第五十話 すずむし、りーん
おはようございます。作者のあーのるどです。
お知らせです。
今日から土日も1話投稿になります。
また明日6/28(日)から投稿時間が18時に変更になります。
夕方。
空はオレンジ色。
空を横切る一本の細く薄い雲も日の光をあびて金色に輝いている。
昼間はまだまだ少し暑かったけど、風はひんやりとして秋らしくになっていた。
ユウトとリサは縁側でごろーんとしていた。
二人ともタオルケットを抱えて、うにうに。
ひゅーっと肌寒い風が吹く。
「わっ、風が少しさむいわねー」
リサがタオルケットの中でもぞもぞと動き、ピタッとタオルケットごしに柔らかな体温が伝わってくる。
「でも、でもこうしとくときもちいいー」
ボクももぞもぞと動き、体を寄せる。あたたかい。
「うん、そうだね」
リサはなんだか楽しそうだ。ボクもなんだか嬉しい。
空を見上げる。
雲がゆっくり流れていた。
のんびり。
うにうに。
その時だった。
リーン。
リーン。
「ん?」
ボクはリサと顔を見合わせる。
どこかで音がした。
リーン。
リーン。
あっ、まただ。
「なんのおと?」
リサに聞いてみる。鈴みたい?
でも少し違う。
リズムよく整っていてきれいな音だった。
◇
「聞こえた!?」
「うん!りーんって」
「聞こえたよね!?」
「うん、聞こえた!」
二人は顔を見合わせた。
そして。
「なにかな?」
「なにかな?」
同じことを言った。
「あははっ」
「えへへ」
二人で笑う。
◇
リーン。
リーン。
また聞こえた。
「こっちかな?」
リサが耳を澄ませる。
「あっちかな?」
ユウトも耳を澄ませる。
すると。
また。
リーン。
リーン。
「向こうだ!」
二人は同時に庭へ飛び出した。
◇
てくてくてく。
リサは軒下をゆっくり丁寧に探してる。
ててっ。てててっ。
ユウトは花壇や木の下にいないかなーと探してる。
二人とも何も見つからない。
庭の外にある膝下辺りまで伸びた草むらに二人近づきながらさがす。
でも見つからない。
「いないね」
「いないね」
不思議だった。
音は聞こえるのに。
姿が見えない。
◇
リーン。リーン。
また聞こえた!
「近い!」
リサが言う。
「うん!」
二人はそーっと草むらへ近づいた。ユウトとリサは目を合わせ、不思議とゆっくり忍び足になり、そーっと。そーっと近づく。
リーン。リーン。
音はすぐそこから聞こえる。
「このへんかな?」
ユウトはしゃがみこみながら小声で聞く。
草がゆらゆら揺れている。
「なにかいそうだね?」
リサも楽しそうに目をきらきらさせながら、しゃがみこんだ。
草がゆらっゆらっとまるで人が掻き分けるように動く。
「どこかなー?もしかしてようせいさんかなー?」
なんだかわくわくして、よーく見る。
すると。
草の奥が。
かさかさかさっ。
あっ、動いた!
小さな影が一瞬見える。
「いた!」
ユウトが言う。
「えっ、どこどこ!?」
リサも顔を近づける。
でも。
もう見えない。
「いま、ようせいさんがいたよ!」
「ほんと!?」
どきどきした。
本当にようせいさんかもしれない。
リーン。リーン。
今度は後ろの方で音が聞こえる。
あれ?さっき進んだ方向と反対?いつの間に?と思いつつも振り返り
「ユウト!後ろよ!後ろに行ったわ!」
と言いつつ、草がゆらゆらと優しく揺れている場所をリサはそーっと草をかき分けた。
その瞬間。
ぴょーん。
小さな何かが草の奥からするりと現れた。
「あっ!」
リサが声を上げた。
「いたー!」
草の葉につかまっていたのは。
黒くて小さな虫。
「なんだーむしさんかぁ!」
「これ、すずむしね!ようせいさんじゃなかったね」
リーン。
リーン。
小さな羽を震わせて鳴いている。
「わぁー!」
二人は目を輝かせた。
「きれいなおとだね」
「ほんとだね」
リーン。リーン。
夕暮れの風の中。
スズムシは楽しそうに歌っていた。
◇
近くの草がゆれては、奥からぴょーんと飛んでくる。
リーン。リーン。
リーン。リーン。
あっちからも。こっちからも。
リーン。リーン。
リーン。リーン。
「ふえた!」
リサが言う。
「ほんとだ!」
いつの間にか。
夕暮れの草むらはユウトたちを追いかけるようにゆらゆら揺れている。
リーン。リーン。
スズムシたちの音楽会が始まったようだった。




