第六十八話 てがかりは……あの一冊の絵本
肌寒い朝。
外に出ると。
ひゅるるる。
と冷たい風が吹く。
「きゃっ、さむいさむい。よしっ、今日はお部屋でリサと本読もうっと」
ぐっと伸びをしてから可愛いワンピースを着たリーナは、くるっと回転。
さっとお部屋に戻る。
部屋ではリサがすでに絵本を読んでいた。
最近よく読んでる古びた絵本。
「リーナお姉ちゃん、これ読んでー!」
そう、リサが大事そうに抱えているのは、夏の大冒険で見つけた古びた絵本。
宝箱の中に入っていた、小人の絵が描いてある絵本だ。
「ふふっ。リサ、この本好きねぇ」
リーナお姉ちゃんが優しく笑う。
「だって面白いよー」
リサは絵本を開く。
字は読めない。
でも絵を見るだけでなんだかわくわくする。
すごく楽しくなる。
いたずら好きの小人たち。
帽子を隠したり。
木の実を転がしたり。
かくれんぼしたり。
「この子たち、いつも隠れてるよねー」
リサが笑う。
「うん。見つかって『やっほー!』ってしてるみたい」
すると。
「ホントだね。『やっほー』ってしてるね。ちょっとお姉ちゃんに貸してくれる?」
「うん、リーナお姉ちゃん。はい、どうぞ」
リサはリーナお姉ちゃんに本を渡す。
古代文字で書かれた字は読めないけど、どんな物語か想像しながら読んであげる。
「むかーし、むかし、この世界にはこびとさんがたくさんいました……」
リーナお姉ちゃんは、おはなしを考えながらペラペラとめくり読む。
リサは静かに、嬉しそうに寝っ転がって足をパタパタさせながら聞いている。
「こびとさんは、いたずらが大好きです」
「大きな人の帽子をこそっと隠して自分のお家にして暮らしてます」
「どんぐりを転がしてお庭に並べて、驚かしたり……」
「大きな人の食べ物をちょっとだけもらったり」
「こびとさんは、大きな人に見つからないようにいたずらして、くすくす笑って過ごしてます……」
「んん!?あっ、これは!?」
「ん?どうしたのリーナお姉ちゃん?」
「ここっ!ここ見て」
少し破けてる端の方。
そこには小さく描かれている小人たち。
ページをめくる度に増えている。
最初のページには誰もいない。
けど、いたずらしながら増えている。
その小人たちは歌って。
踊って。
手をつないで踊ってる。
くるくる回って踊ってる。
みんな楽しそうだ。
笑っている。
「ほんとだ!」
リサは新しい発見にどきどきした。
「んー、もしかして、かくれんぼだけじゃないのかも?」
リーナお姉ちゃんは指をあごに当てて、少し考えて言ってみる。
「え?」
「この小人さんたち、楽しいことが好きなんじゃないかなー?」
「楽しいこと?」
「そう、楽しいこと。歌ったり、踊ったり、笑ったり。ほらっ」
ページをめくる。
「あっ」
またいた。
別のページにも。
そのまた別のページにも。
歌っている小人。
踊っている小人。
隠れて笑っている小人。
よく見ると。
だんだん仲間が増えている。
「わぁ!」
リサは目をきらきら。
「ほんとだ!」
「最初はいないのに、だんだん集まってる!」
「ねぇ、リーナお姉ちゃん!」
「なぁに?」
「リサ、わかった!」
「えー、何が分かったの?お姉ちゃんに教えて」
「小人さんたち、歌って踊って遊んでる人のところに集まるんじゃない?」
リサは、どう?と言う感じで、顔を近づけて聞いてくる。
「うん、そうかもね!」
リーナお姉ちゃんは優しく微笑んだ。
「もし本当に会えたら素敵ね」
「よし、会えるかも!」
リサはぴょんっと立ち上がった。
「みんな集めなきゃ!」
「行ってらっしゃい」
「うん!」
てってってっ。
リサは絵本を抱えて飛び出した。
◇
その頃。
「わんわん、行くよー」
ユウトはわんわんと朝のお散歩。
「わふっ!」
秋の風。
さらさら。
落ち葉がくるくる。
「いい天気だねぇ」
すると。
「ほっほっほっ」
「あっ!」
「かめ先生!」
大きな石に座ったかめ先生がにこにこしていた。
「お散歩ですかな?」
「うん!」
「わふっ!」
「元気ですなぁ」
ユウトは思い出す。
「ねぇねぇ、かめ先生」
「ん?何ですかな?」
「最近も遺跡に行ってる?」
「はい、もちろんですじゃ。それが生き甲斐ですからなぁ」
白いおひげをさわりながら、ほっほっほっ。と答える。
「遺跡は楽しい?」
「はい、いつも楽しいですぞ」
「新しい発見あった?」
「うーむ」
かめ先生はおひげをなでた。
「相変わらずじゃな」
「まだ、はいれない?」
「はいれませんのじゃ」
「どうして?」
「どうも転移鏡は妖精さまの力が必要みたいですじゃ」
「ようせいさん?」
「ええ」
「会えば行けるの?」
「今はまだ確信がありませんが。でも、合う事自体すごく難しいんですじゃ」
かめ先生は苦笑い。
「妖精さまは気まぐれですからなぁ」
ほっほっほっ。と言いながらまだまだ気長に待つようだ。
「そうなんだー」
「ユウトくんが妖精様に会ったら、力を貸すようお願いしてもらえませんか?」
「うん、わかった!」
ユウトは親指を前に出して答える。
「ほっほっほっ。ありがとうですじゃ」
「かめ先生も会えたらいいね!」
「ほっほっほっ。本当にそうですな」
◇
一方。
「よしっ、次はかくれんぼしよーぜ!」
「いいですよ、今日は見つかりませんよ」
「えー、ぼく鬼は嫌だよー」
ガンツ。
ミック。
ポルン。
三人は広場で遊んでる。
通りから背の高いすらっとした猫顔の大男が歩いてくる。
「あっ!」
「ジャガー村長だ!」
「ははっ、みんな元気に遊んでるな!」
村長が手を振る。
「どうだ?最近変わったことはないか?」
「おう、何もないなー。でも毎日楽しいぜ!」
「ははっ、いいことだ。ミックはどうだ」
「私も楽しいです!ジャガー村長、一緒に遊びましょう」
ミックが聞く。
「ははっ、それもいいな。でも、すまんな。今は仕事中だ」
村長はミックの頭をなでながら笑う。
「それに、たまにかめ先生の遺跡調査にも付き合っとるしな」
「えっ!」
「村長が?」
「あぁ、そうだよ」
「どうだったの?面白い発見あった?」
「それがなー、さっぱりなんだよ」
村長は肩をすくめた。
「だがなぁ」
「?」
「ご先祖様からの話じゃ、あの遺跡の住民は自由に出入りしてたみたいだからな。その力を借りれば入れるんじゃないかって考えてるところだ」
「住民?」
「そうだ」
「誰なの?この村の人?」
「さぁなぁ」
村長は笑った。
「もう昔からの話だからな」
「へぇー」
「変な話ですよね」
「ははっ、それじゃーなー」
村長は楽しそうだった。
◇
「ユウトー!」
「あっ!」
広場。
リサが走ってきた。
「リサ!」
「ユウト!」
「わふっ!」
その後ろから。
「おーい!みんなー!」
ガンツたちが手を振ってやってくる。
「わぁ、ちょうど呼びに行こうと思ってたのよ!リサ、すごいこと発見しちゃった」
リサは目をきらきら。
手に持っていた絵本をみんなの前にぱっと出す。
「これは、あの時の本ですねー」
ミックがすかさず気づく。
「そう、大発見したの!見て。見て」
「どれどれ~」
みんなわちゃわちゃとなり本の前へ。
リサが絵本を開く。
「そうだ、小人の話だったな!」
「うん、そうよ」
「宝箱に入ってたねー」
ポルンもうんうんと頷きながら言う。
「よく見て!ここ!ここっ!」
みんなで顔を寄せる。
「ん?」
「こびとさん、いっぱいいるー!」
「そうよ、でも最初はいないの」
始めのページを開いて、見せる。
「ほんとだねー。だいはっけんだね!」
ユウトがわーいと言うが、リサが人差し指を横に振る。
「そうだけど、まだよ!よく見て」
リサはそういってページをめくっていく。
「あっ、歌ってる!」
「ここは、踊ってますね!」
ミックもびっくり。
「しかもだんだん増えてるな!」
ガンツが目を丸くした。
「リーナお姉ちゃんと一緒に見つけたの!」
リサは嬉しそう。
「楽しいことしたら小人さんが集まるかもって!」
「おおー!」
ユウトもきらきら。
「会えるかな?」
「会えるかもしれない!」
「どうする?」
「歌う?」
「踊る?」
「あはは!」
みんな笑った。
すると。
「それにね、見て、見て」
リサは絵本をパラパラとめくる。
「あれ、どこだったかなー?あっ、ここだ」
ぴたり。
手が止まる。
そこには。
歌ったり、踊ったり。
跳び跳ねたり、隠れたり。
手を繋いだりといろんな小人。
みんな楽しそうに歩いてる。
そして、その先に。
大きな鏡。
鏡にはお城が映ってる。
「ここにね、鏡があるの!」
リサが目をまんまる。
口は今にもしゃべりたそう。
それにすごく楽しそう。
「このかがみ……どこかでみたような……?」
ユウトはうーんと考えるけど、思い出さない。
「あっ、分かりました。あの鏡ですね!」
ミックは分かったようだ
「ユウト、秘密基地の奥の鏡よ!かがみ!」
リサが教えてくれる。
「あっ、あのかがみか」
ユウトは、納得。ぽんっと手を打つ。
みんなも同じようだ。
「なるほどなー、小人たちと行けばあの遺跡にも入れるって訳か。ん?誰かそんなこと言ってたような……」
ガンツがうんうんと頷きながらしゃべる。
「えっ、何その話!教えて!」
リサが、その話知らないと教えて、教えてとポルンの服を引っ張ってせがむ。
「ガンツ、ジャガー村長だよぉ。たしか遺跡の住民と行けば入れるかもって」
ポルンは思い出しながら言う。
「じゅうにん?」
「誰かな?もしかして小人?」
「わはは、そんなわけないだろっ」
ガンツは笑いながらも、残念そうに肩を落とす。
「いえ、もし小人さんが遺跡に住んでるかもしれません!」
ミックがひらめく!
「小人が遺跡に住んでるってこと?」
ポルンが聞くと
「はい、そうです。その可能性はあります!」
「おぉ、それすげーじゃん。よく気づいたなぁ。さすがミックだ」
ガンツが褒めると、ミックは嬉しそう。
「それなら、小人に会って遺跡に連れていってもらおうぜ」
「わぁ、小人さんに会えるだけじゃなくって、またあの遺跡に行けるのね!」
リサは嬉しそう。
「他に何か知ってる事ない?あったらここで教えっこしよっ!」
リサが、知らない話はないかとみんなに聞く。
ユウトはさっきかめ先生と話したことを伝えた。
「そっかぁ、なら妖精様にも会わなきゃ!えーっと、どうしよう?」
リサは両手を頭に抱えて困った。
「どうしましょう」
みんな困った。
でも。
「ボクはこびとさんにあってみたい」
ユウトが言うと、みんなも同じだった。
「うん、リサも!」
「ぼくも小人に会ってみたいなぁ」
「はい、会いたいです!」
「よし、とりあえずみんなで手を繋いで歌いながら踊ってみようぜ」
ガンツが言う。
「うんっ!」




