第八十二話 手編みのてぶくろ
ひらひら~。ひらひら~。
ちらちらと雪が降ってる。
「さむーい」
白い息。
ユウトは両手をグーパーする。
「おてて、つめたい」
朝ご飯を食べ終わって、お外へ出ようとした時だった。
「ユウト」
お母さんが優しく呼ぶ。
「なぁに?」
「ちょっと待っててね」
お母さんは部屋の奥へ。
ぱたぱたと。
ゆっくり歩いていく。
しばらくして。
「はい」
お母さんが、小さな包みを持って戻ってきた。
「これ、ユウトに」
「ボクに?」
「うん」
ユウトは嬉しそうに受け取る。
「なんだろう?」
わくわく。
そーっと包みを開ける。
「わぁぁ!」
中から出てきたのは。
ふわふわ。
もこもこ。
かわいい小さな手袋。
「てぶくろ!」
優しい茶色。
ところどころに白い毛糸が編み込まれていて。
雪みたい。
「かわいい!」
ユウトは目をきらきら。
「お母さんが編んだのよ」
「えっ!」
「おかあさんが?」
「うん。お腹の赤ちゃんがお昼寝してる時に、少しずつね」
お母さんは少し照れくさそう。
「ユウト、寒い日でもいっぱい遊ぶでしょう?」
「うん!」
「だから、おててが冷たくならないように」
「わぁーい!」
ユウトは思わずぎゅっと抱きしめた。
◇
「つけてみる?」
「うん!」
お母さんが、そっとはめてくれる。
右手。
左手。
すっぽり。
「どう?」
ぎゅっ。
ぱっ。
ぎゅっ。
ぱっ。
ユウトは何度も手を動かす。
「あったかい!」
「ぴったりね」
「すごーい!」
なんだか手まで嬉しそうだった。
◇
「ありがとう!」
ユウトはお母さんに、ぎゅーっ。
お母さんも優しく、ぎゅーっ。
「ふふっ」
「いっぱい遊んでね」
「うん!」
ユウトは何度も頷いた。
「だいじにするね!」
◇
その日。
「リサー!」
「ユウトー!」
広場で待ち合わせ。
「あれ?」
リサが目をぱちぱち。
「わっ、かわいい手袋!」
「えへへ」
ユウトは両手を見せる。
「おかあさんがつくってくれたの!」
「へぇ、いいね。ユウト似合ってるよ」
リサは目をきらきら。
「えへへっ」
「いいなぁ!」
なんだか照れる。
「さわっていい?」
「うん!」
リサは、ちょん。
「ふわふわ!すごく気持ちいいね」
そこへ。
「おーい!」
ガンツたちもやってきた。
「おっ。新しい手袋か!」
「いいですねぇ」
「ユウトかっこいいねぇ」
みんなが褒めてくれる。
ユウトは嬉しくて。
えへへ。
また笑った。
◇
「よーし!」
ガンツが元気よく言う。
「今日は鬼ごっこだ!」
「やるー!」
みんな元気いっぱい。
走って。
転んで。
笑って。
いっぱい遊ぶ。
でも。
「あれ?」
ユウトは気付いた。
「ぜんぜんつめたくない!」
いつもなら真っ赤になる手。
今日はぽかぽか。
「てぶくろさん、すごーい!」
リサも笑う。
「よかったね!」
「うん!」
走るたび。
なんだか嬉しい。
お母さんが作ってくれた手袋。
ずっと一緒だった。
◇
夕方。
「ただいまー!」
家へ帰る。
お母さんが迎えてくれた。
「おかえり」
「見て見て!」
ユウトは両手を上げる。
「いっぱい遊んだけど、あったかかった!」
「そう」
お母さんは嬉しそう。
「よかった」
「ありがとう!」
もう一度。
ぎゅーっ。
お母さんを抱きしめる。
「ふふっ」
「そんなに喜んでもらえて、お母さんも嬉しいわ」
◇
お布団の中。
ユウトは手袋を枕元へ置いた。
「またあしたもよろしくね、てぶくろさん」
手袋は何もしゃべらない。
でも。
お母さんの優しさが。
いっぱい詰まっている気がした。
ぬくぬく。
ぽかぽか。
冬の夜。
外は冷たい風が吹いている。
でも。
手袋も。
お母さんの笑顔も。
とっても温かかった。




