第八十三話 とにかく寒い。でもボクにはこれがある!
びゅううう。
びゅううう。
いつもより一段と冷たい風。
ちらちらと降る雪。
「さむそう……」
ユウトはお外を見る。
木の枝がゆらゆら。
空はどんより。
「今日は寒いわねぇ」
お母さんもお外を見ながら微笑む。
「さむい、さむい」
ユウトの吐く息。
白くふわぁ。
「しろい!」
「本当に今日は寒いわねー。ユウト、寒くない?」
でも。
ユウトはにこっ。
「へいき!」
「そうなの?」
お母さんが首をかしげる。
「うん!」
ユウトは嬉しそうに両手を出した。
「ボクにはこれがあるもん!」
茶色の手袋。
お母さんが編んでくれた。
大切な手袋。
「ふふっ」
お母さんも嬉しそう。
「うふふっ、嬉しいわ。いっぱい使ってくれて。ありがとうね」
◇
「いってきまーす!」
外へ飛び出す。
「さむーい!」
びゅううう。びゅううう。
冷たい雪と風がほっぺをなでる。
寒い。
でも。
「えへへ」
ぎゅっ。
手袋の中のおててはぽかぽか。
「へいきー!」
わんわんも。
「わふっ!」
お庭を元気に走り回る。
「わんわんもげんき!」
しっぽをぶんぶん。
ユウトも元気いっぱいだった。
◇
広場。
雪は少しずつ積もってきてる。
「おっ、ユウト。やっと来たな」
「リサ、おはよー」
リサも、ガンツも、みんな手袋をしている。
「今日は寒いねぇ」
「うん!」
「はははっ、そんなことよりかくれんぼして遊ぼうぜ!」
「おぉ!」
元気いっぱい走る。
かくれんぼしたり。
鬼ごっこをしたり。
かけっこをしたり。
隠れて。
笑って。
捕まって。
また笑う。
ふぅ。
少し休憩。
白い息がふわふわ。
「おててつめたくない?」
リサが聞く。
「うん!」
ユウトは手袋を見せる。
「てぶくろあるもん!」
「うん、リサも」
てぶくろを見せ合いっこ。
「すっごくあったかいよ!」
「すっごくあったかいね!」
えへへ。
なんだか胸までぽかぽかした。
◇
びゅううう。びゅううう。
びゅううう。びゅううう。
雪は更に強くなる。
「ひゃー、いっぱい降ってきましたねー」
ミックのお鼻は真っ赤。
「すごく寒いねぇ。おうちに戻ろうよぉ」
ポルンは体をぶるぶる振るわせてる。
みんな寒そう。
「あっ」
ユウトはそうだ!と思い。
「おふとん召喚!」
ぼふん。
ふわふわのおふとん。
「おふとんいいですねー。寒かったですもんねぇ」
「わっ、やった。それ!」
ポルンは素早く潜り込む。
「リサも入るー。入れて、入れてー」
ひとり。
ふたり。
さんにん。
と順番に。
みんな入って。
でも、わんわんは外を走り回ってて。
お布団にくるまれながら。
みんなで空を見上げる。
「降ってきたねぇ」
リサも嬉しそう。
「明日は積もるぞ」
ガンツは目がキラキラ。
ユウトはおふとんから手を伸ばす。
手袋の上に。
どんどん雪が乗る。
「あっ!」
でも。
手の上から、すぅーっと消えていく。
「なくなっちゃった」
「溶けちゃったんだね」
みんな空を見上げる。
雪はどんどん激しく降ってくる。
◇
「ただいまー!」
「おかえり」
お母さんが迎えてくれる。
「きょうはゆきすごかった」
「そうね、寒くなかった?」
「うん!だいじょうぶ。てぶくろあったたかった」
ユウトはにっこり。
お母さんもにっこり。
「明日はもっと降るかしら」
お父さんも外を見る。
「今夜は積もりそうだな」
「ほんと?」
ユウトは目をきらきら。
「明日は真っ白かもな」
「わぁ!」
なんだかわくわくしてきた。
◇
夜。
外では。
しんしんと。
雪が降り続いていた。
びゅううう。びゅううう。
屋根にも。
木にも。
畑にも。
雪は降り積もっていく。
庭も。
広場も。
森も。
少しずつ白く染まっていく。
ユウトは、お布団にもぐりこんだ。
「ぬくぬく」
ぽかぽか。
外は寒い。
でも。
お布団の中はあったかい。
「おふとんもあるし」
枕元には。
お母さんが編んでくれた手袋。
「さむくてもへいき」
えへへ。
目を閉じる。
その間も。
外では雪が。
しんしんと。
しんしんと。
朝まで静かに降り続けていた。
翌朝。
「わぁぁぁ!!」
一面真っ白!




