始まりの町ブルム01
ふぅ。やっと最初の町が見えてきたよ。この平原ちょっと広すぎじゃない?
私のスマホを見ていてたら新マニュアルなるものがあったので確認してみたの。そしたら、神様の手で魔改造されたスマホの使い方がそれぞれ書いてあった。
まずはマップ。ほぼ真っ白で私が行ったところ(厳密には視界に映った場所かな?)だけが記載されいくみたいだった。マッピングして地図を埋めていけってことだね。でも例外として、近くの町の場所だけは記してくれたみたい。神様やっぱり優しいね。お祈りしなきゃ。
時計や日付はこの世界仕様になっているみたい。時間は地球と同じ24時間で日付は1ヶ月30日×12か月+年末2日年始3日で365日みたい。年末年始はどの月にも属さない特別な日みたいね。
写真とか計算機とかメモとかのツールも問題無く使えるみたい。でも、電話やメールは相手がいないから無理かな?神様にメール返せるのかな?試しに返してみよう。
えっと、「特典をたくさんくれてありがとうございます。おかげで異世界生活もなんとかなりそうです。」よし送信。
スマホの話に戻るね。このスマホどうやら私の魔力で動いているみたいで、私じゃないと充電出来ないし、そもそも起動も出来ないらしい。充電はMPを20ぐらい使えば満タンになるって書いてある。おにぎり(梅干し)4個分だね。
更にこのスマホ【不壊】のスキルが付いているらしくって、絶対に壊れないみたい。まさに神様からもらったアーティファクトってやつだね。アーティファクトって言葉がこの世界にあるかは知らないけど。
あ、ウソ返事来た!?なになに…?「まさか返事を下さるとは思いませんでした。あんな少しの恩恵で感謝をされるとは心苦しいですが、貴女のこれから進む先に幸あることをお祈り致します。P.S.もし何かあれば気兼ねなくメールしてくださいね。楽しみに待っています。」
神様もびっくりしたみたいだね。というか、あんな少しの恩恵って…。まぁ、神様からしたら些細なものなのかもしれないけどさ。それとも、他の転移者はもっとすごい恩恵を受けているのかな?あと、気兼ねなくメールしてって…。神様にメル友認定されちゃった!?
これたまにはメールしないと拗ねちゃうとかあるのかな?神様拗ねたら何かやってくるのかな?怖いな…。忘れないように定期的にメールする日を決めておこう。
それで最初の話に戻るけど、スマホのマップを頼りに町を目指して平原を歩くこと数時間。ようやく遠くに町が見えてきたっていうのが今の状態ね。
道中、ゴブリンとかウルフとかミニスライムとかに襲われたけど、刀や魔法の練習台になりました。死体は全部収納行きになります。ステータス差が十倍以上あるもんね。戦いにすらならないよね。
命を懸けていると思えば、これぐらい楽勝の方が良いのかも。神様ありがとうございます。
レベルも上がったよ。異世界人はステータスの上り幅が大きいとかあるのかな?私の場合最初からおかしいけどね。
〈名前〉 平野悠理
〈種族〉 人間(異世界人)
〈年齢〉 16
〈性別〉 女性
〈職業〉
〈ステータス〉
レベル 5
HP 1050/1050
MP 5100/5100
攻撃力 563
防御力 534
魔力 622
精神力 940
素早さ 546
知力 645
器用 578
魅力 684
運 505
〈スキル〉
【創造魔法】【魔法作成】【刀神】【鑑定】【不老】【精神異常無効】【元素魔法レベル2】【空間魔法レベル4】【魔力操作レベル1】
ステータスの上りは結構ムラがあるけど魔法使い寄りな感じだね。
ところで、なんで私こんなに精神力高いんだろう?これがこの異世界に来て一番謎かもしれない。真っ先に4桁行きそうな勢いだよね。まさか999でカンストとか無いよね?
新しく覚えたスキルは【魔法作成】で創った魔法と関係する魔法スキルとその関係で覚えたっぽい【魔力操作】。でもやっぱり【精神異常無効】を覚えた理由が分からない。何故なの…。私の精神はどうなっているの?
気を取り直して、新しく覚えたスキルも鑑定で見てみようか。
【精神異常無効】…精神に異常を起こす現象を確率で無効化する。確率は精神力に依存。
【元素魔法】…炎・風・土・水魔法を扱えるようになる。
【空間魔法】…空間魔法が扱えるようになる。
【魔力操作】…魔力が操作しやすくなる。
習得した経緯は謎だけど【精神異常無効】は正直とても助かるスキルだよね。ゲームとかでもそうだけど、異常状態ってとても厄介なものばかりだからね。現実なら尚の事だよ。私の精神力ならばほとんど無力化出来るんじゃないのかな?過信は出来ないけどね。
魔法系や【魔力操作】はやっぱり【魔法作成】で覚えた魔法が影響されているっぽいね。周囲の目をごまかすために、普段はレベルのある【元素魔法】とかを使うようにしよう。質問されても【元素魔法】って答えれば多分大丈夫なはず。
おっと、そんな確認をしているうちに、あちこちに人影が見えてきたね。町も大分近くなってきたからかな。遠くから確認してみようか。【創造魔法】で望遠鏡を作ってと…。ん~。2~4人ぐらいの集まりが4組ぐらい居てあちこちに散らばっているね。身なり的に兵士っぽくないから、異世界名物の冒険者ってやつかな?首からカードっぽいのぶら下げているし。
あの身なりに合わせるのはちょっと無理があるかな。日本生まれ日本育ちで割と裕福な家庭で育った私は、肌は日に焼けていない白い肌だし、着ている服は日本製の結構いい生地の部屋着だ。この世界の人基準で見たら、家出した貴族の令嬢にしか見えないよね。
でも、あの服の品質に合わせるのはちょっとなぁ。着慣れていない生地だと着心地悪いし…。
しばらく考えた末のコーディネートは、外着用のブラウスとスカートの上から全身隠せる大きい外套を纏うことにした。顔も隠せるようにフードも付けているよ。ズボンじゃなくてスカートの理由は単純に動きやすいのと、やっぱり着慣れているからかな。
もしあんまり目立つようならば、最悪は姿を隠す魔法でなんとかしようか。
冒険者っぽい人達から距離を離して町の入り口まで向かう。町の周囲には外壁があって、入り口用の大きい門があり、もちろん、門番が2人立っていた。恰好から見るに兵士っぽいかな。
初めての人との邂逅。ここでふと気付いた。私、言葉とか文字とか大丈夫なのかな?通じるのかな?これで通じなかったらすごく恥ずかしいんだけど!
慌ててスマホを取り出して神様にメールで聞いてみる。少し待つと返信が来た。異世界人は言葉と文字がデフォルトで通じるようになっているみたい。文字に関しては、書いた文字が自動で異世界文字になる仕様らしいよ。神様のお墨付きなら大丈夫だね。安心した~。
ということで、改めて門番さんに凸ってきます!
近付いてくる私を不審そうな目で見る門番2人。当たり前だよね。誰が見ても怪しいもん。でもくじけない。何としても町に入るのだ!
私はフードを少し上げて兵士に顔を見せて、微笑んでみせる。敵意が無い事を示すにはやっぱり笑顔だよね!ほら、兵士さんの顔が呆けたようになってどんどん赤くなっていくよ。ん?何この反応?
とりあえず、私は町の中に入りたいことを伝えた。
私の顔を見て呆けている兵士さんに、もうひとりの兵士さんが頭をがつんと殴った。
「すまんな嬢ちゃん。あまりにも嬢ちゃんが別嬪だったものだから、驚いちまったみたいで」
お世辞をどうもありがとうと言って、改めてもうひとりの門番さんと向き合って町に入りたいとお願いした。
「身分証は何かあるか?…無いのか。なら町に入るのに銅貨2枚必要だ。…え?お金も無い?それは困ったな…」
身分証もお金も無いよ。だって異世界から転移して平野に来たんだから。そもそも銅貨2枚の価値も分からないよ。
仕方ないから銅貨2枚っぽい価値の物を担保にしよう。え~っと…100均で作れそうな綺麗なガラスビーズのブレスレットを【創造魔法】で作って渡してみた。周りからは収納に仕舞っていたのと変わらないように見えるからきっと大丈夫。
「なっ!これはガラス?しかもこんなに小さい上に繊細な模様まで…。こ、こんな高価なものを…。分かった。これは預からせてもらう。どこかで身分証を手に入れるか、お金が手に入ったら受け取りに来てくれ。身分証ならば冒険者ギルド、物の売買でお金を得るならば商業ギルドが良いだろう」
なんだかオーバーなリアクションだね。もしかして、ガラスがまだあまり普及されていないのかな?だとしたら、凄い職人の工芸品に見えたのかも。私からしたらただ100百均なのに…。
魔力はどれくらい消費したんだろう?…100ちょうどだ。やっぱり100均じゃないかい!
まあ、やってしまったものは仕方ないよね?これで町に入れるようになったし、門番さんから冒険者ギルドと商業ギルドの場所も聞けたし。順調順調♪
未だに呆けている門番さんの横を通りすぎて、門をくぐるついでにフードも被っておく。私の容姿は割と普通だと思うんだけど。黒髪黒目が珍しいのかな?
あ、おっきい看板がある。町の名前が書いてあるっぽいね。『ブルム』、これがこの町の名前か…。