第五十八話 干す と?
朝。
お庭の洗濯物がゆらゆら揺れている。
ひゅるる、くるくるっ。
落ち葉が楽しそうに地面を転がって、なんだか庭中がダンスをしているみたい。
「んーっ!今日は絶好の干し日和ねぇ」
ゆったりとしたワンピース姿のお母さんが両手を上に上げて、伸びをしながら嬉しそうに言った。
「ほす?」
ユウトは首をかしげる。
「うん。こないだユウトが採ってくれてた渋柿やお芋をね、この洗濯物にみたいに干すのよ」
「どうしてほすの?」
「干したら美味しくなるのよ」
「えぇー!」
ユウトの目がきらきら。
「すごーい!」
わんわんも。
「わふっ!」
しっぽをぶんぶん。
◇
裏庭には、大きなざるや紐がいっぱい並んでいた。
お母さんは渋柿の皮をするすると剥いていく。
「わぁー!」
オレンジ色の柿がつるん。
「お母さん、上手!」
「ふふっ」
「これを紐で結ぶのよ」
すると。
「ユウトー!」
元気な声。
「おはよー!何してるの?」
リサが走ってきた。
「おはよー、リサ!いまねー、おてつだいしてる」
「リサもお手伝いする!」
「うん、いっしょにしよっ」
胸を張る。
「あら、助かるわ」
お母さんもにっこり。
「わふっ!」
わんわんも歓迎している。
◇
「ユウト、この紐持って!」
「うん!」
二人で柿を結んでいく。
「できた!」
「もう一個!」
「次はリサ!」
「次はボク!」
きゃっきゃっ。
わいわい。
たくさんの柿が紐につながった。
「それじゃ、よいしょっと」
お母さんが軒先に吊るす。
ゆらん。
ゆらゆら。
「わぁー!」
たくさんの柿が並んだ。
「かわいい!」
リサが目を輝かせる。
「ふふっ、柿も気持ちよさそうね!」
「ほんとだね!」
ユウトも嬉しそう。
さらさら。
風が吹く。
ゆらゆら。
柿も嬉しそうに揺れていた。
◇
「次はお芋よ」
「わーい!」
この前掘ったお芋を薄く切る。
「こう?」
「そうそう」
お母さんが褒めてくれる。
「リサもできる!」
「リサ、お姉ちゃんだから!」
えへへー。
得意そう。
その横では。
「わふ?」
わんわんがお芋をじっと見ていた。
「わんわん、これはまだだよ」
「わふぅ」
ちょっと残念そう。
「あははは!」
みんな笑った。
お芋もざるの上へ。
それから。
なすやにんじんも。
いろんなものを並べる。
「いっぱい!」
「いっぱいだね!」
「これ全部、美味しくなるの?」
「そうよ」
「お日さまと風さんがお料理してくれるの」
「すごーい!」
ユウトは感心した。
◇
お昼。
みんなで縁側に座る。
ぽかぽか。
お茶を飲んでひと休み。
「でもさぁ」
ユウトが首をかしげる。
「まだ食べられないの?」
「なすはもういいかしら。今日の夜食べたいし。お芋や柿は、まだまだかな」
お母さんが笑う。
「何日か干すのよ」
「おいしくなるため?」
「うん、そうよ。ユウトよく知ってるわね」
お母さんが頭をなでながら優しくしゃべる。
ほめられてなんだか嬉しくなる。
「ゆっくり待とうね」
お母さんが言うと、リサも頷く。
「リサ知ってる!」
「待てば待つほど美味しくなるの!」
「リサ、すごーい!」
「えへへー」
ちょっと得意そう。
◇
その時。
ざぁぁぁ。
少し強い風が吹いた。
ゆらゆら。
干し柿が揺れる。
ゆらゆら。
お芋も揺れる。
「わぁー!」
「踊ってる!」
リサが笑う。
「ほんとだ!」
「楽しそう!」
さらさら。
葉っぱが舞う。
カラカラ。
木の実が転がる。
秋の匂い。
気持ちいい風。
ユウトは空を見上げた。
「ねぇ、リサ」
「ん?」
「風さん元気だね」
「うん!」
リサも空を見る。
「今日はいつもより元気!」
どこまでも高い青空。
いつもの一本の太い白い雲。
いつもの雲。
だけど。
「あれ?」
リサは目をぱちぱち。
「どうしたの?」
「なんかね」
「少し大きくなってない?」
「そうかなぁ?」
ユウトも見上げる。
白い雲は。
風に乗って。
ゆっくり。
ゆっくり。
空を泳ぐように流れていた。
さらさらさら。
ざわざわざわ。
干し柿たちも。
秋の風に揺れながら。
美味しくなーれ。
美味しくなーれ。
そう言っているみたいだった。




