トレーニング
夏凪が剣術のトレーニングへと方向転換を申し出てから、数日が経った。当初、夕はまず素振りから始めさせようとしたのだが、夏凪が「最初から実戦でいい、手加減はなしだ」と言い張ったため、結果として夏凪はほぼ一方的に夕に叩きのめされる日々を送っていた。
「遅い!」
二人が使っているのはどちらも木刀である。にもかかわらず、夕の木刀はまるで生きている蛇のように変幻自在で、高度な技術で夏凪の木刀を絡め取っては弾き飛ばした。夏凪は数歩よろめき、そのまま地面に尻餅をついた。
「左から振るんじゃなかったのかよ……なんで急に突きに変わるんだ……卑怯だぞ」
夏凪は肩で息をしながら文句を言った。
「それを臨機応変って言うんだよ。頭を使って考えないと、どんな状況だろうと君に命の危険が及ぶからね」
夕は弾き飛ばされた木刀を拾い上げ、夏凪の元へ歩み寄ってその頭をポンと叩いた。
「チッ」
夏凪は顔を背けて舌打ちをした。
「粟冬の方はどうなんだよ?」
「進歩は……まあ、あまり多くないね。一応、羊以外のものも想像できるようにはなったみたいだけど……全部動物なんだよね」
「……」
夕と夏凪が振り返ると、そこには多種多様な動物たちに囲まれている粟冬の姿があった。二人は揃って沈黙した。
「よし、トレーニングを続けようか」
「賛成だ」
(悪くないね。僕のスピードに付いてこられるようになってる)
どれほどの間トレーニングを続けた頃だろうか、夏凪は次第に防御一辺倒から、自ら主動権を握って攻撃を仕掛けられるようになっていた。
(でも、まだまだ隙が多すぎるよ)
夕は夏凪の攻撃をいなしながら、冷静に彼を観察していた。
突如、夏凪が地面を強く踏みしめた。夕の身のこなしを模倣し、凄まじい速度で前方へと鋭い突きを放つ。夕は笑みを浮かべ、それを軽くいなして横へと回避した。
(僕の真似をした? 覚えるのが早いね。じゃあ、今度は『あれ』を見せてあげようか)
技能『突刺』発動。
夕は夏凪に向けて目にも留まらぬ速さで突きを繰り出した。しかし、夏凪の身体に触れる寸前、夕の木刀はピタリと静止する。夏凪はその風圧に押されるように、再び草地へとへたり込んだ。
「え? 今のは……」
夏凪は呆然と顔を上げ、夕を見つめた。
「これが前に話した『技能』ってやつだよ」
夕は肩をすくめた。
「チートだろ」
「戦場や怪物の前ではね、チートもルールも存在しないんだよ。一瞬でも気を抜けば殺される。甘いんだよ、ガキは」
夕の言葉に、夏凪はぐうの音も出ずに俯いた。
「でも、君は筋が良いよ。すでに僕の動きを真似し始めてるし、まさか今の段階で突きを利用してくるとはね。しっかり練習しなよ。上手くいけば、君も技能を習得できるかもしれないからね」
夕は手を伸ばして夏凪の髪をくしゃくしゃにかき回したが、夏凪にパシッと払いのけられた。
「……本当に、できるか?」
「君にその才能があればの話だけどね」
翻訳ツールを使っているので、間違っていたら教えてください。




