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チート転生-おふとんで『うにうに』するだけで今日も世界は平和だった-  作者: あーのるど
第三章 秋は、美味しい

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第五十六話 焼きいも、ほくほく

 秋の午後。


 さらさらとした秋風が心地いい。


「今日はたき火で焼きいもするぞー!」


「わーい!」


 お父さんの声に、ユウトはぴょんっと飛び上がった。


 わんわんも。


「わふっ!」


 しっぽをぶんぶん。


「そうだ、ユウト。リサやガンツたちも呼んでみんなでしよう!」


「うん、わかかった。よんでくるねー」


 ユウトは、やったぁ。と急いで呼びに行く。


「わんわん、いこう」


「わふっ!」


 わんわんはしっぽをふりふり。

 おでかけが嬉しそうだ。


   ◇


 「こんにちはー」


 リサやガンツたちも集まる。


 裏庭の端では、お父さんとリサパパが落ち葉や小枝をいっぱい集めていた。


「よーし、火をつけるぞ」


 ぱちっ。


 ぱちぱち。


 赤い火がゆらゆら揺れる。


「きれー」


 ユウトは目を細める。


「暖かいねー」


 リサも嬉しそう。


「ふふっ、火は近づきすぎちゃだめよ」


 リーナお姉ちゃんが優しく言った。


 その横では。


「オレたちはお芋係だ!」


 ガンツが胸を張る。


「はいっ!」


 ミックも元気よく返事。


「早く食べたいなぁ」


 ポルンだけはもうお腹を押さえていた。


「あははは!」


 みんな大笑い。


   ◇


「それじゃ、お芋を包むぞー」


 水につけてある小ぶりいも。

 お父さんが教えてくれる。


「まずは濡らした藁でいっぱい包んで」


「その上から、この大きな葉っぱで包むんだ」


 リサパパもにこにこ。


「こう?」


 ユウトが一生懸命包む。


「そうそう!」


「上手上手」


 リサも隣で一生懸命。


「リサ、お姉ちゃんだから上手にできるの!」


 えへへっと得意顔。


 リーナお姉ちゃんも笑った。


「ふたりとも上手だよ」


 そして。


「よーし、最後はこの泥を塗ったら完成だ」


「はーい」


 みんなで泥をぬりぬり。楽しい。

 よし、完成だ!


「いくぞー!」


   ◇


 みんなで焚き火の前へ。

 でもさっきまでのように燃え上がってない。

 今にも消えそうだ。


「わっ、たきびさん消えてる!?」


 ユウトは、焼きいもが食べられないとしんぱいになった。


「ははっ、大丈夫だよ。ユウトくん。これは熾火(おきび)って言って、焼きいものためのお布団だよ」


 リサパパは、その熾火を長い棒で掻き分けながら、にこっとした。

 お顔にすすがついている。


「おいもさんのおふとん!?」


 ユウトの目がキラキラする。

 おいものおふとんがあるとはしらなかった。


「おふとん、いいなー」


「あははっ、ユウトは布団が好きだなぁ」


 ガンツが腹をかかえて笑う。

 あっ、ガンツの手でドロが服についた。

 みんなも笑ってる。


「よし、それじゃー、中に入れるぞ」


 リサパパがみんなからおいもを受け取り、おふとんの中に。


「ほいっ!」


「そりゃー!」


「わふっ!」


 わんわんまで前足をぱたぱた。


 お芋は熾火の中へ。


 チリチリ。


 じりじり。


 熾火が熱くぽうっと光る。


   ◇


 待ってる間。


 ガンツたちは鬼ごっこ。


「待て待てー!」


「きゃー!」


 リサが逃げる。


「はははっ、今度はオレが鬼だー!」


 ガンツが両手をあげて追いかける。


「みなさんも、逃げてくださいー!」


 ミックが追いかけられる。


「お腹すいたなぁ」


 ポルンは熾火の前から離れない。


「まだかなぁ」


 くんくん。


 くんくん。


 すると。


「わん?」


 わんわんが鼻をひくひく。


 草むらが。


 もぞっ。


「ん?」


 ユウトが見る。


 誰もいない。


 でも。


 ころころ。


 小さな石ころが転がった。


「風かなぁ?」


 ユウトは首をかしげた。


 その奥で。


 小さな小さな笑い声がしたような。


 くすくす。


 でも。


「ユウトー!」


 リサの声。


「鬼ごっこしよー!」


「うん!」


 ユウトはすぐ走っていった。


 草むらの陰で。


 小さな小さな影が。


 にこにこしながら熾火をひっそり見ていた。


   ◇


 しばらくすると。


「おっ、いい匂いしてきたぞ!」


 お父さんが言った。


 ふわぁぁ。


 甘い匂い。


「わぁ!」


「ほんとだ!」


「いい匂い!」


 みんな集まってくる。


 ポルンなんて。


「もう限界ぃ……」


 ふらふら。


「あははは!」


 みんな大笑い。


 お父さんが火の中からお芋を取り出す。


「熱いぞー」


 ほかほか。


 湯気がもくもく。


「うわぁ!」


 ユウトの目がきらきら。


 半分に割る。


 ぱかっ。


 中から。


 黄金色のお芋。


 ほわほわの湯気。


「わぁぁぁ……」


 リサが思わず声を上げた。


「きれーい」


 リーナお姉ちゃんも目を細める。


 甘い匂い。


 優しい匂い。


 なんだか幸せな匂い。


 ふーっ。


 ふーっ。


 少し冷まして。


 ぱくっ。


「あっ!」


 ユウトの目が丸くなった。


 ほくほく。


 ねっとり。


 優しい甘さが口いっぱいに広がる。


「おいしいー!」


「ほんとだー!」


 リサもにこにこ。


「甘い!」


「柔らかいです!」


「うまーい!」


「もっと食べたい」


 ガンツも、ミックも、ポルンも大喜び。


 わんわんも。


「わふっ!」


 小さく切ってもらって。


 もぐもぐ。


 しっぽぶんぶん。


「ふふっ」


 リーナお姉ちゃんも幸せそう。


「自分たちで掘ったお芋だから、余計に美味しいね」


「うん!」


 ユウトも嬉しくてたまらない。


   ◇


 気がつけば。


 お芋の山が少し減っていた。


「あれ?」


 リサが首をかしげる。


「さっきもっとあったよね?」


「オレ食ってないぞ?」


 ガンツも不思議そう。


「ぼくもまだ二つです!」


「ポルンは?」


「三つしか食べてないよ?」


「三つも食べたの!?」


 みんな大笑い。


 すると。


 草むらの奥で。


 もぞもぞ。


 小さな葉っぱの帽子がちらっと見えた。


 そして。


 ころころ。


 小さなお芋を抱えた影が、慌てて隠れた。


「ん?」


 ユウトが目をぱちぱち。


 でも。


 もう何もいない。


「気のせいかなぁ」


 すると。


 くすくす。


 どこからか楽しそうな笑い声。


 風の音だったのかもしれない。


 さらさら。


 秋の風が吹く。

 空にはいつもの一本雲。


「焼きいも最高だな!」


 ガンツが笑う。


「うん!」


 リサも笑う。


「またやろうね!」


「うん!」


 ユウトも笑った。


 秋のおやつは、ほくほくで。

 なんだか心までぽかぽかになる。

 そんな一日だった。

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