第九十一話 なーんの足あと?
「わふっ!」
今日は朝からお日さまきらきら。
肌寒いけど気持ちがいい。
「わぁー!」
ユウトは外へ飛び出した。
「まだ雪いっぱいだね、わんわん」
「わふっ!」
わんわんも元気いっぱい。
雪の上を。
ぴょん。
ぴょん。
跳ねながら走る。
◇
白く真っ直ぐな道。
振り返ると。
そこには、わんわん。
わんわんの後ろには。
ちょんちょんと。
さっきまで歩いたところに。
縦長の足あとが。
二列並んでる。
ふと。
ボクの歩いた道を見ると。
そこには。
小さな靴の形そっくりな足あとが。
じぐざぐ並んでる。
「わぁ、見て!わんわん。これボクたちのあしあとだよ!」
大発見だ。
◇
それからボクたちは。
足あとをいっぱいつけながら遊んだ。
あっちに行ったり。
こっちに行ったり。
時には、道から踏み出して。
大きくずぼっと。
足が沈んだり。
わんわんとあははと笑いながら。
飛んだり。
跳ねたり。
◇
その時。
「わふ?」
わんわんが立ち止まった。
くんくん。
雪の上を見つめている。
「どうしたの?」
ユウトもしゃがみ込む。
「わっ、あしあとだ!」
雪の上に。
小さな足あと。
ちょん。
ちょん。
ちょん。
「だれのあしあとだろう?」
ユウトは目をまんまるにした。
ボクの足の形と違う。
わんわんの足の形とも違う。
そして、とても小さな足あと。
形も不思議。
前に3本、後ろに1本
ボクたちの。
どっちとも少し違う。
「わふ?」
わんわんも首をかしげた。
◇
「追いかけてみよう!」
「わふっ!」
一人と一匹は。
足あとを追いかける。
さくっ。
さくっ。
雪を踏みながら歩く。
足あとは。
まっすぐ。
ずっと続いていた。
◇
「わっ」
急に。
足あとが消えた。
「なくなっちゃった」
「わふ?」
辺りを見回す。
すると。
少し向こう。
ちょん。
ちょん。
ちょん。
さっきの足あとだ。
「あっ、みつけた!」
また続いている。
「とんだのかなー?」
ユウトは不思議そう。
わんわんは。
ぴょん。
ぴょん。
真似して飛んでそう。
「あははっ!」
「わんわん、とんでるみたい」
「わふぅ♪」
ユウトも真似して大きく飛んでみる。
◇
足あとを追いかけていると。
雪をかぶった木があった。
その下を通った瞬間。
ふわっ。
どささっ。
「わぁぁ!」
頭の上へ雪が落ちてきた。
「わふぅ!?」
わんわんも雪だらけ。
一人と一匹は。
真っ白。
「あははは、びっくりしたねー、わんわん」
ユウトは大笑い。
わんわんも。
ぶるぶるっ!
雪を飛ばす。
ぱらぱらぱら。
「あはは!」
また笑った。
◇
しばらく足あとを追いかけて歩いていると。
「おはよう」
ふと、近くから急に優しい声。
「ゆきりん、おはよう」
白い髪。
白い服。
雪の結晶を頭につけた女の子。
ゆきりんはにっこり笑った。
「何してるの?」
「これ!」
ユウトは足あとを指さす。
「なーんのあしあとかさがしてるの!」
ゆきりんは。
しゃがみこんで。
じーっと見つめる。
「ふふっ、かわいい足あとね」
「しってるの?」
「うん、なんだろうね。見たことはあるけど」
でも。
それ以上は言わなかった。
「いっしょにさがすのてつだって」
ユウトがお願いすると。
「うん」
ゆきりんはにっこり笑顔で答えてくれた。
「わふっ!」
わんわんは。
しっぽぶんぶん。
◇
三人で歩く。
さくっ。
さくっ。
さくっ。
足あとを追いかける。
途中で。
わんわんの足あとに似た。
縦長の少し丸い足あと。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
と三角を反対にしたみたいにある。
すると。
がさがさ
と、近くの茂みから。
雪玉みたいな白いうさぎ。
ぴょこん。
「わぁ!」
ユウトが近づこうとすると。
ぴょーん。
すぐ逃げてしまった。
「わわわっ、はやーい」
「わふっ!」
わんわんも追いかける。
でも。
すぐ見失った。
「あー、うさぎさん、どこかにいっちゃったね」
「わふぅ」
ユウトは残念そう。
わんわんも残念そう。
でも、それを見てゆきりん。
くすくす。
とても楽しそう。
「くすくす、でもいっぱい走ったから楽しいね」
ユウトはうん。と笑顔になる。
◇
また歩く。
またあの足あと。
前に3本、後ろに1本。
不思議な形。
ちょん。
ちょん。
ちょん。
「ねぇ」
ユウトが聞いた。
「どこまでつづくのかな?」
「そうね、どこまでだろうね」
ゆきりんは優しく微笑み。
ゆっくりと空を見上げる。
少しだけ。
寂しそうな気がした。
◇
やがて。
一本の大きな木へたどり着いた。
「……あれ?」
そこで。
足あとは終わっていた。
「きえちゃった」
ユウトは木の周りをぐるぐる。
「こっちはないよー。ゆきりん、そっちはあるー?」
「こっちもないよー」
「わふぅ」
わんわんも。
くんくん。
くんくん。
探す。
でも。
見つからない。
◇
ゆきりんは。
大きな木を見上げた。
「もうすぐ、お家に帰るのかもね」
ぽつり。
「かえる?」
ユウトが聞く。
「うん」
「春になる前になるとね、みんな、お家へ帰る準備を始めるの」
「そうなんだ」
ユウトはよく分からなかったけれど。
「またくる?」
「うん、また冬になったらね」
ゆきりんは笑う。
「そっか!」
ユウトも笑った。
◇
「帰ろっか」
「うん!」
来た道を戻る。
わんわんは。
ユウトの足あとを。
ぴょん。
ぴょん。
重ねるように歩く。
「わふぅ♪」
なんだか楽しそう。
ゆきりんもくすくす笑ってる。
ユウトも笑う。
◇
その後ろを。
ゆきりんは。
少しだけ立ち止まっていた。
雪の積もった大きな木。
さっきまであった足あと。
もう見えない。
「……もう少しだけ」
小さくつぶやく。
「みんなとあそんでいたいな」
その声は。
風に乗って。
誰にも届かなかった。
空から。
ふわり。
一枚だけ。
雪が静かに舞い降りた。




