第五十九話 秋風、びゅうびゅう
ひゅるるるー。
朝から風が元気いっぱい吹いている。
木の葉がくるくる。
落ち葉もくるくる。
洗濯物がぱたぱた。
「わぁー!」
ユウトは目をきらきら。
「風さん、元気だねー!」
わんわんも。
「わふっ!」
しっぽをぶんぶん。
「今日はすごい風ねぇ、そろそろかしら?」
お母さんが洗濯物を押さえながら笑った。
◇
「ユウトー!遊ぼー!」
リサがやってきた。
「あっ、リサ!何して遊ぶ?」
すると。
ひゅるるるる。
一枚の葉っぱが二人の前をくるくる。
「わっ!」
リサが追いかける。
「待て待てー!」
ユウトも追いかける。
てってってっ。
葉っぱは風に乗って。
くるくる。
ひらひら。
「逃げたー!」
「あはは!」
二人は大笑い。
◇
しばらくすると。
「おっ!」
リサが目を丸くした。
「見て!」
落ち葉がいっぱい集まっている。
「山だ!」
「ほんとだ!」
昨日までなかった落ち葉の山。
風さんが集めたみたい。
「えーい!」
リサが飛び込む。
ばさぁっ。
「きゃははは!」
「リサ、ずるーい!」
ユウトも飛び込む。
ばさばさっ。
わんわんも。
「わふー!」
ばさばさばさ。
葉っぱだらけ。
「あははは!」
みんな大笑い。
◇
リーナお姉ちゃんもやってきた。
「ふたりとも葉っぱだらけだよー」
優しく笑う。
「えへへー」
「葉っぱのおふとん!」
ユウトはごろん。
「ふかふか!」
「リサも!」
ごろん。
ぽかぽか。
でも。
ひゅるるる。
風は朝より元気になっていた。
「この風からすると、そろそろだね」
リーナお姉ちゃんが空を見上げる。
「うん!」
リサも見上げる。
「んっ?なにがー?」
ユウトはこてっと首をかしげる。
リサとリーナお姉ちゃんは、楽しそうにくすくす笑ってる。
◇
ざわざわざわ。
ざわざわざわ。
森の木が大きく揺れる。
さらさら。
カラカラ。
どんぐりが転がる。
「わぁ!」
ユウトは帽子を押さえた。
「飛ばされそう!」
「きゃー!」
リサのリボンもひらひら。
「待ってー!」
ひゅるるるる。
風に乗って飛んでいく。
「あっ!」
すると。
わんわんが。
「わふっ!」
ぴょーん!
ぱくっ。
「わんわん!」
「すごーい!」
リボンをくわえて戻ってきた。
「ありがとう!」
リサはわんわんをぎゅーっ。
わんわんは嬉しそう。
しっぽぶんぶん。
◇
ひゅるるる。
干し柿がゆらゆら。
お芋もゆらゆら。
「今日も踊ってるね」
ユウトが笑う。
ふと、空を見上げると。
ん?
あれ?
あれれ?
いつもと何か違うような。。。
「あっ!」
ユウトが見たことのない雲の動き。
ゆっくりと、ゆっーくりと、大きな渦を作ってる。
「ん?ユウトどうしたの?」
リサが面白そうに目をぱちぱち。
あっ、この顔は何か知ってる顔だ。
「リサ、なにかしってる?」
「ふふっ、どうだろうね」
リサのかおがにんまり。
「くもがぐるぐるしてるよ」
ユウトも見上げる。
「どんどん大きくなってるね」
リサも見上げる。
どこまでも高い秋の空。
一本の白い雲がぐるぐる。ぐるぐるとどんどん大きく太くなっていく。
ユウトはどきどきした。
ひゅるるるる。
ひゅるるるる。
風はさっきよりも元気いっぱい。
白い長い雲は。
まるで生き物のように。
ゆっくり。
ゆっくり。
空を這うように。
うずを巻いて大きくなっていく。
「わぁ……」
ユウトは思わず目をまん丸にした。
「なんだか動いてるみたい……」
その時。
遠い空の向こうから。
ふぇ……
ふぇっ……
とても小さな声が聞こえたような気がした。




