第四十九話 しろにゃーのおひるね
今話から、秋編スタートです。
いよいよ物語もいよいよ後半戦に突入します。
といっても、いつも通りの平和なほのぼの日常が中心ですが、秋といえば実りの季節。
秋といえば食欲の秋!ユウトたちの成長と合わせてお楽しみくださいね!
青空を横切る一本の細いて薄い白い雲。
夏が終わったけどまだまだ暑い。
けど、風は少しだけひんやりしてきた。
ある日の昼下がり。
ユウトは縁側でごろーんとしていた。
お皿にはおやつのクッキーが三枚。
お気に入りのタオルケットを抱えて、うにうに。
「きもちいいー」
ぽかぽか。
風がふわり。
なんだか眠くなる。
すると。
「にゃーん」
どこからか声がした。
「ん?」
ユウトは顔を上げる。
白い猫だった。
「あっ、しろにゃーだ」
しろにゃーはたまに遊びに来てくれる。
真っ白な毛。
青い目。
いつも気まぐれ。
来る時は来るけど、来ない時は全然来ない。
「遊びにきたの?」
「にゃーん」
しろにゃーは返事をした。
でも近づいてこない。
縁側の下でじーっとしている。
「どうしたの?」
「にゃ」
首をかしげる。
ユウトも首をかしげる。
しろにゃーも首をかしげる。
「おんなじだねー」
なんだか面白かった。
◇
しばらくすると。
しろにゃーがぴょんっと縁側へ飛び乗った。
「ほらっ、こっちおいで」
ユウトは嬉しくなっておいでおいでする。
でも、しろにゃーは遊ばない。
ごろーん。
その場で寝転がった。
「ねるの?」
「にゃ~」
大きなあくびをしながら答える。
そして。
まるくなる。
ふわふわのしっぽで顔を隠す。
そのまま。
ゴロゴロ。ゴロゴロ。
喉をリズムよく鳴らす。もう眠ったのかな?
「もうねたの?」
ユウトは驚いた。
◇
猫って不思議だなぁ。
さっきまで起きていたのに。
もう寝ている。
「いいなぁ」
ユウトもごろん。
しろにゃーの隣へ転がる。
すると。
しろにゃーが片目を開けた。
「にゃ?」
「ボクもごろーん」
「にゃー」
問題ないらしい。
またゴロゴロと喉を鳴らし寝た。
◇
風が吹く。
葉っぱがさらさら揺れる。
遠くで鳥の声。
どこかで虫の声。
秋の音だ。
「しずかだね」
しろにゃーは目を閉じたまま耳をぴっぴっと動かして返事をした。
たぶん。
返事をした。
たぶん。
◇
しばらくすると。
「ユウトー!」
元気な声。
リサだった。
「遊びましょー!」
走ってくる。
でも。
途中で止まった。
「あっ」
しろにゃーを見つけた。
「しろにゃー、寝てるの?」
「うん」
「かわいいね」
「うん」
二人とも小声になる。
起こしたくないからだ。
◇
リサも縁側に座った。
「ほんとに寝てるね」
「うん、ぐっすり」
「気持ちよさそう」
しろにゃーは幸せそうだった。
お腹が上下している。
時々ひげがぴくぴく動く。
「夢見てるのかな?」
リサが言う。
「お魚いっぱい食べる夢かな?」
「それいいね!」
二人はくすくす笑った。
◇
その時だった。
ころん。
しろにゃーが寝返りをうった。
「あっ」
そして。
そのまま。
ユウトの足にぺたり。
「わっ」
くっついた。
温かい。
ふわふわ。
「いいなぁー!」
リサがうらやましそうに言う。
「えへへ」
ユウトは嬉しくなった。
しろにゃーは完全に寝ている。
逃げない。
動かない。
ただ。
すやすや眠っていた。
◇
「リサも触っていい?」
「うん、しろにゃーもなでてほしいはずだよー」
そーっと。
リサが頭をなでる。
なでなで。
しろにゃーは起きない。
「かっわいぃ」
リサがとろけそうな顔になった。
「ねー」
「ねー」
二人もなんだか眠くなってくる。
◇
ぽかぽか。
さらさら。
ぽかぽか。
さらさら。
秋の風は気持ちよかった。
ユウトはあくびをする。
「ふぁぁ」
リサも。
「ふぁぁ」
二人で顔を見合わせた。
「あはは」
「あははは」
笑う。
そして。
いつの間にか。
ユウトも。
リサも。
しろにゃーの隣で。
すやすや眠ってしまった。
◇
夕方。
オレンジ色の光が差し込む。
目を開けると。
「んー」
ユウトの胸の上に。
しろにゃーがいた。
「わっ」
起きてた。
「にゃーん」
しろにゃーは一声鳴く。
そして。
ぴょん。
縁側から飛び降りた。
「あっ、帰るの?」
「にゃ」
振り返る。
それから。
とことこ歩いていく。
「ばいばーい!」
ユウトが手を振る。
「またねー!」
リサも手を振る。
しろにゃーは尻尾をゆらっと一振り動かした。
返事だったのかもしれない。
◇
秋の風が吹く。
さらさら。
葉っぱが揺れる。
「今日はいっぱい寝たね」
リサが笑う。
「うん!」
ユウトも笑った。
「あっ、おやつのクッキー食べよ」
「うん!」
そういってお皿にあった二枚のクッキーを分けて食べた。
冒険も楽しい。
でも。
こんな一日も悪くない。
秋の始まりは。
とても静かで。
とても気持ちのいい一日だった。




