第六十一話 どろぼー!!
※???視点のお話です。
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空には雲龍が渦巻いている。
ひゅううう。ひゅううう。
背丈ほどある草が揺れ小さな小さな帽子が見え隠れする。
草むらの奥にひっそりたたずむ小さな影。
「おやっ、みんな風の神さまを見てるぞー」
小さな影が辺りをきょろきょろ見回した。
「くすくすっ、これはチャンスね」
おとなの人。
子どもたち。
わんちゃんまで。
みーんな空を見上げている。
「よーしっ、今なら大丈夫!」
小さな胸を張る。
軽やかなステップ。
てっけ、てっけ、てててっ。
ちょこちょこちょこ。
てっけ、てっけ、てててっ。
大きなお芋の山へ向かう。
「これは美味しそう!」
「少しだけ!」
「ほーんの少しだから。くすくすっ」
えいっ。
「うぐぐぐ……」
お芋はその影より大きい。
「重いぃ……」
でも。
「頑張る!」
ぐいぐい。
ずるずる。
少しずつ引っ張る。
「ふぅ、やっと着いたー!」
嬉しそうにステップをふんで踊ってる。
草の中においもを上手く隠す。
「よしっ、どれどれ?気付かれてないかな?くすくすっ」
ユウトたちはまだお空を見上げてる。
「よしっ、これなら、もう1個もらおうっと」
てっけ、てっけ、てててっ。
ちょこちょこちょこ。
てっけ、てっけ、てててっ。
よっと、重たいおいもを持ち上げて。
よいしょと運び出す。
美味しいお芋が待ってるぞ。後少し。
いっぱい食べるぞ。後少し。
踊りながら。
歌いながら。
運んでいく。
すると。
空から。
「はっくしょーーーーーーい!!」
ゴロゴロゴローーーン!!
「ひゃぁぁぁ!!」
小さな影は飛び上がった。
「見つかった!?」
ぴかっ。
どぉーーん!
「ご、ご、ごめんなさいー!」
両手を広げお芋を放り出す。
ころころころ。
お芋が転がる。
「わっ、わっ、怒らないでぇ!」
葉っぱの帽子を押さえて。
ぴゅーっ!
草むらへ逃げ込んだ。
どきどき。
どきどき。
「こわかったぁ……」
葉っぱの陰から。
そぉっと辺りを見回す。
すると。
子どもたちがびっくりしている。
「ん?」
どうやら、子どもたちに見つかった訳ではなさそうだ。みんなまだ空を見てる。
その目線を追って、空を見上げる。
空には龍。
きょとん。
としていた。
なんだか。
恥ずかしそう。
「……あれ?」
もしかして、さっきのは龍の仕業?
もしかして、見つかってない?
ひゅるるるる。
優しい風。
「風の神さまが、何かしたのかな?」
小さな影は首をかしげた。
「でも、よかったー。見つかったんじゃなくて」
その時。
「わぁー!」
「笑った!」
子どもたちの声。
慌てて隠れる。
「見つかる!」
草むらの奥で小さく丸くなる。
すると。
てってってっ。
足音。
「あれ?」
「おいもさんがおちてる」
「ほんとだ!風が吹いてたからかもね!」
子どもたちも不思議そう。
◇
わんちゃんが。
くんくん。
くんくん。
草むらに近づく。
「ひゃっ!」
葉っぱの帽子をぎゅっと押さえた。
すると。
周りの草と更に同化する。
「わふ?」
わんちゃんは首をかしげる。
「どうしたの?」
子どもたちもしゃがみこんだ。
でも、子どもたちには何も見えない。
◇
小さな影が帽子をぎゅっと押さえる。
すると周りの景色に溶け込む。
更に葉っぱの後ろで小さくなるともう見えない。
でも。
どきどき。
どきどき。
息を止める。
すると。
ひゅるるるる。ひゅるるる。
優しい風が吹いた。
落ち葉が舞う。
さらさらさら。
「ふふっ」
子どもたちが笑ってる。
「かぜさんのいたずらかな?」
「そうかも!」
二人ともにっこり。
二人は転がったお芋をそれぞれ拾って帰っていった。
草むらの奥。足元の大きな石にぺたんと座り込む。
「あーぁ、お芋残念だったなぁ」
そして。
遠くの空を見上げる。
大きな龍。
夕焼けの空を。
ゆっくり。
ゆっくり。
泳いでいた。
「風の神さま……」
「ごめんなさい」
「でも……」
ぐぅー。
お腹が鳴った。
「悪いことしたのかなぁ。でも冬に備えなきゃ。もっといっぱい……」
小さな影はしょんぼりしながら。
葉っぱの帽子を深くかぶった。
そのすぐ近くに。
ころん。
小さなお芋がひとつ。
さっき転がった時に。
誰にも気づかれず。
草むらの中に残っていた。
「わぁ!」
目がきらきら。
「風の神さま、ありがとう!」
ひゅるるるる。
優しい風が吹いた。
空の上では。
長い白いおひげが。
ふわり。
ふわり。
嬉しそうに揺れていた。




