第八十六話 かまくら、ぽかぽか
翌朝。
今日は昨日より雪が積もってる。
「わぁー、ゆきがいっぱいだ」
ユウトは外を見る。
昨日の約束。
今日はみんなで。
かまくら作り。
「ほら、ユウト。今日はみんなでかまくら作るんだろ?早く行くぞ」
おとうさんもなんだか楽しそう。
子どもみたいに目がキラキラしていた。
「わふっ!」
わんわんも。
しっぽぶんぶん。
◇
広場には、もうガンツたちが来ていた。
昨日の雪玉の周りには更に雪が積もってる。
ガンツたちだ。
スコップを片手に。昨日の大きな雪玉辺りを掘っていた。
「ユウト、遅いよー!」
「ごめーん!」
リサが手を振る。
その後ろ。
リーナお姉ちゃんも。
リサパパも。
一緒に手を振ってる。
「おーい、ユウトー、これ、すげー大きいだろー」
へへへっと、ガンツは得意気に雪玉をぱしぱしと叩き、胸を張る。
「うん、すごーい。もう中に入れる?」
ユウトは目をキラキラ。
「わははっ、まだだよ。もっと中を掘らないと」
ガンツは笑いながら中を見せてくれる。
まだ少ししか掘れてないみたいだ。
「ねぇ、ユウト。あの雪玉の上に登ってみたくない?」
リサは隣に来て髪をかきあげながら言った。
そして急に手をつないで
ぱっと。
雪山に駆け上がろうとした。
その時。
「リサ、待った、待ったー!」
大きな声が響いた。
リサパパだ。
「リサー、かまくらは上に乗ったら危ないからだめだぞ」
「えぇーっ、そうなのぉ?」
不満いっぱいのリサ。
リサパパは困ったように笑いながら、一本の長い木の枝を取り出した。
「いいかい。ただ掘るんじゃなくて、賢く作ろうじゃないか」
リサパパは、雪山にいくつも枝を突き刺していった。
「これが『厚さの目印』だ。掘っていてこの枝が見えたら、そこからは削っちゃダメ。それが安全な壁の厚さだよ」
その言葉に、子どもたちの目がきらりと光った。
「なるほど! 宝探しみたいだ!」
やる気満々のミックとポルン。
早速雪山に飛びついた。
元気いっぱいだ。
「ボクもつくりたーい!!」
ユウトは雪を見て、ぴょんぴょん。
「ガンツー、ボクも掘るの手伝うよ」
それを聞いて。
ガンツはにっこり。
「よし、ユウト。まずは掘った雪を外に集めて出してくれ。これは大切な係だぞ」
「うん、わかった。がんばる!」
「ねぇ、リサ。私たちも手伝いましょ」
リーナお姉ちゃんは手袋をはめてリサに手を伸ばす。
「うん、リーナお姉ちゃん。ユウトと一緒に雪を外に運ぶわ」
リサはリーナお姉ちゃんの手を取り、駆け出す。
ガンツが大きな声を出す。
「よーし、それじゃみんなでかまくら完成させるぞー!」
おー!
っと、ポルンやミックは雪玉の中から雪をかき出す。
まだまだ元気いっぱい。
えっほ。えっほ。
一生懸命。
おでこいっぱいに。
汗をにじませながら。
掘っていく。
「ふぅ、大変だぁ。全然進まないよぉ」
ポルンが疲れたーと座り込む。
「はい、ホントですね。疲れましたー」
ミックも休み出す。
「はははっ、ほらほら、二人ともどうした?ほら、ガンツを見習って、がんばれ!」
ガンツは汗いっぱい。
でもまだまだ元気にやっている。
すると。
「おっ、枝が見えたぞ!」
ガンツが叫ぶ。
お父さんがすぐに行く。
「そこはもう掘れたな。がんばったなガンツ」
とお父さんが褒めた。
ガンツはすごく嬉しそう。
◇
ちらちら。
雪がまた降り始めた。
その時。
ふわっ。
白い小さな影が後ろから声をかけてきた。
「こんにちは」
「えっ?」
みんなが振り向く。
白い髪。
白い服。
頭には小さな雪の結晶。
まるで雪でできた女の子だった。
「わっ、もしかしてあの時の雪の精霊さん?」
リサが首をかしげる。
その子は少し恥ずかしそうに笑う。
「うん……雪の精霊」
「雪の精霊!?」
みんなびっくり。
でも。
「わふっ♪」
わんわんは嬉しそうに駆け寄った。
「わふぅ!」
しっぽをぶんぶん振る。
「わっ♪」
雪の精霊も笑顔になる。
「また会えたね」
優しくわんわんを抱きしめた。
「わっ?すごくなかよしだ」
ユウトがおどろく。
「うん」
雪の精霊は嬉しそうに頷いた。
「昨日もね」
「わんちゃんが遊んでくれたの」
「わふぅ♪」
わんわんは得意そうだった。
◇
みんなで掘る。
わんわんが面白がって、運び出した雪の山にダイブしてくる。
雪まみれになって「わふっ!」と吠える姿に、みんなの笑い声が広場に響いた。
「よーし、また休憩しよー。水分も取るんだぞ」
そう言って。
リサパパは温かいお茶を用意してくれていた。
あったまる。
温かいのが美味しい。
とその時。
リサが雪の精霊と遊びながら
「ねぇ、そういえば雪の精霊じゃ、呼びにくいから、ゆきりんって呼んでいい?」
リサが雪の精霊に聞く。
「ゆきりん?」
雪の精霊はきょとんと。
「雪の精霊でしょ。だから、ゆきりん。どう?」
「うん。とっても素敵ね。ありがとう、リサ」
ゆきりんもリサも嬉ししう。
でもまだまだかまくらは先は長そうだ。
その時。
「ねぇ、わたしも手伝っていい?」
とゆきりん。
「うん、もちろん」
みんなが答えると。
ゆきりんは。
タン。タン。
と軽く踊り出す。
すると。
かまくらの中から。
ゆきりんの周りに。
雪が少し集まってきた。
「ちょっと壁が薄いところがあるから直すね」
「えっ、そんなことも分かるの?」
「す、すごーい」
「わぁ、雪が移動するぞ。すげーな」
みんな、きゃっきゃっと騒ぐ。
「よし、これでいいかな。天井が少しだけ崩れそうだったから直したよ」
「みんな、入ってみたら?」
お父さんが気を取りなおして。
みんなに入るよう促す。
「おっホントだ。きれいだな」
ガンツはびっくり。
「後はみんなでがんばって」
「うん、そうね。残りみんなでがんばりましょ!」
リーナお姉ちゃんがおー!とすると
みんなもおー!と応える。
それからみんなで、中を掘り掘り。
みんな夢中になって雪を運ぶ。
気づいたらもうお昼もこえていた。
「やったー。完成したー!!」
◇
リサパパとお父さんが危なくないか確認して。
「よーし、それじゃみんなで中に入ってみよう!」
リサパパが中に入るよう促す。
「みんなも入っていく。」
恐る恐るユウトが中に入ると、そこは不思議なほど静かで、柔らかな光に満ちていた。
「わあ……」
リサも続いて中に入る。
狭いけれど、みんなの吐息で少しだけ空気が温かい。
「とっても素敵ね」
外の雪景色とは違う、自分たちだけの空間。
ゆきりんでがだいぶ仕上げたけど。
みんなで作り上げたその場所は。
どんな宝物よりも輝いていた。
「次は、ここでおやつだね!」
ポルンがそう言った途端。
みんなの笑い声がひびいた。
「かまくらって暖かいね」
リーナお姉ちゃんが言うと。
「うん、気持ちいい」
ゆきりんも楽しそう。
「おやつも美味しいですよ」
ミックもポルンも。
ガンツも。リサも。
ユウトも。わんわんも。
お父さんに。リサパパも。
「あれ?こここんなにひろかった?」
不思議な感じがした。
ユウトがリサに聞くと。
「ほんとね。広くなったかも?」
「えへへっ、少し広げたよ」
と、ゆきりんがてへぺろしてる。
いつの間に。
ゆきりん、すごいなぁ。
◇
ゆきりんが、かまくらの中を見回した。
「みんなは気に入った?」
「うん、とっても」
なぜかリサがえっへん。
「よかった」
ゆきりんは目を細める。
「雪でね、遊んでもらえるのが一番嬉しいの」
「そうなの?」
「うん」
「だから今日は、とっても嬉しい」
そう言って。
くるり。
一回転。
ふわっ。
すると。
外から。
さらさら。
ふわふわ。
きれいな雪が静かに降り始めた。
「わぁ……」
誰も声を出さなかった。
あんまりきれいだったから。
◇
「また遊びに来るね」
ゆきりんは手を振った。
「またねー!」
「また遊ぼう!」
「わふっ!」
ゆきりんは、ふわりと風に乗って空へ舞い上がる。
白い雪と一緒に。
小さく。
小さく。
見えなくなった。
◇
「ゆきりんってすごいね」
ユウトがぽつりと言う。
「うん!」
リサも笑う。
「雪合戦も!」
「かまくらも!」
「ゆきりんも!」
「全部楽しかった!」
わんわんは。
ユウトの隣へぺたん。
「わふぅ」
雪は今日も。
しんしんと降り続ける。
でも。
みんなの心は。
かまくらの中みたいに。
ぽかぽかだった。




