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俺解釈三国志  作者: じる
十二話 兄妹(中平六年/189)
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1 洛陽へ(中平六年/189)

 ビンッと乾いた音がした。


「ハッ!」

 

 雄叫びと同時に馬腹を蹴る音。


 振り向いた丁原の目に、馬列から勢い良く飛び出す呂布《りょふ》の姿が映った。上空からくるくると落ちてくるもの目掛け、呂布の馬は一直線に駆けていく。呂布は走りながら左手の弓を腰の後ろに戻し、空いた左手で馬のたてがみを掴むと、器用にも馬から大きく身を乗り出し地面に落ちたそれを右手で掴んだ。


 戻って来た呂布は丁原を見て右手のものを掲げてにっこりと笑った。


「親父ぃ、コイツあげたらさ、都の女に喜んでもらえるかな?」


 矢の刺さった鴨が首から血を滴らせていた。


「こしぬかしちまうだろバカか?」


 そう言って丁原がガハハハと笑うと、一行に笑いが広がった。


 丁原、字は建陽《けんよう》。前并州刺史で、つい先日騎都尉を拝命し、兵を率いて南下中である。


 行政能力は皆無。字も僅かしか知らない。当然法も経も判らない。この粗野な男が并州刺史になれたのは、この一年余りに渡って并州の治安が極度に悪化していた為である。


 まず最初に王國の反乱があった。それに呼応して涼州武威郡の白馬銅《はくばどう》率いる休屠胡が蜂起し、休屠胡十万が并州に侵入し劫掠したのである。休屠胡は西河郡まで侵入すると西河太守の邢紀《けいき》を殺した。


 続いて起きたのが白波賊の蜂起である。太守が殺され混乱した西河郡の白波谷で賊が反乱、白波賊を号した。彼らは西河を出て州治所の太原郡までもを寇《しんりゃく》した。


 そして起きたのが刺史の殺害である。白波賊に攻められ弱体化した太原郡に休屠胡が再び攻め込んだのである。結果、休屠胡は并州刺史の張懿《ちょうい》を殺害する。


 向きを変えて南下した休屠胡は南匈奴の不満分子と合流し、南匈奴の單于、羌渠《きょうきょ》を殺した。漢朝寄りの態度を取っていた羌渠單于に代わった須卜骨都侯《すぼくこつとこう》單于は白波賊と協同し河東郡まで攻め込む、


 この状況に漢朝は手を打てなかった。北に張純と烏桓、東に青徐黄巾、西に韓遂、すぐ近くに葛陂黄巾と、対応しなければならない正面が多すぎたのである。そしてこの最悪の并州に刺史として赴任しよう、という士大夫も居なかったのである。


 丁原は北の果て雲中郡、沙南県の長史として県の兵を指揮していた。自分が先頭となって敵中に突っ込み、白波賊の、そして休屠胡の侵略を跳ね返し続けた。

 丁原は白波賊、そして休屠胡は倒すべき敵であり、やるなら殲滅しなければと思った。だが職責や法的根拠に関して深く考えなかった。県の兵を率いて他の県、郡、他の郡と転戦し、兵を糾合しながら戦い続けた。并州の北側の損害が低かったのは丁原の勇猛さによるものだ。この無茶な行動を追認する為、洛陽は丁原を并州刺史に任じたのである。


 そして先日、丁原は并州刺史の任を解かれ、代わりに騎都尉というものになった。騎都尉はどうやら将軍のようなものらしい。つまり、やることは変らない、というわけで丁原は安心した。


 都の大将軍から来た最初の命令は兵を率い、都に向かうことであった。丁原は兵を率いて都に移動を開始した。郡県で徴募した兵で、本来州の外へ気軽に持ち出していいものではないが、丁原は気にもしなかったし、誰も丁原に文句をつけれなかった。


 次と、その次命令は、兵の一部を都に先遣することであった。


 部下の中で都でもやっていけそうな張遼《ちょうりょう》、そして張楊《ちょうよう》に兵を持たせ派遣した。


(あいつら字とか書けるしな)


 そして今、丁原とその兵は河内への途上にある。大将軍から更なる命令が来たからである。何故、何のために自分が都に接近しているのか。丁原はあまり深く考えなかった。

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