第九話 たんぽぽを、ふー
「ユウトー! 見て見てー!」
「んぅ……?」
ぽかぽかのお昼。 ボクが縁側でうにうにしていると、リサがぱたぱた走ってきた。
「すごいの見つけたの!」
「すごいおふとん……?」
「あははっ、違うよぉ。これよ、これ!」
リサは、えへんっと胸を張る。その手には。
「たんぽぽ!」
「おぉー」
まんまる黄色のお花だった。春の草のにおいがする。
「村の外にいっぱい咲いてるの見つけたのよ!一緒に行こう!」
「いっぱい咲いてるの?見たい!」
「わふっ!」
わんわんもしっぽをぶんぶん振った。
「わんわんも行きたいって!」
「うん、行こう!」
今日は風もやさしい。ぽかぽか。つまり。 おさんぽ日和だった。
◇
「わぁーっ!」
村の外の野原。そこには、たんぽぽがいっぱい咲いていた。
「きいろだぁ」
一面、ぽつぽつ黄色。風が吹くたび、葉っぱがゆらゆら揺れている。
「すごいでしょー!」
「うん、すごい、すごい、いっぱいだね!」
わんわんも、草むらをぴょこぴょこ歩いていた。
「わふっ!」
「あっ、わんわん食べちゃダメだよー!?」
ぱくっ。
「あっ」
「食べたぁ!」
わんわんは、もぐもぐしていた。
「おいしいのかなぁ……」
「たんぽぽ食べないの!」
リサがあわてて抱き上げる。
「わふぅ……」
ちょっとしょんぼりしていた。
◇
「ねぇユウト、これ知ってる?」
リサがしゃがみこんだ。そこには、白くてもこもこの丸い花。
「しろくてまぁるいね」
「これね、たんぽぽの綿毛!」
「わたげ?」
ふわふわだった。なんだか雲みたい。
「こうするの!」
リサが、ふーっと息を吹く。
ふわぁぁ……。
「おぉぉ」
白い綿毛が、空へ飛んでいった。
「すごぉい、すごぉい」
「ねっ!?」
綿毛は、風に乗ってふわふわ飛ぶ。きらきらのお日さまの中を、ゆっくり漂っていた。
「なんだかお空をおさんぽしてるみたいだね」
「ふふっ、ほんとだね!」
ボクも綿毛を持つ。
「ふー」
ぽふっ。
「あれ?」
一個しか飛ばなかった。
「あははっ!ユウト、もっと強くふーしないと」
「ふーーー」
今度は何個か飛んで行った。次こそ全部飛ばしたいなぁ。
◇
そのあと。
「もっと大きいの探そう!」
リサは元気いっぱい走っていく。 わんわんも、てくてくついていく。
「わふっ!」
でも。ボクは途中で立ち止まった。
「……?」
草の上。綿毛がひとつ、ぽつんと落ちていた。
風が吹く。
ころころ。
「おさんぽしてる」
なんだかかわいかった。
ボクは、そっと指に乗せる。
「どこにいきたいの?」
綿毛は、ふわっと飛んだ。
「わぁ……」
空へ。高く。ゆっくり。
春の風に乗って、どこまでも飛んでいく。
「ユウトー!」
「あっ」
遠くから、リサの声。
「こっち、すっごい大きいたんぽぽあったよー!」
「いまいくー」
とことこ歩き出す。わんわんも戻ってきた。
「わふっ」
「わんわんも見つけた?」
「わふぅ!」
しっぽぶんぶん。たぶん見つけたらしい。
◇
「せーのでやるよ!」
「んー」
「わふっ!」
リサとボクとわんわん。三人で並ぶ。
大きな綿毛を持って。
「せーの!」
『ふーーーっ!』
ふわぁぁぁっ。
「わぁーーー!」
いっぱい飛んだ。
白い綿毛が、空いっぱいに広がる。ふわふわ。ゆらゆら。
春の空へ飛んでいく。
「きれい」
「うんっ!綿毛さんたち、気持ちよさそう」
「わふぅー!」
綿毛のおふとんがあったら気持ちいいだろうなぁ。




