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チート転生-おふとんで『うにうに』するだけで今日も世界は平和だった-  作者: あーのるど
第三章 秋は、美味しい

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第六十一話 どろぼー!!

※???視点のお話です。


*****


 空には雲龍が渦巻いている。


 ひゅううう。ひゅううう。


 背丈ほどある草が揺れ小さな小さな帽子が見え隠れする。


 草むらの奥にひっそりたたずむ小さな影。


「おやっ、みんな風の神さまを見てるぞー」


 小さな影が辺りをきょろきょろ見回した。


「くすくすっ、これはチャンスね」


 おとなの人。


 子どもたち。


 わんちゃんまで。


 みーんな空を見上げている。


「よーしっ、今なら大丈夫!」


 小さな胸を張る。

 軽やかなステップ。


 てっけ、てっけ、てててっ。


 ちょこちょこちょこ。


 てっけ、てっけ、てててっ。


 大きなお芋の山へ向かう。


「これは美味しそう!」


「少しだけ!」


「ほーんの少しだから。くすくすっ」


 えいっ。


「うぐぐぐ……」


 お芋はその影より大きい。


「重いぃ……」


 でも。


「頑張る!」


 ぐいぐい。


 ずるずる。


 少しずつ引っ張る。


「ふぅ、やっと着いたー!」


 嬉しそうにステップをふんで踊ってる。

 草の中においもを上手く隠す。


「よしっ、どれどれ?気付かれてないかな?くすくすっ」


 ユウトたちはまだお空を見上げてる。


「よしっ、これなら、もう1個もらおうっと」



 てっけ、てっけ、てててっ。


 ちょこちょこちょこ。


 てっけ、てっけ、てててっ。


 よっと、重たいおいもを持ち上げて。

 よいしょと運び出す。


 美味しいお芋が待ってるぞ。後少し。

 いっぱい食べるぞ。後少し。


 踊りながら。

 歌いながら。

 運んでいく。

 すると。

 空から。


「はっくしょーーーーーーい!!」


 ゴロゴロゴローーーン!!


「ひゃぁぁぁ!!」


 小さな影は飛び上がった。


「見つかった!?」


 ぴかっ。


 どぉーーん!


「ご、ご、ごめんなさいー!」


 両手を広げお芋を放り出す。


 ころころころ。


 お芋が転がる。


「わっ、わっ、怒らないでぇ!」


 葉っぱの帽子を押さえて。


 ぴゅーっ!


 草むらへ逃げ込んだ。


 どきどき。


 どきどき。


「こわかったぁ……」


 葉っぱの陰から。


 そぉっと辺りを見回す。


 すると。


 子どもたちがびっくりしている。


 「ん?」


 どうやら、子どもたちに見つかった訳ではなさそうだ。みんなまだ空を見てる。


 その目線を追って、空を見上げる。

 空には龍。


 きょとん。


 としていた。


 なんだか。


 恥ずかしそう。


「……あれ?」


 もしかして、さっきのは龍の仕業?

 もしかして、見つかってない?


 ひゅるるるる。


 優しい風。


「風の神さまが、何かしたのかな?」


 小さな影は首をかしげた。


「でも、よかったー。見つかったんじゃなくて」


 その時。


「わぁー!」


「笑った!」


 子どもたちの声。


 慌てて隠れる。


「見つかる!」


 草むらの奥で小さく丸くなる。


 すると。


 てってってっ。


 足音。


「あれ?」


「おいもさんがおちてる」


「ほんとだ!風が吹いてたからかもね!」


 子どもたちも不思議そう。


   ◇


 わんちゃんが。


 くんくん。


 くんくん。


 草むらに近づく。


「ひゃっ!」


 葉っぱの帽子をぎゅっと押さえた。

 すると。

 周りの草と更に同化する。


「わふ?」


 わんちゃんは首をかしげる。


「どうしたの?」


 子どもたちもしゃがみこんだ。


 でも、子どもたちには何も見えない。


   ◇


 小さな影が帽子をぎゅっと押さえる。

 すると周りの景色に溶け込む。

 更に葉っぱの後ろで小さくなるともう見えない。

 でも。


 どきどき。

 どきどき。


 息を止める。


 すると。


 ひゅるるるる。ひゅるるる。


 優しい風が吹いた。


 落ち葉が舞う。


 さらさらさら。


「ふふっ」


 子どもたちが笑ってる。


「かぜさんのいたずらかな?」


「そうかも!」


 二人ともにっこり。


 二人は転がったお芋をそれぞれ拾って帰っていった。


 草むらの奥。足元の大きな石にぺたんと座り込む。


「あーぁ、お芋残念だったなぁ」


 そして。


 遠くの空を見上げる。


 大きな龍。


 夕焼けの空を。


 ゆっくり。


 ゆっくり。


 泳いでいた。


「風の神さま……」


「ごめんなさい」


「でも……」


 ぐぅー。


 お腹が鳴った。


「悪いことしたのかなぁ。でも冬に備えなきゃ。もっといっぱい……」


 小さな影はしょんぼりしながら。


 葉っぱの帽子を深くかぶった。


 そのすぐ近くに。


 ころん。


 小さなお芋がひとつ。


 さっき転がった時に。


 誰にも気づかれず。


 草むらの中に残っていた。


「わぁ!」


 目がきらきら。


「風の神さま、ありがとう!」


 ひゅるるるる。


 優しい風が吹いた。


 空の上では。


 長い白いおひげが。


 ふわり。


 ふわり。


 嬉しそうに揺れていた。

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