第六十九話 小人のジーン
ららら~♪
みんなで手を繋いで踊って歌った。
何度もいろんな歌で試してみた。
輪になって踊ってもみた。
でも、ちっとも何も起きない。
「はぁー、疲れたー。けど何も起きないなー」
「本当ね。少し休憩しよう」
と言って、それぞれ木陰で少し休む。
ひゅるるる。
と冷たい風が気持ちいい。
ミックとポルンは絵本を見返している。
ユウトとリサは風を受けて気持ちよさそうに寝っ転がる。
ガンツは元気にわんわんと遊んでる。
周りを通る村の人たちからは子どもたちが楽しそうね。と優しい目をむけられている。
「あっ」
ミックが何かに気づいたみたい。
「もしかして」
とミックは立ち上がる。
すると、急に歌い出す。
「おっほん」
むかし、むかしのことでした~♪
白ねこはおうちで、ぐぅぐぅ寝てます~♫
白うさはぴょんぴょん、行ったり来たり~♪
白いぬは一日中、わんわん吠えてます~♫
それは、むかし、むかしのことでした~♪
「わははっ、ミック何の歌だよ、それ」
ガンツが大笑い。
「えっ、知りません?我が家の子守唄ですが?」
「わははっ、笑いすぎて、お腹痛いー。わははっ」
「ミックー、小人は手を繋いで踊ってるるんだよ。子守唄ってー」
おいおいっと、ガンツとポルンが笑いながら呆れていると。
その時。
カサカサ。カサカサ。
ん?どこから?
くすくすっ。
小さな笑い声。
えっ。
と、みんなが辺りを見回す。
「いま聞こえた?」
「聞こえた!」
「わふ?」
わんわんも耳をぴくぴく。
秋の風が。
さらさら。
落ち葉を踊らせる。
そして。
誰にも見えない草むらの奥で。
くすくすっ
小さな影が。
嬉しそうに笑っている。
◇
「今の声、どこからだろう?」
「もしかしたら、近くに小人がいるかもしれないぜ」
ガンツがシーッと、人差し指を唇に当てながら周りをキョロキョロ見回す。
でも何も見えない。
「ねぇ、ミック。どうして子守唄を歌ったの?」
リサが聞くと。
「はい、それは絵本ですよ」
ミックは絵本を指差す。
「「えほん!?」」
どういうことだろう?
絵本には小人がたくさん歌って踊っていたのに。
「ねぇ、どうしてえほんなの?」
ほらっ、ここを見てください。
と、ミックは絵本をパラパラとめくりさっきの小人とは反対側を指差す。
「あっ」
そこには。
白いねこが気持ちよさそうに丸くなって。
白いうさぎがぴょんぴょん飛んで。
白い犬が楽しそうに吠えている。
ページ一つ一つに描かれてた。
そして最後のページには。
そこには、小人と白い動物たちが。
みんな気持ちよさそうに寝てる。
すやすやと。
「「おぉー」」
みんなの声がきれいに揃う。
「ミック、もう一回歌って」
いいですよ。と歌い出す。
今度はさっきよりゆっくりと。
むかし、むかしのことでした~♪
白ねこはおうちで、ぐぅぐぅ寝てます~♫
白うさはぴょんぴょん、行ったり来たり~♪
白いぬは一日中、わんわん吠えてます~♫
それは、むかし、むかしのことでした~♪
……
……
さっきは気のせいか。
と思ったその時。
くすくすっ。くすくすっ。
小さな笑い声が近くで聞こえた!
「わっ、また聞こえた」
「ボクもきこえた!」
みんなでキョロキョロ。
「わふ?」
わんわんも耳をぴくぴく。
鼻をくんくん。
ふいに、くるっと。
たんっ。
草むらにぴょん!
「わふっ!」
わんわんが得意気に吠えた!
その時。
「くすくすっ、あーぁ、見つかっちゃったー」
わんわんの鼻先に。
小さな葉っぱの帽子が見えた。
緑色のワンピース姿。
手のひらくらいの小さな姿。
小さな姿はくすくすと笑いながら。
眩しそうに空を見上げる。
秋の風が。
さらさら。
落ち葉を踊らせていた。
◇
「わぁぁぁ!!」
「わぁ、こびとさんだー」
「ほっ、ほんものー!?」
「きゃー。小っちゃくて可愛いぃ」
みんな集まる。
すると小さな姿は、ぺこりと頭を下げた。
「わたし、ジーン!」
「ジーン?」
「そうよ!」
ぱっと笑う。
「よろしくね!」
みんなもぺこり。
「ジーンよろしく!私はリサよ」
リサがすぐ握手しようと手を出す。
リサとジーンが握手。
なにか分からないけど。
ほんわかと心が温かくなる。
「オレはガンツだ。よろしくな」
「私はミックです!」
「ポルンだよっ。小人さんって何食べるの?」
「ボ、ボクはユウトだよ」
みんなと握手。
ジーンはにっこり。
「みんな、よろしくね!」
パチリとウインクした。
かわいぃ。
くすくすっ。
すると、くるりと回ってわんわんをなでなで。
「そのこは、わんわんだよ」
って教えてあげた。
「へぇー、キミってわんわんって言うんだ。よろしくね、わんわん」
といって、わんわんにぎゅーって抱きついた。
「わふっ!」
わんわんもしっぽふりふり。
◇
ジーンといろんな話をする。
みんなの好きなこと。
冒険したこと。
この村のこと。
こびとのこと。
王国のこと。
わいわいとすぐ仲良くなる。
おしゃべりながら。遊びながら。
歌いながら。踊りながら。
ジーンは、いつの間にかわんわんの背中に乗っていた。
「わーいっ、この子かわいぃー」
お気に入りみたいだ。
わんわんもしっぽをぶんぶん嬉しそう。
みんなを追いかけ回す。
「ねぇ、ジーン」
「ん?なーに、リサ」
「ミックの子守唄って、知ってたの?」
リサがふと聞くと
「あー、あれね」
と、わんわんの背中をなでなでしながら話始める。
「むかーし、お母さんが寝る前に唄ってくれたなぁって。急に懐かしくなって」
しんみりと答える。
「そっかぁ。思い出の歌なんだね」
「ところで、どうしてミックくんは知ってたの?」
ジーンが聞く。
ミックは、えっへんとばかりに。
「我が家の子守唄です!」
ズコーッ。
ジーンは勢いよく転ける。
みんなびっくり。
あっ、わんわんから落ちた。大丈夫かな?
「いやっ、そうじゃなくて」
ジーンは起き上がり、膝をパンパンしながら
「あれは、小人王国の歌なのよっ!」
「「な、なんだってー」」
みんな口をパカーンと驚いた。
ミックも驚いてる。
もしかして、ミックはこびとなの?
「いやっ、なんでって言われても、我が家の子守唄って事しか……」
ミックはしどろもどろ。
「まぁ、いいわ。それなら」
あっけなくスルーして。
またわんわんに登ろうとお腹の毛を掴んで。
「ところで……」
とジーンが言った。
その時。
ぐぅ~~~
小さなお腹が鳴った。
「あっ」
ジーンが真っ赤になる。
「ご、ごめん」
「お腹空いてるの?」
リサが心配そうに聞く。
「うん」
ジーンはしょんぼりした。
「今年、全然食べ物がないの」
「たべものないの?」
「うん」
「王国のみんなも、困ってるの」
「みんな?」
「赤ちゃんも、おじいちゃんも」
「だから、私、食べ物ほしくて探しに来たの」
ユウトたちは顔を見合わせた。
「大変じゃねーか!」
「そうだよ、届けなきゃ!」
リサが言った。
「うん!さんせー」
「ボクも!」
「オレも!」
「もちろんです!」
「ところで、おうこくってどこにあるの?」
ユウトがほっぺに指を当て、首を曲げる
すると。
「それは、ひみつなんだー。ごめんね」
どうやらしゃべれないらしい。
遠いのかな?
「おうちにはかえれるの?とおい?」
ユウトはまた聞いてみた。
「うーん、近いけど今は帰れないって感じかな?」
「あははっ。さては、おかーちゃんとケンカしたんだ」
ガンツが笑う。
「そんなことしないわよ!食べ物を見つけるまでは帰らないだけよ」
と、プイっと怒って後ろを向く。
「あっ、そういう事か。ごめんな、ジーン」
素直にガンツは謝る。
「全く、ガンツには失礼しちゃうわ。ねっ、ジーン」
リサはパチリとウインクして続ける。
「ガンツ、ごめんの変わりにあんたのおやつジーンにあげなさい!」
と、ガンツのポケットからクッキーをさっと取り出して、ジーンに渡そうとする。
「あっ、オレのおやつ」
「いいでしょ、ケチ!」
「ったく、しょーがねーなぁ。ジーン大事に食べろよ。とっておきだぞ」
と、ガンツもジーンにパチリとウインク。
「わーん、リサもガンツありがと。ふふふっ」
ジーンも、パチリとウインク。
クッキーを受け取り。
ぱくりっ。
「んー、おいしぃー」
口いっぱい頬張りながら、ジーンは大喜び。
◇
「お腹空いてるなら家にくる?」
クッキーを食べ終わった頃。
リサが優しく聞く。
けど、ジーンは首を横に振る。
「ごめんね、せっかくだけど、大人に見られたらダメなの」
ジーンはしょんぼり答える。
「うーん、そっかぁ」
リサもしょんぼり。
「おとうさんにジーンのことはなしてもいい?」
「ごめん。今は内緒にして欲しいかな」
ジーンは申し訳なさそうな顔をする。
「うーん、それは困りましたね。家の食べ物が無くなるとバレますし……」
ミックが、うーん。と考える。
「おい、ミック、ポルン」
何かを閃いたのか。
ガンツが二人をばしっと指差す。
「ジーンが困ってるんだ。オレたちで森に行って、柿や栗拾おうぜ」
「おっ、それいいですね!袋いっぱい集めましょうよ」
「うん、そうしよぉ。それなら早く行こーよぉ」
「よしっ、ユウト。食べ物は任せとけ!」
ガンツが胸をどんっと叩く。
すると。
ジーンの目がうるうるした。
「ほんと?」
「ほんとに助けてくれるの?」
「当たり前だ!」
ガンツが笑う。
「困ってるんだろ?」
「オレたち、友達だからな!」
ぽろぽろ。
ジーンの目から涙がこぼれた。
「うぇぇぇん。ありがとうぉぉぉ!」
ジーンが泣きながら返事をしてると。
「わははっ、安心しろジーン。また後でなー」
ガンツたちは手を振りながら。
止める間もなく走り出した。
「あーぁ、ガンツたち行っちゃた」
まだ話の途中なのに。
◇
「ねぇ、ユウト、ジーン。私たちも森に行こう」
リサがジーンを見つめる。
「えぇ、どうして?」
「うん、森の妖精様にお願いするの!助けてって」
「森に妖精様がいるの!?」
ジーンが驚く。
「うん、きっと助けてくれるよ」
「よしっ、私も準備してくるね。あっ、少しだけお菓子も持ってくるね」
「ボクもじゅんびするー!」
ユウトも、てててっと走り出そうとする。
「あっ、待って、リサ、ユウト」
ジーンが慌てて呼び止めた。
「ん?」
「妖精様って、本当にいたの?」
ジーンは恐る恐る聞く。
「うん!」
ユウトはにっこり。
「前に会ったんだよ」
「ねー!」
リサも元気いっぱい。
「こないだふわふわーってひかって、たすけてくれたんだよ」
「妖精さん、綺麗だったわー」
とリサもうっとりと思い出す。
「ほんと!?」
ジーンが目をまん丸にする。
「すごーい!」
すると。
ぴたっ。
ジーンが何か思い出したように固まった。
「あっ!」
「どうしたの?」
リサが聞く。
「もしかしたら!」
ジーンはわんわんの頭の上にちょこんと座る。
「うん、妖精様なら元気にできるかもしれない!」
「げんきに?」
ユウトが首をかしげる。
誰かが病気なのかな?
「うん!」
「これで帰れるわ」
「元気になったら帰れるの?」
「そうよ!」
ジーンはにこっと笑う。
「それにね」
ぴょこんっと立ち上がって。
「私と手をつないだら、みんなも王国に来られるよ!」
「ほんと!?」
「わぁ!」
ユウトとリサは目をきらきら。
「じゃあ、みんなで王国に行けるのね!」
「うん!」
ジーンは目をキラキラさせながら。
「まずは妖精様に会わなくちゃ」
「うん。ようせいさまだね」
「よっ、みんな行くわよっ」
えへへっとみんなで笑う。
準備するため家路を急ぐ。
小人の王国を助けるため。
みんなの小さな大冒険が。
また始まろうとしていた。




