第五十五話 おいも、ほりほり
秋の朝。
風も涼しい。
「ユウトー!」
お父さんの声。
「今から芋掘り行くぞー!」
「わーい!」
ユウトはぴょこんと飛び起きた。
「やったー!」
両手を上げて飛び跳ねる。
わんわんも。
「わふっ!」
しっぽをぶんぶん振っている。
◇
畑には大きな葉っぱがいっぱい。
「うわぁ!」
ユウトは目をまん丸にした。
「これ全部お芋なの?」
「あぁ」
お父さんがにっこり笑う。
「土の中にいっぱい隠れてるぞ」
「かくれんぼしてるの?」
「そうだぞー。探してあげてな」
「うん、探すー!」
ユウトはやる気いっぱい。
すると。
「おーい!」
向こうから声がした。
「ユウトくーん!」
リサが元気よく手を振る。
「リサだー!」
てってってっ。
駆け寄ると。
「もういっぱい掘ったんだよー!」
リサパパとリーナお姉ちゃんと一緒に、すでに芋掘りの真っ最中だった。
「見て見て!」
リサが土の上を指差す。
「わぁー!」
大きなお芋がごろごろ。
「すごーい!」
「えへへー」
リサは得意そう。
「ユウトくんも一緒にやろ?」
リーナお姉ちゃんが優しく笑った。
「うん!」
◇
「それじゃ、まずはこの葉っぱの根元を探すんだ」
お父さんが教えてくれる。
「ここ?」
「そうそう」
「そして優しく土を掘るんだよ」
リサパパもにこにこ。
「いくぞー!」
ユウトは両手で土をかきかき。
かきかき。
かきかき。
「んしょっ」
「わふっ!」
わんわんも隣で前足をぱたぱた。
「あははっ、わんわんも手伝ってる!」
リサが大笑い。
「わふわふ!」
わんわんは得意そうだ。
すると。
「あっ!」
土の中から紫色が見えた。
「お芋だ!」
「ほんとだ!」
リサも顔を近づける。
「引っ張ってみな」
お父さんが言う。
「うん!」
ぎゅっ。
「んんんー!」
ぐいぐい。
「ぬぬぬー!」
動かない。
「がんばれー!」
リサが応援する。
「ユウトくん、もう少し!」
リーナお姉ちゃんも応援してくれる。
「うぉぉぉー!」
ガバッ!
「わっ!」
ころん。
しりもち。
「あははは!」
みんな大笑い。
「取れたー!」
ユウトは両手でお芋を持ち上げた。
「おっきー!」
「すごーい!」
リサがぱちぱち拍手。
「ユウトくん、がんばったね」
リーナお姉ちゃんも嬉しそう。
なんだか胸がぽかぽかした。
◇
「よーし、リサも負けないわ!」
リサが葉っぱをつかむ。
「えいっ!」
ぐいぐい。
「んんん!」
「リサ、がんばれー!」
今度はユウトが応援する。
「むむむー!」
ぽこん。
「やったー!」
大きなお芋が出てきた。
「リサのお芋よー!」
両手を上げて大喜び。
「さすがリサちゃん」
リサパパが笑う。
「えへへー」
リサも嬉しそう。
◇
その後も。
かきかき。
「出てきたー!」
かきかき。
「まだある!」
かきかき。
「うわぁ、二つくっついてる!」
土の中から次々とお芋が現れる。
「面白いねー!」
「うん!」
ユウトも笑う。
「土の中に宝物がいっぱいだ!」
「そうね!」
リサもにっこり。
「お芋ってすごいね!」
「いっぱい隠れてたんだなー」
お父さんも笑った。
◇
気がつけば。
「ふぅー」
みんな汗びっしょり。
「いっぱい掘ったねー」
リーナお姉ちゃんが籠を見る。
「わぁ!」
ユウトは目を丸くした。
大きなお芋。
細長いお芋。
ころんと丸いお芋。
籠の中はお芋でいっぱい。
「大収穫だな!」
リサパパが笑う。
「おぉー!」
みんな嬉しそう。
わんわんも。
「わふっ!」
しっぽをぶんぶん。
「いっぱいがんばったもんね!」
リサが胸を張る。
「うん!」
ユウトもにっこり。
土だらけの手。
土だらけの顔。
でも。
なんだかすごく嬉しかった。
「つかれたー!」
リサがその場でごろんっと寝転がった。
「あっ、リサ!」
ユウトも隣にごろん。
ふかふかの土。
ぽかぽかのお日さま。
気持ちいい風。
わんわんも。
「わふぅ」
二人の間にどさっと寝転がった。
見合って笑う。
さらさら。
風が吹く。
「ねぇ、ユウト」
「んー?」
リサは両手を頭の後ろで組みながら、にこにこ空を見上げた。
「空、高いねー」
「うん」
「風も気持ちいぃ」
「うん!」
リサは指をぴんっと伸ばした。
「ほら、あの雲みて!」
ユウトも見上げる。
どこまでも青い空。
そして。
一本の長い白い雲が。
ゆっくりと空を横切っていた。
「あの雲に乗って歩いてみたい!」
「ふふっ、ボクはあの雲を泳いでるみたい」
リサは嬉しそうに笑う。
ユウトも嬉しそうに笑う。
ぐぅー。
急にお腹がなった。
「お芋いっぱい掘ったからかな」
ちょっと恥ずかしくて。
「うん!」
でも、リサは元気よく頷いてくれた。
「いっぱい頑張ったから、空もきれいに見えし、お腹もすくのよ!」
「うん!」
「リサ、お姉ちゃんだから知ってるの!」
「すごーい!」
えへへー。
リサは得意そう。
さらさら。
葉っぱが揺れる。
ぽかぽか。
眠くなるような優しい風。
遠くでは、お父さんたちの笑い声。
みんなの楽しそうな声。
ユウトは目を細めた。
「秋っていいね」
「うん!」
リサもにっこり笑う。
「明日もいっぱい遊ぼうね!」
「うん!」
見上げた空には。
一本の長い白い雲。
今日も静かに見守ってくれている。




