
しばらくして、メッセージを受け取った薫がマンションの外に到着した。夏凪から送られてきた「玄関から入ってこないでください」という文面を見つめる。
「まさかベランダから入れってことか……?」
薫は呆れながらも、夏凪と粟冬が暮らす五階のベランダへと飛び移った。そして顔を上げると、室内が羊でぎっしりと埋め尽くされているのが見えた。
「?」
(羊? なんで羊がいるんだ? 家を間違えたか?)
立ち去ろうとしたその時、薫は室内で身悶えしている夏凪の姿を捉えた。
「薫先生!」
夏凪は薫の姿を見つけると、外へ這い出そうとしたが、数歩も進まないうちに再び羊の波に呑み込まれてしまった。
「……僕が歩いて行った方が早そうだね」
薫は諦めて掃き出し窓を開けた。群れが外になだれ込んでくるかと思いきや、羊たちは部屋の中でピタリと静止した。薫は室内に入ると、ついでに窓を閉めた。
薫はソファのところまで歩いていき、その上に乗っていた羊を別の場所へ放り投げると、夏凪と粟冬を的確につまみ上げてソファへと避難させた。
「それで……一体何があったんだい?」
「分かりません」
その答えを聞いた薫は、困り果てて額を押さえた。
「夕の奴はどうした? あいつは隣の……部屋に……いないか……。いや、あいつにスマホも住所も渡してなかったっけ」
薫は後悔から羊の毛の中に頭を埋めた。出会った時にスマホと鍵を夕に渡しておかなかった自分を激しく呪う。
「師匠をここに呼び出す方法はありませんか?」
粟冬は羊を抱きかかえながら、小首を傾げて尋ねた。
「あるよ」
薫はゆっくりと顔を上げ、パチンと指を鳴らした。
すると二人の目の前の空間に、横たわった姿勢のまま爆睡している夕が突如として出現した。夕は羊の毛の上に落下したものの、全く起きる気配はなく、いびきをかき続けている。夏凪は夕をソファの上へと引きずり上げ、激しく揺さぶった。
「うぅあ……」
夕は半分夢の中にいたが、容赦のない夏凪のシェイクによって強制的に叩き起こされた。
夕が目を開けると、目の前は一面の白銀の世界だった。現実から逃避したくなった夕は、後ろにいる夏凪に寄りかかり、そのまま二度寝を決め込もうとする。
「夕、早く起きろ」
夏凪がさらに夕を揺さぶる。
「なんなんだよ、夢じゃないのか……」
「残念ながら、夢じゃねえよ」
翻訳ツールを使っているので、間違っていたら教えてください。




