第四十一話 夏の秘密基地
みーんみんみんみん。
セミが鳴いている。
今日も空は青く、おひさまはサンサンと輝いていてる。
夏まっさかり。
風はひゅーと吹き、雲はゆっくり流れている。
「しゅっぱーつ!」
リサが元気よく手を上げた。
「おー!」
ユウトも続く。
「わふっ!」
わんわんもしっぽをぶんぶん振っていた。
今日はこれから秘密基地だ。
◇
森の入り口。
てくてく。
てくてく。
ユウトたちは楽しそうに歩いている。
……じーっ。
木の陰。
少し後ろに影が3つ。ガンツたちだ。
「なぁ」
ガンツが小声で言った。
「ユウトたち、どこ行くんだ?」
「ぼく知ってますよ」
ミックが胸を張る。
「ほんとか?」
「もちろんです」
自信満々だった。
「どこだ?」
「えーっとですね」
ミックは腕を組む。
「森に行くんですよ」
「それ見れば分かるだろ」
ガンツが即座につっこんだ。
「へっ?そうですか」
ミックは首をかしげてとぼけた。
「ミック、分からなかったらそーいえばいいのにー」
「そうですか?名推理だと思ったんですが」
「はははっ、まぁいいや、ミック、ポルン!ユウトたちを追いかけるぞ!何やら事件の匂いががするぜ!」
「おぉ!」
◇
森の中は涼しく、木の間からの光がきらきらしてる。
しばらくユウトたちを追いかけるが、まだ姿は見えない。見失ったようだ。
どこにいるか分からない。
奥まで行ったのかな?
その横で。
ポルンは、くんくんしていた。
「どうした?」
「甘~い匂いがするぅ」
「匂い?」
「うん」
ポルンは森の奥を指差す。
「いろんな果物の甘ーい匂いがします」
「こっちの方か?」
「はい、そうです」
「よし、それならポルンを信じて進むぞ」
ポルンは得意そうだった。
「すごいな、ポルン」
「お腹すきました」
「はははっ、ポルンらしいな。クッキー食べるか?」
ミックはポケットから1枚クッキーを渡す。
「ありがとう、ミック」
ポルンは幸せそうにクッキーを掲げて、大事そうに食べた。美味しぃ。
◇
しばらく歩く。
木漏れ日。
セミの声。
風がさらさら吹いていた。
「もうすぐだよ」
リサが言う。
「うん!」
そして。
森が少し開けた。
「ついたー!」
そこには。
大きな木。
木の根元の小さな洞窟。ぼくたちの秘密基地。
◇
静かな木陰。
やわらかい風。
「おい、あれリサじゃないか?」
ガンツは少し先、大きな木のところにいるリサを見つけた!
やった!見つけた!
走る。そして森が開けた。
「おぉ」
ガンツが思わず声を漏らした。
「すげぇ」
本気で驚いている。
「あれっ、ガンツだ。何してるのー?」
ユウトもいる。カバンから果物を出していた。
「ユウトたちこそ、何してるんだ?」
「ここは私たちの秘密基地よ。いいでしょー」
リサが胸を張って、にこっと笑った。
「ここはヒミツキチだよ」
ユウトも胸を張った。
◇
「きれいですねぇ」
ミックは木を見上げる。
「ぼく知ってますよ」
「なにを?」
ユウトが聞く。
「こういう木はですね」
「うん」
「千年くらい生きてます」
「ほんと?」
「はい、本に書いてました」
「へぇー」
「はい、絵本ですけどね」
「えほんかーい!」
リサが笑った。
ミックも笑った。
「あははっ」
◇
その間に。
ポルンは、きょろきょろしている。
「どうしたの?」
ユウトが聞く。
「その果物どうするの?」
「お供えして、みんなで食べるんだよ!ポルンも食べる?」
「うん、食べたい!」
「おいしいよ」
「うん、美味しそうだね。それじゃ、早くお供えしよう」
「うん、そうしよう!」
「どこにお供えするの?」
一拍置いて。
「あの木のところだよ」
リサがいう。
みんなうなずく。
◇
ユウトとリサは、木の根元へ果物を置く。
「どうぞー」
「どうぞー」
誰もいない。
でも。
高い枝の奥。
小さな光が、ふわりと揺れた。
嬉しそうだった。
◇
しばらくお供えをして、ユウトたちは果物を食べ出す。
「ここで模様のある石を見つけたんだよ」
ユウトは例の場所を指差した。
「へぇ、すげえな」
ガンツは真面目な顔で見る。
「今度、魔法士のカメ先生が来るんだって」
「魔法士?すげーな、それ。一緒に行っていいか?」
「ええ、いいわよ。多い方が楽しそうだし。でもカメ先生いつ来るか分からないからこうやって早く来ますようにって祈ってるの」
「そっかぁ。早く来るといいな。でもこの秘密基地ホントいい場所だな。オレも気に入ったよ」
ユウトは嬉しくなった。
「えへへ」
秘密基地を褒められるのは、なんだかくすぐったかった。
◇
いっぱい遊んだ。
洞窟を探検した。
木の根っこに座った。
風を感じた。
そして。
「ふぁぁ」
ガンツがあくびした。
「眠いな」
「分かります」
ミックもうとうと。
「ぼくもです」
ポルンも目をこする。
「お昼寝する?」
リサが聞いた。
「するー!」
ユウトが元気よく手を上げた。
「じゃあ」
ユウトは立ち上がる。
「おふとん!」
ぽふんっ。
大きなおふとんが現れた。
「おぉぉ!」
「やっぱりすごいですね!」
ミックが目を輝かせる。
「便利だなぁ」
ガンツも感心していた。
ポルンは。
すでに端っこへ寝転がっていた。
「はやっ!?」
リサが笑う。
「ここ気持ちいいです」
ポルンは満足そうだった。
◇
ごろん。
ごろん。
ごろん。
ごろん。
ごろん。
わんわんも、ぺたん。
風が吹く。
葉っぱが揺れる。
セミの声が遠い。
大きな木は静かにみんなを見守っていた。
少し離れた枝の上では。
小さな光も、嬉しそうに揺れている。
◇
「すぅ……」
「すやぁ……」
「わふぅ」
五人と一匹の昼寝は、とても気持ちよかった。
そして誰も知らないこの場所の。
少し遠くの木の上。
小さな光が、ふわりと揺れた。
すると。
果物がひとつ転がる。
その光は右に揺れ、左に揺れ離れ楽しそうだ。
今はまだ。
夏の風と木漏れ日の中。
みんな、のんびり眠っていた。




