第七十二話 うーにーず③いざ小人の王国へ
ぽぅ。
鏡の奥で。
小さな光が揺れた。
「あれ?」
ユウトが目をぱちぱち。
「どうしたの?」
リサが聞く。
「今、ひかったよ」
すると。
ぽぅ。
また小さな光。
「わっ!」
今度はみんなも気づいた。
そして。
ぽぅ。
ぽぅ。
鏡の向こうから。
小さな声が聞こえてきた。
「姫さまぁー」
「王女様ー」
「ジーン王女様ぁ」
ジーンは飛び上がった。
「みんな!」
うるうる。
鏡の前に立つジーン。
その目に涙が浮かぶ。
「もう少しだけ待ってて!」
◇
ジーンは鏡の前に立って妖精さんのお粉を指につけた。
そして、今度は丸を描いたり、お星さまを描いたり、面白そう。
ユウトはやってみたいなぁ。とその様子をキラキラ目を輝かせながら見ていた。
うずうず。
うずうず。
ジーン、かっこいいなぁ。いいなぁ。いいなぁ。ボクもしたいなぁ。
そして。
ジーンがまた踊り出す。
今度はゆっくり、ゆーっくり。
ららら~♪
たんっ。
たったっ。
くるり。
優雅に。華麗に。
指の先から足のつま先まで。
ひたすら慎重に。
丁寧に丁寧に。
額には汗がびっしょりだ。
ららら~♪
歌って。
踊って。
妖精様のお粉が。
きらきら。
きらきら。
舞い上がる。
すると。
「おぉー!」
「また光り始めた!」
鏡が淡い銀色に輝き始めた。
その時。
……
……
うずうず。
うずうず。
うずうず。
うずうず。
どうしてもやってみたくなった。
「よーし、ボクもてつだう!」
そう思うと、足が勝手に動き、みんなが気づいた時には手にお粉をつけて鏡の前に。
「「!!!」」
るん♪るん♪
ふんっ♪ふんっ♪
るん♪るん♪
ユウトの指は止まらない。
るん♪るん♪
ふんっ♪ふんっ♪
るん♪るん♪
おにぎり。やま。さかな。
すきなかたちを。
おもいのままにっ。
描いた。
周りは時計が止まったように、動けない。
ジーンが気づく。
「あっ、ダメ」
ジーンが叫ぶ!
その瞬間。
「「あっ!」」
ピキッ。
ピキピキッ。
鏡にヒビが入る。
ぱりーーーーーっん。
淡い光が、急速に消えかかる。
「えっ、どうして?」
ユウトは何がなんだか分からない。
せっかく手伝ったのに。
どうして?
◇
どうして?
ユウトが疑問に思ってると。
ジーンがユウトを押し倒す。
「危ない!!伏せて!!」
ジーンが聞いたこともない大声で叫ぶ!
その時。
光が収束したその鏡から、強烈な眩しい光が溢れだす!!
バリバリバリーーーーン!!
鏡は粉々に。
お部屋も真っ白。
みんなケガがない事だけが救いだった。
◇
「ごめんなさ~い」
うわぁん、うわぁん。
大声で泣くユウト。
周りが何を言っても泣き止まない。
「ごめんなさ~い」
うわぁん、うわぁん。
「ごめんなさ~い」
うわぁん、うわぁん。
「こらっ、ユウト!いつまで泣いてるの!!」
リサに怒られる。
「だって~、ひっく、だって~」
「やっちまったもんは仕方ねーだろ、みんな無事だったんだし。もう泣き止めよ」
ガンツが諭すがユウトは泣き止まない
うわぁん。うわぁん。
相当にショックだったんだろう。
始めての大失敗。
ジーンも端でじーっとみんなのやり取りを見守っている。
◇
ユウトが泣きつかれて寝てしまった。
ユウトの丸くなった背中が妙に小さく感じる。
ようやく訪れた静寂。
みんな沈黙の中、
「しゃーねぇな」
ガンツがしゃがみ込む。
「よっと」
眠ったユウトを背負う。
「ガンツ?」
「こいつ、重てぇなぁ」
そう言いながら。
ガンツは少しだけ笑った。
「でも、今日はオレが連れて帰るな」
ガンツがおんぶして、ユウトを連れて帰る。
みんなしょんぼり。
帰り道は誰もしゃべらない。
森の道。
あれほど楽しかった枯れ葉を踏む音は。
今は静かに、心に滲みる。
森は。
ひゅるるる。
冷たい風。
一枚。
また一枚。
葉っぱが落ちる。
冬が近づいていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
これにて秋編終了です。
明日から最終章の冬編スタートします。
引き続きお楽しみくださいね。




