始まりの町ブルム02
門番さんから教えてもらった身分証の手に入れ方とお金の手に入れ方。前者は冒険者ギルドに行って冒険者登録をすること。冒険者カードが手に入ってそれが身分証になるんだって。
後者は商業ギルドでの物品の直接売買。身分証が無くても直接売れる物を持っていけばお金と交換してくれるみたいだね。
ちなみに、冒険者になったら素材の買い取りをしてもらえるらしいから、それでもお金は手に入るし、商人として商業ギルドに登録したら商人カードが手に入ってそれも身分証になるみたいだよ。商人カードの申請は時間も掛かるし、審査も厳しいらしいからオススメ出来ないらしいけど。そもそも私自身が商人になりたくないからパスだね。
え?ちなみにのところは門番さんと話していなかったじゃないかって?町に入ってから町の人に聞いたんだよ。話好きのおばさまを捕まえていろいろと聞いたんだ。年若い女の子のひとり旅でこの辺りは初めてなのって言ったら聞いていないことまでたくさん話が聞けた。たとえ異世界でもおばさまの話好きという設定は健在なんだね。
で、いろいろと話を聞いた結果。やっぱり、冒険者ギルドで冒険者になるのが一番無難みたいだね。全国共通で使える身分証が手軽に手に入れるのはここしかないからね。
まぁなによりも個人的な話をするならば、異世界転生と言ったら冒険者が定番だもんね。それか勇者か聖女か賢者かな?世界を救う旅に出るとか嫌だよ。いきなり知らない世界に着の身着のまま呼び出されて、「貴方は勇者です。魔王と戦って下さい」とか言われても困惑するだけだよね。そんなの知らんがなってやつ
。
もちろん、その逆の魔王パターンもお断り!勇者に襲われるの嫌だし、王ってことは臣下とか民とか居て国政しないといけないじゃない!そんな面倒なのはパスです!
自由気ままに旅をするなら冒険者で決まり!ラノベでも冒険者主人公の方が多い傾向だしね(偏見)。これ、テスト出るからね。蛍光ペンで色塗っておいてね。傾向だけに……
そんなこんなで、冒険者ギルドに到着っと。看板にちゃんと書いてあったし、門番さんとおばさんから場所も丁寧に教わったから迷わずにこれたよ。よし、では突入だー!
大きい扉を開けて中に入ると、刺さるいくつもの視線。顔も体も完全に外套で隠した人なんて怪しさ満点だもんね。当たり前だよね。
1階は各受付と依頼が張ってある掲示板、それと広めのロビーがあるだけみたい。隣の建物が居酒屋っぽかったけどギルドとは関係ない感じなのかな?イメージでは依頼終わりに一杯って感じなんだけどな。私は未成年だからお酒は飲まないけどね。この世界の基準ではオッケーかもしれないけど。
さっそく登録したいんだけど、どの受付に行けばいいのかな?あ、冒険者登録受付はこちらって書いてある。冒険者依頼受付でやってくれるんだね。冒険者が掲示板から持って来た依頼を受け付けたり、達成した依頼を報告する場所みたい。近づいたらフードを少しだけ上げて受付嬢さんに微笑むよ。笑顔は外交の基本だからね!お腹の中は真っ黒かもしれないけど。私は白いから大丈夫だよ?ホントだよ?
受付嬢さんが私の顔を見て驚いた顔してる。何かな?やっぱり黒髪黒目は珍しいのかな?隣の受付嬢さんに叩かれて我に返ったね。
「えっと、どのようなご用件でしょうか?」
私は冒険者になりたいことを受付嬢さんに伝えた。受付嬢さんは私の顔を見て目を瞬いてから手続き用の紙を出してくれた。なんだろう?何か変なこと言ったかな?
「冒険者になるためには、名前とレベルに希望するジョブ…剣士や弓使い、魔法使い等ですね…後は使える魔法やスキル等を自己申告でこの紙に書いて下さい」
いたって普通に話が進んだ。私の顔を見ていちいち反応されると気になるなぁ。ところで、自己申告で良いんだ?偽装とかしたらどうなるんだろう?気になったから聞いてみる。受付嬢さんは慣れた様子で教えてくれた。よく同じ質問されるみたいだね。それとも受け答えのマニュアルでもあるのかな?
「もし虚偽の内容を書いた場合、それが原因でギルドに不利益を被った場合は、例外なく冒険者カードのはく奪と永久に再発行不可の処置が取られます。情報は世界中の全ギルドに行きますので気を付けて下さいね。ただ、理由があって身分を隠したい場合やスキルを隠したいという方もいますので、そういった方のための自己申告制なのですよ。主に貴族の方の要望で作られたシステムですね」
なるほど、そういうことなら馬鹿正直に全てを書く必要は無いんだね。それに、鑑定系のアイテムとかでスキルやステータスを調べられることも無いんだ。これはありがたいね。お貴族様って面倒そうな生き物だけど、今日この場だけは感謝しておこうかな。
紙にすらすらと必要事項を書いていく。神様の言う通り、日本語で書いているつもりなのに異世界語に自動変換しているね。不思議だ。
書き終わったから受付嬢に手渡す。受付嬢はそれを確認するとまた驚いたような顔をした。なんだろう?何か変だったのかな?
「あの…スキルの虚偽申告は場合によっては先ほど話したカードはく奪の対象になりますよ?大丈夫ですか?」
私は首を傾げる。何か変なスキル書いたっけ?私が書いたのは【元素魔法】と【空間魔法】のふたつだ。別におかしくないと思うんだけど。私が大丈夫だと言うと受付嬢は渋々紙をもって裏に持って行った。
しばらく待っていると、奥から受付嬢と大柄な男の人が出てきた。あれ?なんか面倒事っぽい?
「お前か?レベル5で【元素魔法】が使えると書いたアホは」
出会って初めての人にアホって言われたよ。でも、どういうことなんだろう?私が何がおかしいのか聞いてみると、大柄な人は太い腕を頭の後ろにやってガシガシと掻きながらなんでこんなことも知らないんだという顔をしながら教えてくれた。すいませんね。なんせ、この世界に来るのが初めてなもので。
「良いか?【元素魔法】っていうのはな。【炎魔法】【風魔法】【土魔法】【水魔法】をすべてレベル5以上にして【四属性魔法】というスキルに派生した後、その【四属性魔法】のレベルを10まで上げて初めて会得出来る最上級スキルだぞ?基本レベルが5の人間が持っているはずがないだろう。この国全体でも1人か2人しか所有者が居ないくらい習得が難しいんだ。これぐらいは、魔法を使う者ならば常識だぞ?」
おおう。【元素魔法】はとっても凄いスキルだったっぽい。だって仕方ないじゃない。【創造魔法】とか【魔法作成】を書くわけに行かないし、ましてや、ジョブが魔法使いなのに【刀神】書くわけにもいかないんだからさ。あと、常識は知らん!この世界に来たばっかりだってば!
でもどうしようか。【元素魔法】取り消してもらう?【空間魔法】だけでも良いのか?ちょっと聞いてみようか。
「【空間魔法】は〈収納〉が使えるからそれだけでも重用されるぞ。戦闘力が無くても荷物運びとして優秀だからな」
なるほどね。冒険者からしたら重い荷物を預けられて、しかも獲物も収集物もたくさん持って帰れるわけだもんね。そりゃあ冒険者にとって垂涎物だろうよ。
ん~。【元素魔法】はなんだか面倒事の種になりそうだから、消してもらおうか?私がそうお願いすると、大柄な男の人と受付嬢さんが安心したようにほっと息を吐いた。
それからは無事に冒険者カードを受け取ったよ。カードに私が書いた内容が記載されているみたい。後で付け足したりしたい時はまた受付で頼むんだって。お金取られるけど。
冒険者カード
〈冒険者ランク〉G
〈名前〉ユーリ
〈レベル〉5
〈ジョブ〉魔法使い
〈スキル・魔法〉空間魔法
私のスマホで見るステータスの超簡略版だね。そういえば、普通の人ってどうやってステータス確認するんだろう?後ろにも人が並んでいないし、ちょうど良いから受付嬢さんに聞いてみた。
「ステータスの確認ですか?通常の方法では、教会へ行ってお金を支払えば、教会が持っているアーティファクトで調べてもらえますよ。1回につきステータスだけならば銅貨1枚、スキルも込みならば銅貨3枚です」
へぇ~。アーティファクトっていうので鑑定するんだね。というか、アーティファクトって名前の物が存在するんだね。私はスマホでステータス確認出来るから、教会には用事は無いかな。それに、通常の方法って言い方をしたってことは、通常じゃない方法だってあるってことだし、私が自分のステータスを確認出来てもおかしくないよね?
それからは受付嬢さんから冒険者に関する説明を受けたよ。
「冒険者にはG~Sランクまでありまして、冒険者になった方は特例を除いて全てGランクからになります。既定のポイントを貯めた場合にランクが上昇します。ポイントは依頼を達成して報告した時の他、ギルドへの貢献をした時などにギルド側から入れることになっています。基本的に自分のランクのひとつ上のランク以下の依頼しか受付出来ませんので依頼を選ぶ時は注意してくださいね。それと、収集の買い取りについては品質によって買い取り額が上下するのはもちろん、魔物に関しては解体していない場合、解体の手数料として買い取り金額から2割をギルドで頂きますので、可能な限り解体を覚えた方が特ですよ。薬草等の見分け方や魔物の解体のやり方やどの部位が価値があるかはギルド職員に質問するか、1階奥にある資料室をご利用下さい」
ふむふむ。資料室!これは見ておかないとダメだよね。情報収集は冒険者の基本だもの!…たぶん。冒険者になったこと無いから知らないけど、私の読んでいたラノベだとそんなことが書いてあったような気がする!
懇切丁寧に教えてくれた受付嬢にお礼を言ってから、私は資料室に直行した。
資料室はそこそこの広さで、たくさんの本が置いてある棚がいくつかあって、読者スペースとして長テーブルが2つ奥に置いてあった。
管理している司書さんに挨拶をして、資料室のルールを聞いた。
持ち出しは不可だけど、写本とかするのは良いみたい。もしろ文字を覚えられるから、利口な冒険者はここで写本して文字を覚えるんだって。わからない言葉とかは司書さんに聞けば教えてくれるみたいだね。
ちなみに、古い本は羊皮紙だったけど、ほとんどの本は植物紙だった。紙はそこそこ普及しているみたいだね。本の値段は分からないけど、少なくとも冒険者ギルドに資料室という名で大量に置いてあるくらいならば貴族や富豪しか持てないほど高い訳じゃ無さそうだね。
その他にも司書さんにどんな内容の本が読みたいか聞けば、本を持ってきてくれるらしいから、さっそく幾つか知りたい内容を質問してみた。
迷わずに分厚い本を3冊持ってきてくれた司書さんお礼を言って、読書スペースで読んでいくよ。重要そうなものはスマホのカメラで撮っておこうか。パシャパシャ。司書さんの視線が気になるけど無視無視。
知力が高いからかどうかわからないけど、一度読んだ内容はほぼ覚えているみたい。高性能な体をありがとう、神様。でも、覚えられるなら写真いらないかな?まいっか。ずっと覚えていられるかは分からないし?
3冊読み終わる頃にはもう夕方近くになっていた。資料室の窓(もちろん木窓)から夕焼けに染まる空が見えて私はとても焦る。
しまったぁあああ!門番さんに無事に身分証が手に入ったこと伝えないと!それに宿屋もまだ決めていなかった!そもそも、まだお金手に入れて無いじゃん!魔物の死体を素材受け取りのカウンターに持っていこう。手数料取られるけど今回は仕方ないよね。
慌ててギルドのカウンターまで戻ってきて(本はもちろん司書さんに返したよ?)、収納に仕舞っていたゴブリンとかウルフとかミニスライムの死体を放り出してお金にしてもらった。状態が良いから、手数料込みでもそこそこのお金になったみたい。
それから、慌ただしくギルドを出て門に向かった。ギルドを出るときなんだかざわざわしていたけど今はそんなことどうでもいい。今は約束を守ることと、宿屋のほうが大事!特に後者!
門番さんに無事に身分証が手に入ったことを伝えた私は、門番さんが預かっていたガラスビーズのブレスレット(100円)を返してもらった。別に要らないけど、なんだかこの世界では高価な物っぽく見えるみたいだから、きちんと回収しておかないと。
それから門番さんに良さげな宿屋を教えてもらって即直行。良かった~空いてた~。さっそくお金を払って部屋に案内してもらったよ。お風呂は無いけど、ひとり部屋にしては広いし何より布団がふかふかぁ!?なんで!?地球の高級羽毛布団並みなんだけど!?
まあ、いいや。なんやかんやで疲れたからもう寝ようか。無事に冒険者になれたしね。では、おやすみなさい。




