第十話 もーもーの乳搾り
「今日はおじさんの牧場でお手伝いに行くわよ!」
「んー、ぼくじょー……?」
「……あっ」
思い出した。
「うしさん!もーもーの日だ!」
「そう!乳しぼりのお手伝い!」
リサは今日も元気いっぱいだった。
「早くしないと、お仕事終わっちゃうよ!」
「んっ、分かった。行こう」
「ユウト、早く早くー、行くよー!」
「あっ、リサ待ってー」
リサは待ちきれないのか、早く早くと急かしてくる。
◇
「わぁぁ……」
村のはずれ。牧場には、もーもーさんたちがいた。
「おっきい……」
「ねー!」
「もぉー」
大きい。のんびりしている。なんだか安心する。
「わふっ!」
わんわんも興味しんしんだった。
「あははっ、わんわん怖がってないねぇ」
牧場のおじさんが笑う。
「この子たちは優しいから大丈夫だぞー」
もーもーさんは、もしゃもしゃ草を食べていた。
「ずっと食べてる……」
「ユウトみたいにずっと寝てないだけえらい!」
「もー……」
「なんか返事した!?」
◇
「よーし、今日は乳しぼり体験だ!」
「たいけん……」
木のイスに座る。目の前には、もーもーさん。
「やさしくやるんだぞー」
「うん……」
おじさんが見本を見せる。
ぎゅっ。ぴゅーっ。
「おぉぉー!」
「すごいでしょ!」
リサが目をきらきらさせた。
「次、ユウト!」
「んー……」
ボクもやってみる。
ぎゅ。
……ぷしっ。
「あっ」
「出たー!」
「ちょっとだけ!」
「おぉー……」
なんだか楽しかった。
もう一回。
ぎゅっ。
ぴゅーっ。
「わぁぁ!」
「上手上手!」
リサが拍手する。
もーもーさんは、のんびりしていた。
「もぉー……」
「やさしいねぇ」
◇
「わふっ!」
その時。わんわんが、もーもーさんのしっぽを追いかけ始めた。
「あっ、わんわん!?」
ぶんっ。しっぽが揺れる。
「わふぅー!」
ぴょこぴょこ。
「こらこらー」
でも。もーもーさんは怒らない。
のんびり。もしゃもしゃ。
「もぉー」
「わんわん、遊んでもらってるみたい!」
「やさしい……」
ぽかぽかの風。草のにおい。もーもーさんのあったかさ。
「なんか……ねむく……」
「寝ちゃダメー!?」
◇
「はい、できたて牛乳だぞー」
「おぉー……」
木のコップを受け取る。白くて、ほんのり湯気が出ていた。
「いただきます!」
ごくっ。
「……!」
「どう?」
「おいしい……」
あったかかった。やさしい味がした。
リサも、ごくごく飲んでいる。
「おいしー!」
「わふっ!」
「わんわんは飲めません!」
「わふぅ……」
ちょっとしょんぼりしていた。
◇
帰り道。
「もーもーさん、のんびりだったねぇ」
「うん……」
「ユウトと似てるかも!」
「もぉー……」
「真似した!?」
春の風がふわっと吹く。
ぽかぽか。のんびり。
「……もーもーさんのおなか、あったかそうだった……」
「たしかに気持ちよさそうだったねぇ」
「今度、もたれて寝たい……」
「怒られるよぉ!?」
でも。もーもーさんなら、ちょっとだけ許してくれそうな気がした。




