第八十四話 わんわん大冒険②
※わんわん視点のお話です。
*****
「わふっ!」
朝。目を覚ます。
なんだか明るい。
でも視界はまっしろ。
冷たい。
むくっと立ち上がる。
見えるもの全部。
まっしろ。
白くて。
ふわふわ。
お庭も。
道も。
木も。
みーんなまっ白。
「わふ」
しっぽぶんぶん。
ぴょん。
ざふっ。
白い固まりに飛び込む。
冷たい。
けど。
たのしーい!!
ざふっ。
ざふっ。
いつものお庭なのに。
今日は違う。
冷たくて楽しい!
白いお山はわんわんより高い。
「わふ?」
いつもの道が見えない。
どこも白い。
ふわふわ。
もこもこ。
またわくわくが止まらない。
「わふっ!」
ぴょーん!
ずぼっ。
雪の中へ飛び込んだ。
◇
ずぼっ。ずぼっ。
「わふぅ!?」
体が半分埋まった。
雪が深い。
前へ進む。
ずぼっ。
ずぼぼっ。
「わふっ!」
でも楽しい。
ぴょん。
ぴょーん。
雪を飛び越えながら進む。
でもその度に。
ざくっ。
ずぼっ。
雪の壁。
雪の坂。
雪のトンネル。
いつもの庭なのに。
今日は大冒険だった。
◇
てくてく。
ぴょん。
だだだっ。
雪には。
いろんな足あと。
ぴょこぴょこ。
小鳥さん。
ちょんちょん。
ねこさん。
てくてく。
誰かの足あと。
「わふ?」
くんくん。
冷たいにおい。
でも。
どこか優しい。
ふわふわしたにおい。
◇
くんくん。
くんくん。
雪の山を登る。
その向こう。
「……さむい」
「わふ?」
誰かいる。
雪玉みたいに丸くなっている。
真っ白。
ふわふわ。
小さな子。
膝を抱えて震えていた。
「さむいよぉ……」
「わふ?」
近づく。
くんくん。
見たことある。
小さい子。
でも。
怖くない。
とても優しいにおいだった。
◇
その子は。
顔を上げた。
白い髪。
白い服。
頭には小さな雪の結晶。
「わぁ……」
「わんちゃん……」
にこっ。
笑った。
でも。
ぶるっ。
また震えた。
「わふっ?」
「……ほら、おいで」
おいで。おいで。された。
わんわんは一歩一歩。
ゆっくり近づく。
しっぽはふりふり。
優しい手がのびる。
体をやさしく撫でられる。
「わぁ、気持ちいい。」
「雪もこれくらい温かかったらいいのになぁ」
「わふ?」
わんわんは首をかしげた。
雪なのに。
温かいのがいいい?
なんだか不思議。
「わたし……」
「雪の精霊なんだ」
「でも」
「寒いの苦手なの……」
「わふぅ?」
ますます分からない。
でも。
寒そう。
それだけは分かった。
◇
わんわんは。
ぺたん。
その子の隣へ座った。
ぴとっ。
体をくっつける。
「わっ」
「……あったかい」
精霊さんが笑う。
「わふぅ」
しっぽ。
ふりふり。
すると。
精霊さんも。
そっと。
わんわんを抱きしめた。
「もふもふ……」
「気持ちいい……」
「わふぅ♪」
なでなで。
もふもふ。
わしゃわしゃ。
わんわんも嬉しくなって。
ぺろっ。
精霊さんのほっぺを舐めた。
「きゃっ」
「あはははっ!」
笑った。
さっきまで震えていたのに。
もう笑っている。
◇
「ありがとう」
精霊さんは立ち上がった。
さっきより元気。
「元気になった!」
ぴょこん。
雪の上を跳ねる。
「わたしね」
「雪が大好きなんだ」
「でも」
「寒いのは苦手なの」
えへへと雪の精霊は笑う。
「だから」
「わんちゃんのおかげ!」
わんわんの頭をなでる。
「わふっ!」
しっぽ。
ぶんぶん。
「お礼するね!」
くるっ。
くるくる。
ふわっ。
精霊さんが空へ浮かんだ。
◇
くるり。
くるり。
ふわり。
空で踊る。
すると。
さっきまで止みそうだった雪が。
さらさら。
ふわふわ。
また降り始めた。
「わふ?」
上を見る。
空いっぱい。
白い雪。
きらきら。
ふわふわ。
とってもきれいだった。
「ありがとうー!」
精霊さんが手を振る。
「またねー!」
ふわっ。
風に乗って。
どこか遠くへ飛んでいった。
◇
「わふぅ」
静かになった。
雪だけが。
しんしん。
降っている。
その時。
「わんわーん!」
遠くから。
聞き慣れた声。
「わふっ!!」
耳がぴんっ。
ユウトだ。
わんわんは。
だだだだっ!
雪を蹴る。
ぴょん。
ぴょん。
雪煙を上げながら走る。
早く。
早く。
ユウトのところへ。
◇
「わんわーん!」
ユウトが手を振っていた。
「わふーーっ!」
ぽーんっ!
胸へ飛び込む。
「わっ!」
「あははっ」
「ゆきだらけ!」
ユウトは笑いながら。
わしゃわしゃ。
頭を撫でてくれた。
「わふぅ……」
やっぱり。
ここが一番。
安心する。
その時。
ふわり。
また一つ。
雪が降る。
その向こう。
遠い空で。
白い小さな子が。
にこっと笑って。
手を振ったような気がした。
「わふっ♪」




