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チート転生-おふとんで『うにうに』するだけで今日も世界は平和だった-  作者: あーのるど
第三章 秋は、美味しい

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第六十二話 うさぎと餅つき

 秋の夜。

 すっかり日も暮れて。

 空にはまんまるのお月さま。

 きらきら。

 とても大きくて。

 とても明るい。


「わぁぁ!」


 ユウトは縁側から空を見上げた。


「お月さま、まるーい!」


 わんわんも。


「わふっ!」


 しっぽをぶんぶん。

 その横で。


「今日は中秋の名月だからなぁ」


 お父さんがにこにこ。


「めいげつ?」


 ユウトはこてっと首をかしげる。


「一年でお月さまがとってもきれいに見える日なんだよ」


「そうなの?」


「だから、お月さまを見ながら、みんなでお団子を食べるのよ」


 お母さんが重ねられたお団子を持ってくる。


「わぁー!」


 ユウトの目がきらきら。


「おだんご!」


 すると。


「ユウトー!」


 元気な声。

 リサママと手をつないでやってきたリサが、ぱっと手を離して走ってきた。


「お月見するんでしょ?」


「うん!」


「一緒に見ようね!」


「わーい!」


 ふたりは手をつないでぴょんぴょん。

 リサママもお母さんも嬉しそう。


「リサちゃん、いらっしゃい」


「こんばんはー!」


 ぺこり。

 リサは元気いっぱい。


   ◇


 縁側には。

 お月見のお団子。

 すすき。

 そして温かいお茶。


「わぁぁ」


 リサも目を丸くした。


「おだんごいっぱい!」


「お月さまにもお供えするのよ」


 お母さんが優しく教えてくれる。


「どうして?」


 ユウトが聞く。


「いつもお空から見守ってくれてありがとうって」


「ありがとう?」


「うん。秋の実りも、いっぱい遊べることも、お月様に感謝する日なのよ」


「へぇー!」


 ユウトはお月さまを見上げた。


「お月さま、ありがとう!」


 リサも。


「ありがとうー!」


 わんわんも。


「わふっ!」


 しっぽをぱたぱた。

 さらさら。

 すすきが揺れた。


   ◇


「それじゃ、お団子食べようか」


「わーい!」


 お父さんの言葉に。

 ユウトもリサも大喜び。

 もちもち。

 ころん。

 白いお団子。


「いただきまーす!」


 ぱくっ。


「んー!」


 ユウトのほっぺがふくらむ。


「もちもちー!」


「ほんとだ!」


 リサもにこにこ。


「おいしー!」


「お茶もどうぞ」


 お母さんが優しく笑う。


 後ろで椅子に座ってるリサママにもお茶を出している。


 ふぅ。

 温かいお茶。

 もちもちのお団子。

 なんだかぽかぽか。


「幸せだなぁ」


 お父さんもにっこり。


「うん!」


 ユウトもにっこり。

 わんわんは。


「くぅーん」


 ちょこんと座って見つめている。


「あははっ」


「わんわん、おだんごほしいの?」


 リサが笑う。


「あとでねー」


「わふぅ」


 ちょっと残念そう。

 でも。

 しっぽはぶんぶん。


   ◇


 その時。


「ねぇ!」


 リサが空を指さした。


「見て!」


「ん?」


 ユウトも見上げる。

 大きなまんまるのお月さま。

 その中に。

 なんだか影がある。


「うさぎさん!」


「ほんとだ!」


 リサは嬉しそう。


「ぺったん、ぺったんしてる!」


「ぺったん?」


「おもちつき!」


 リサは胸を張る。


「リサ知ってるよ!」


「リーナお姉ちゃんが教えてくれたんだよ。月にはうさぎさんがいて、おもちを作ってるんだって!」


 リサはえへへっと胸を張る。


「すごーい!」


 ユウトは目をまんまる。


「おつきさまで?」


「うん!」


「ぺったん、ぺったんしてるの!」


「うさぎが餅つきかぁ。なるほどなぁ」


 お父さんが笑う。


「でも、そう見えるね」


 お母さんもくすくす。


「うさぎさん、おもち食べてるかな?」


 リサママも笑いながら。


「きっとたべてる!」


 ユウトが元気いっぱい答える。


「リサ、おだんごもおもちも好き!」


 リサも幸せそうに口にお団子を頬張りながら答える。


「あははは!」


 みんな笑った。


   ◇


 しばらく。

 みんなで空を見上げていた。

 静かな夜。

 虫の声。

 さらさら揺れるすすき。

 ぽかぽかのお茶。

 もちもちのお団子。

 そして。

 まんまるのお月さま。


「すごくきれいなお月さま」


 リサが小さく言った。


「うん!」


 ユウトも笑う。


「うさぎさんとぺったん、ぺったん一緒にするぞー!」


「うん!」


「いっぱいおもち作るぞー!!」


「おー!」


 わんわんも。


「わふっ!」


 しっぽをぶんぶん。

 すると。

 ひゅるる。

 優しい風が吹いた。

 すすきが揺れる。

 お月さまは。

 まるで。

 にこにこ笑っているみたいだった。


「また来年も見ようね!」


 リサが言う。


「うん!」


 ユウトも嬉しそうに頷く。

 そして。

 まんまるのお月さまの中では。

 今夜もきっと。

 うさぎさんが。

 ぺったん。

 ぺったん。

 楽しそうにおもちをついている。


   ◇


 そのころ。

 草むらのどこかで。


「くすくすっ」


 小さな笑い声。

 お供えのお団子がひとつだけなくなっていることに。

 まだ誰も気づいていなかった。

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