第七十八話 寒がりなゆきのせいれい
朝。
しーん。
窓の外は灰色のお空。
「うーん、ゆきさんいないねー」
ユウトは窓の外を見ていた。
もう冬なのに。
最近は寒いばかりで、雪はあまり降らない。
「雪遊びしたいの?」
お母さんが笑う。
「うん!」
「いっぱいふったら、わんわんとあそぶんだ」
「ふふっ。きっと、そのうち降るわよ」
でも。
ひゅるるる。ひゅるるる。
風ばかり。
なんだか空も寂しそうだった。
◇
「ユウトー、遊ぼー!」
今日もリサがやってきた。
「今日は森の入り口まで行こっ」
「うん!」
「わふっ!」
わんわんも元気いっぱい。
てってってっ。
落ち葉を踏んだり。
石を蹴ったり。
森に向かう。
「雪降らないねぇ」
「うん」
「寒いだけー」
「そうだねぇ」
すると。
「……ひっく」
かすかな声。
「ん?」
「今、何か聞こえた?」
リサも立ち止まる。
「ひっく」
また聞こえた。
「わふ?」
わんわんも首をかしげる。
◇
声のした方へ行く。
木の根元。
そこに。
「……さむい」
小さな子がいた。
「わっ!」
「だれ?」
真っ白な髪は、セミロングのボブ。
ぴっと揃った前髪。
膝丈の白いワンピース
頭にはお星さまみたいな不思議な飾り。
小さな女の子だった。
でも、村では見たことがない。
迷子かな?
どこから来たのかな?
でも、ぶるぶる震えている。
「さむいよぉ」
ひっく。
涙目で鼻も赤い。
「だいじょうぶ!?」
ユウトは慌ててしゃがみこむ。
「寒いの?」
「うん」
「すごく寒いの」
「ひっく」
「かわいそう!」
リサも心配そう。
「どうしよう?」
「そうだ!」
ユウトがにっこり。
「おふとん召喚!」
ぽわん。
ふかふか。
「わぁ!」
女の子が目をまんまるにする。
「入って!」
「う、うん」
みんなで中に入って座る。
女の子にも入って座ってもらう。
すっ。と座る。
すると
「ふわぁぁ。ここ寒くない」
「そりゃ、おふとんだもん。気持ちいいでしょ。リサも好きなんだー」
リサは、にやりとして
「ふふっ、こうするともっと気持ちいいわよ」
ごろん。ごろん。
とっても気持ちよさそう。
女の子も真似をする。
ごろん。ごろん。
「温かくて、気持ちいいですねー……」
女の子の顔がとろけた。
「よかったー」
ユウトもにっこり。
「わふぅ」
わんわんもお布団へ。
みんなでぬくぬく。
◇
「ねぇ」
リサが首をかしげる。
「名前はなんて言うの?」
「……ない」
「ないの?」
「うん」
「みんな、ゆきのせいれいって呼ぶ」
「えっ」
「せいれい?」
「うん」
女の子はこくり。
「雪を降らせたり」
「冬を運んだり」
「するの」
「すごーい!」
リサが目をきらきら。
でも。
「寒いの」
ぶるっ。
「でも私は寒いと動けないの」
「え?」
「雪の精霊様なのに?」
「うん」
「寒いの苦手」
しゅん。
「変でしょ?」
「ううん!」
ユウトは首をぶんぶん。
「へんじゃないよ!」
「ボクも寒いの苦手!」
「リサも!」
「わふ!」
「ほんと?」
「うん!」
ゆきのせいれいは。
ぱぁっと笑った。
◇
「そうだ!」
ユウトは持ってきていた干し芋を取り出す。
「食べる?」
「いいの?」
「うん!」
「ありがとう!」
もぐもぐ。
「おいしい!」
「甘い!」
「えへへ」
リサも嬉しそう。
すると。
ぽかぽか。
ぽかぽか。
女の子の周りが少し光った。
「ん?」
「どうしたの?」
「なんだか元気出てきた!」
くるっ。
くるるっ。
女の子が回る。
すると。
ひらり。
「あれ?」
白いもの。
ひらり。
ひらり。
「雪!」
「わぁ!」
「雪だ!」
空から。
ふわふわ、ふわふわと。
小さな雪が降り始めた。
「すごーい!」
「きれーい!」
「わふわふ!」
わんわんもぴょんぴょん。
「えへへ」
「元気になったから」
「ちょっとだけ雪降らせちゃった」
ゆきのせいれいは嬉しそう。
◇
「ありがとう!」
ぺこり。
「おふとん、すっごく気持ちよかった!」
「また寒くなったら来ていい?」
「うん!」
「いつでも!」
「リサも一緒に入る!」
「わふー!」
すると。
ふわり。
風が吹く。
「またね!」
「ばいばーい!」
白い髪の女の子は。
雪と一緒に。
ふわっと消えていった。
◇
帰り道。
ひらり。ひらり。
雪が降る。
「きれいだね」
「うん!」
「かわいい子だったね!」
「また会えるかな?」
「会えるよ!」
ユウトはにっこり。
「寒くなったら、おふとん貸してあげるんだ!」
「ふふっ」
「優しいね」
リサも笑った。
ひゅるるる。
冷たい風。
でも。
空から降る雪は。
ふわふわ。ふわふわ。
なんだか少し。
嬉しそうに踊っているようでした。




