第六十六話 栗ご飯は、ほくほく
ピィーヨ。ピィーヨ。
キーキー、ピーピー
朝から鳥さんの声が遠くから聞こえる。
ひゅるるる。
秋の風が窓を揺らす。
おふとんの中。
うにうに。
うにうに。
「んーっ」
ユウトはおふとんを股に挟みながら、ほっぺをすりすり。
「おふとんあったかーい」
でも。
くん。
くんくん。
「ん?」
なんだかいい匂い。
くんくん。
もっといい匂い。
「わぁ!」
ユウトは飛び起きた。
「おいしそう!」
わんわんも。
「わふっ!」
しっぽぶんぶん。
てってって。
二人は台所へ。
◇
「おはよう」
お母さんがにっこり。
「おはよー!」
ユウトは目をきらきら。
目の前には、美味しそうな朝ごはん。
ご飯に、味噌汁、卵焼き。
ユウトの大好物だ。
「いいにおい!」
「ふふっ。昨日、いっぱい遊んだからお腹がすいたのかしらね。いっぱい食べなさい」
「はーい」
◇
「今日は栗ご飯を作るから手伝ってね」
「くりごはん!」
ユウトはぴょんぴょん。
昨日拾った栗。
昨日、お父さんと一緒に焼き栗も食べた。
今日は。
大きなお鍋の中で栗ご飯を作るみたい。
楽しそう。
「それじゃ、さっそく栗を洗うぞー」
さっそくお庭で栗を大きな鍋にいれてお父さんは持ってきた。
「これに水を入れてっと」
ジャーっと水を入れる。
「よし、ユウト。じゃぶじゃぶ洗ってくれ」
「うん。くりさんがお風呂に入ってるみたいだね」
お母さんはくすっと笑った。
ユウトはゆっくり両手を入れてじゃぶじゃぶする。ひとつ。ひとつ。土や汚れを落としていく。
「ふふっ。上手ね」
「ほんと?」
「うん、とっても。栗さんと仲良しになってるのね。栗さん、きれいになって喜んでるわよ」
「へぇー!」
ユウトはお鍋をのぞきこんだ。
あっ!
ひとつ栗が外にこぼしちゃった。
お鍋の外にころころと転がっている。
「あれ、こぼれちゃったかな?」
ユウトが拾おうと手を伸ばした、その時。
「ユウト、おはよー」
元気な声。
あっ、リサだ。と思って振り向いた。
その時。
カサッ。
草むらが少しだけ揺れた気がした。
んっ?風かな? と思って振り返ると、いつの間にか栗は消えている。
「あれっ、くりさんがどこにいったかな?」
「キョロキョロして どうしたの?」
リサが不思議そうに指をあごに当てて聞く。
「んー、くりさんがひとつあそびにいっちゃった」
リサが笑う。
でも、その草むらの奥で、誰かが「くすくす」と笑ったような、そんな楽しい気がした。
◇
「それで、今何してるの?」
リサが目をキラキラさせて見てる。
「くりさんをお風呂に入れてるんだよ」
「えー、いいなぁ。リサもしたーい」
「うん、いっしょにしよ!」
リサはすぐ隣にやってきて、腕を捲る。
きゃっきゃっ。
じゃぶじゃぶ。
ころころ。
楽しそうに洗う。
「できたー、リサはやーい」
えっへん。とリサは得意気。
だがまだ土がついてる。
「リサ、まだ泥がついてるよ?」
「あららっ、ごめーん。失敗しちゃったね」
ぺろっ。と舌を出す。
すると。
「おーい!」
「おはよう!」
ガンツたち三人組もやってきた。
「今日は栗ご飯だろ!」
「楽しみです!」
「くんくん。もうお腹すいたー!」
ポルンはお腹を押さえる。
「あははは!」
みんな笑った。
◇
やがて。
「できたわよー」
お母さんがふたを開ける。
ふわぁぁ。
湯気。
いい匂い。
「わぁぁ!」
ユウトも。
リサも。
ガンツも。
ミックも。
ポルンも。
目がきらきら。
「黄色い!」
「栗がいっぱい!」
「すごいです!」
「おいしそう!」
ポルンなんて。
「幸せの匂い……」
うっとり。
「あはは!」
お父さんも笑う。
◇
「いただきまーす!」
ぱくっ。
「んー、おいしぃ!」
ユウトは目を丸くした。
「あまくて、美味しいですー!」
「わぁ、いい匂い。それに、ほくほくしてる」
「すごくおいしねー!」
リサもにこにこ。
「栗、うんめぇー!!」
ガンツも。
「昨日みんなで拾った栗ですもん!」
ミックも嬉しそう。
「はぁぁ……幸せぇ。世界で一番おいしいかも!」
ポルンはすごく幸せそうな顔。
ほっぺを押さえている。
「ポルン、まだ一口だぞ!」
ガンツが笑う。
「あははは!」
みんな大笑い。
わんわんも。
「わふっ!」
小さくした栗をもらって。
もぐもぐ。
しっぽぶんぶん。
◇
おかわり。
おかわりー。
おかわりくださーい。
まだ食べたーい。おかわりー。
気がつけば。
「ふぅー」
みんなお腹いっぱい。
ぽかぽか。
幸せ。
ひゅるるる。
秋の風。
さらさら。
落ち葉が踊る。
庭の隅っこにある草むら。
「わぁ!」
「栗ご飯かぁ。美味しそう!」
目をきらきら。
後ろの方でユウトのお母さんが、残った栗ご飯をおにぎりにしている。
「いっぱい食べたわねぇ」
「これは小さいおにぎりにしちゃいましょう」
ころん。
最後の一つ。
小さなおにぎり。
「あとで誰か食べるかな?」
お母さんはにこにこ。
「よし、片付けなきゃ」
と言ってお母さんは片付けに家の中へ。
「おっ?」
きょろきょろ。
誰もいない。
「よし、あの小さいのだ!」
遠くでは子どもたちの笑い声。
気づかれないように。
見つからないように。
てってってっ。てってって。
素早く移動して、小さなおにぎりをひとつ。
「ありがとう!おにぎりさん」
小さな影もにっこり。
もぐもぐ。
「おいしー!」
ひゅるるる。
優しい風が吹いた。
秋の恵みは。
今日もみんなのお腹をぽかぽかにして。
みんなをちょっぴり幸せにするのだった。




