『書』
「分かった?」
夕は向かい側の粟冬と夏凪を見た。
「分かりました」
「分かんねえ!」
粟冬は理解したように頷き、夏凪は納得がいかないように首を横に振った。
「分からなかった方は、腹筋50回ね」
夕は額を押さえた。
「分かった、分かりました!」
「もう遅い!」
夏凪は不満を爆発させながらも、地面に横たわって腹筋を始め、夕はその傍らで意地悪く笑っていた。
今朝の基礎体力トレーニングを終えた後、夕は二人を連れて芝生の上でピクニックをしがてら、「能力」についての解説をしていた。しかし夏凪からは、これが「ついで」に話すことかよ、とツッコミを入れられていた。
「簡単に言えば、『能力』って主にイマジネーション、想像力に頼るものなんだよ。理解できない?」
夕は夏凪の隣に胡坐をかいて座り、話しがてら夏凪の頭をコツコツと叩いた。
「言葉だけじゃ分かんねえよ! 例え話をしてくれ!」
夏凪は芝生に寝転がったまま文句を言った。
「例えば、水を操る『能力』が使える人がいるとするじゃない。それを武器にするような想像をしたり、もっと凄くなれば、凍らせたり蒸発させたりすることもできるでしょ〜」
「それ、ただの化学じゃねえか……」
夏凪と粟冬は、顎に手を当てている夕を呆れたように見つめた。
「君たちの『能力』を教えるのは、僕の役目じゃない。前にも言ったでしょ、僕は体術を教えに来たんだって。安心しなよ、そのうち教えに来てくれる人がいるから」
(あの人の解説は僕よりずっと上手いからね。何しろ僕は感覚派だし)
夕は無表情のまま伏目になった。
「なんであんたが教えてくれないんだよ?」
腹筋を終えて芝生に寝そべった夏凪が夕に尋ねると、夕は眉をひそめて夏凪を見た。
「『能力』にだって制限はあるんだよ。僕だって一時的に使えなくなる期間がある。それとも何、僕の感覚が冴え渡ってる時に、いつでも君を呼び出してお説教してほしいわけ?」
「勘弁してくれ……」
夏凪は芝生の上で寝返りを打った後、起き上がった。
「師匠、どうして『書』は僕たちを選んだんでしょうか?」
粟冬は地面にレジャーシートを広げて準備を進め、夏凪もシートに座ってそれを手伝っていた。
「さあね。黒と白以外の『書』なんて、ただの骨董品たちが不老不死になりたくて、自分を本の中に封印しただけのものでしょ。赤と青は結構強いけどね」
「夕、どうして赤と青だって分かったんだよ。俺たち、薫先生にすらまだ言ってねえのに」
夏凪の言葉を聞いた瞬間、夕が水を飲む手がピタリと止まった。
(あ……口が滑った……)
「僕、霊感があるんだよね」
「誰が信じるかよ!」
夏凪は視線を逸らした夕を人差し指で指さした。
「もし僕たちが能力に覚醒したらどうなるんですか? 『書』はどうなるんでしょう」
粟冬の問いかけに、夕は顔を上げた。
「どうにもならないよ。『書』はもともと君たち二人の力に惹きつけられたんだ。基本的には、もう確実に覚醒することが決まってるようなものでしょ」
夕は意図があるのかないのか、夏凪と粟冬をじっと見つめた。
「ただね、赤と青はちょっと浮気性な『書』なんだよね」
夕はそう言うと、誰かの反応を見て満足したように意地悪く笑い、サンドイッチを一口かじった。
「あいつ、今、俺たちのことを見ながら言わなかったか……?」
「さあね……」
翻訳ツールを使っているので、間違っていたら教えてください。




