第五話 ごはんは、ぽかぽか
「ただいまー!」
ばんっ。
リサが元気よく扉を開けた。
その後ろから。
「わふっ!」
「んー……」
子わんわんと、眠そうなボクが続く。
台所にいたお母さんが振り向いた。
「おかえり……って」
ぴたり。
「えっ」
「わふ!」
「えっ、子犬!?キャー、可愛い!!どうしたの?」
子わんわんは、しっぽをぶんぶん振った。
「森にいたの!」
「ついてきた!」
「わふぅ」
お母さんは目をぱちぱちさせる。
「えぇぇ……」
すると。
子わんわんが、とてとて近づいて。
ころんっ。
お腹を見せた。
「……」
「……」
「わふっ」
しっぽ、ふりふり。
「……もぅ、かわいいし、仕方ないわねぇ」
「やったぁ!」
リサがぴょんっと跳ねる。
陥落が早かった。
◇
「あなたー! 見てー!」
「ん?」
夕方。
お父さんも帰ってきた。
「おぉ」
「わふっ!」
「白くて可愛いなぁ」
「色?そこは子犬に驚かないの!?」
お父さんは、わしゃわしゃ子わんわんを撫でた。
「まぁ、かわいいしな。ユウトがお世話するんだぞ」
「わふぅ……」
「うん、お世話がんばる!よかったね。わんわん」
「わんわん」
お父さん、まだ撫でてるよ。お父さんもすごく気に入ってくれたみたいだ。
「名前どうする?」
「わんわん」
「あははっ、そのままだな!可哀想じゃないか?」
「あなた、わんわんで、いいんじゃない。」
お母さんも賛成してくれた。
「だって、わんわんだし……」
「まぁ、わかりやすいし、この子も気に入ってそうだな。それじゃ、決まりだな」
「よかったね、わんわん!」
「わふ!」
◇
夜ごはんの時間。
今日はシチューだった。
ぐつぐつ。
いいにおい。
「おぉー……」
ボクは椅子に座りながら、ぼんやり湯気を見ていた。
「眠そうねぇ」
「ごはんと湯気は、眠くなる……」
「わかるけど!」
リサも遊びに来ていた。
「いただきまーす!」
『いただきます』
みんなで手を合わせる。
わんわんは机の下。
しっぽふりふり。
「はいユウト、ちゃんと食べるのよ」
「んー……」
ぱく。
もぐもぐ。
「おいしい……」
「よかった」
シチューはあったかかった。
パンもふわふわ。
つまり。
かなり眠い。
「こっくりこっくりしてる!」
リサが笑う。
「寝ないで食べなさいよー」
「だいじょぶ……」
こくっ。
こくっ。
そして。
がくん。
ぽちゃん。
「あっ」
「あーーーっ!?」
パンがシチューに落ちた。
「ユウトぉ!?」
「パンが泳いでるみたいね!」
「たすけないと……」
「まず起きてぇ!?」
わちゃわちゃ。
でも。
なんだか今日は、みんなずっと笑っていた。
ぽかぽかして。
あったかくて。
眠くなるくらい平和だった。
「……なんか最近、疲れにくいのよねぇ」
お母さんが首をかしげる。
「たしかによく眠れるな」
お父さんもうなずいた。
「わふぅ」
わんわんは机の下でごろん。
リサも、ふにゃーっとしていた。
「なんかここ、落ち着くぅ……」
「うん……」
ボクは眠そうにうなずく。
「おうちは……おっきいおふとんだから……」
「またそれっぽいこと言ってる」
でも。
誰もちょっと否定できなかった。
◇
ごはんのあと。
「ユウト、おふろ入るわよー」
「んぅー……」
「もぅ、寝ないの!」
「まだ寝てない……」
「目つぶってる!」
その時。
わんわんが、てくてく歩いてきた。
そして。
ぽふっ。
ボクのお腹の上に乗る。
「わふ」
「あったかい……」
「仲良しねぇ」
お母さんが笑った。
ぽかぽか。
ねむねむ。
わんわんも、うとうとしている。
「…………」
「…………」
「…………すぅ」
「あらら、二人とも寝ちゃった。おやすみ、ユウト、わんわん」




