第六話 かわで、ざばーん
「わふっ!」
「んー……」
ぽかぽかの昼下がり。
ボクはわんわんと一緒に、村の中をとことこ歩いていた。
目的はない。
おさんぽである。
「わんわん、今日は風がきもちいいね……」
「わふぅ」
わんわんもしっぽをふりふりしていた。
春の風はぽかぽかだった。つまり。
うにうに日和である。
「ねぇ、わんわん、このままここでうにうにする?……」
その時だった。
「おーい!」
「ん?」
向こうから、 三人組が走ってきた。
「あっ、ユウトだ!」
「わんわんもいる!」
「おひるねしてたのかー?」
「まだしてない……」
「これからだったんだな!」
ガンツが大笑いした。
ガンツは八歳。 一番大きくて、いつも元気いっぱい。
その隣には、そばかすのミック。
「また寝ながら歩いてたの?」
「ちょっとだけ……」
「あははっ、やっぱり!」
最後に、丸っこいポルンがぴょこぴょこしていた。
「ユウトー!いいもん見せてやるぞー!」
じゃーん。と、糸のついた木の枝を見せる。
「わっ、つりざお!」
「おぉー……」
「今日は川いくんだ!」
ガンツが胸を張った。
「魚とるぞー!」
「石投げ勝負もする!」
「川……」
ボクは少し考えた。
ひんやり。ぽかぽか。水の音。
「……ねれそう」
「はははっ、さすがユウトだな。いつも寝ることばっかりだ」
「よし、ユウトも行こうぜ!」
「わふっ!」
わんわんも元気よく鳴いた。
「わんわんも行くって!」
「よし、ついてこいよ!」
こうして。 川遊びが始まった。
◇
ざばーん。
「うおー!」
「つめたーい!」
川はきらきらしていた。
太陽の光で、水がぴかぴかしている。
ばしゃばしゃ。
みんなは、もう水の中だった。
「ユウトもこいよー!」
「んー……」
ボクは靴をぬぐ。
そして。
ちゃぷん。
「……おぉ」
「どうだ!?」
「つめたい……」
「そりゃ、まだ春だからな。川は冷たいのは当たり前だぞ。暑くなると、もっともーっと気持ちよくなるぞ」
ミックがつっこんだ。
でも。気持ちいい。
水が冷たくて、風がぽかぽかで、眠くなる。
「ふにゃぁ……」
「またとけそうな顔してる!」
「わふっ」
わんわんが、元気いっぱいに飛びかかってきた。
ざばーん。と二人は転びながら川に落ちる。
「わふっ!」
ばしゃっ!
「わっはっは、何してんだ」
「あはははっ!」
すごく冷たいけど、こころがぽかぽかする。
「わんわん、この棒取ってこーい!」
「わふっ」
ガンツが川の中に棒を投げ、それをわんわんが拾ってくる
「わふぅ……」
しっぽをぶんぶん振っている。楽しそうだった。
◇
「見ろー!」
ガンツが平たい石を拾った。
「今日はオレ、十回跳ばす!」
「無理だろー!」
「できるし!」
びゅんっ!
ぴょん。 ぴょんぴょん。 ぴょん。
「六回!」
「おぉー!」
「すげー!」
ポルンが拍手する。
「ユウトもやれー!」
「んー……」
ボクも石を持つ。
「えい」
ぽちゃん。
「沈んだー!」
「ただ落ちただけだぞ!」
「むずかしい……」
「丸くて平べったい石が投げやすいぞ」
すると。
わんわんが石をくわえた。
「わふっ!」
ぽちゃん。
「あっ」
「わっ、わんわんも投げた!」
「一緒だね、わんわん……」
「わふぅ」
ちょっと誇らしげだった。
◇
「魚いたぞー!」
「どこどこ!?」
「はやっ!」
小さな魚が、 すいーっと泳いでいく。
ばしゃばしゃ。
みんな追いかける。
「待てぇー!」
「逃げたー!」
「魚つよい……」
「ユウト動かなすぎ!」
「さかなさんは自由だから……」
「なんかそれっぽいこと言った!」
ぽかぽか。
ばしゃばしゃ。
川の音が気持ちいい。
ボクは川辺の草に、ごろんっと寝転がった。
「ちょっとだけ……」
「絶対いっぱい寝るやつだ!」
草はふかふかだった。
風もやさしい。
「すぅ……」
「寝たー!?」
◇
「ユウトー!」
「大変だー!」
「起きろー!」
「んぅ……?」
目を開ける。
三人が川を指さしていた。
「どうしたの……」
「わんわんが!」
「わふぅ……」
見ると。
わんわんが、川の真ん中の石の上にいた。
「帰れなくなった!」
「でもしっぽ振ってるぞ?」
「たのしそうだねぇ」
「助けないとだろ!?」
みんなわたわたしていた。
ボクは眠そうに考える。
「……おふとん」
ぼふんっ!!!
「出たぁー!」
巨大おふとん召喚。
ふわぁっと、川に浮かぶ。
「また浮いてるぅ!?」
「よし、みんなで助けに行くぞ!ユウトも乗れ!」
いや、ボクのふとんだけど……まぁ、いいか。
ボクも乗った。
ぽふ。
うにうに。
うにうに。
気持ちいい。
「よし、いけー!」
「ユウト、くつろぐなー!」
でも。
おふとんは、すぃーっと川を進む。
「すげー!」
「船だー!」
「おふとん船だー!」
わんわんのところへ到着。
「わふっ!」
「おいでー」
ぽふっ。
わんわん回収。
「よし、ユウト戻るぞ……」
その瞬間。
ぐらん。
「あっ」
「流されてるぅぅぅ!?」
おふとん、ぷかぷか川下り開始。
「わぁぁー!」
「速ぇぇー!」
「たのしー!」
「わふぅー!」
みんな大騒ぎ。
一方。
「すぅ……」
「ユウト寝てるぅ!?」
おふとんの上は、とても快適だった。
◇
夕方。
「たのしかったなー!」
「また行こうぜ!」
「次は魚つかまえる!」
「わふっ!」
みんな元気いっぱいだった。
ボクは眠そうに歩きながら言う。
「かわは……ひんやりおふとんだった……」
「ちょっとわかるかも!」
今日も平和だった。




