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チート転生-おふとんで『うにうに』するだけで今日も世界は平和だった-  作者: あーのるど
第二章 夏はアクティブ

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第四十話 強敵!蚊、ぶーん、また来た!




 ぶぅぅぅぅぅん……。




「……また来た」




 夜。

 ユウトが眠ろうとするとまたやって来た。

 あのいやーな音。

 ユウトはタオルケットを頭までかぶって丸くなる。


 しーん。


 ……いったかな?


 そっと顔を出した、その瞬間。


 ぶぅぅぅぅぅん。


「やっぱりまた来たぁ……」


 耳元をかすめる。


「ひゃっ、もぅいやだなぁ」


 ユウトは、またおふとんへ潜り込んだ。


 夏になると現れる。小さくて。すばしっこくて。そしてかゆくなる。


 蚊。苦手なあいつがまたやって来た!!


   ◇


 朝。


「かゆぃ」


 ユウトは腕を掻きながら起きた。

 ぷくっと赤くなっている。

 かゆい。

 とても、かゆい。

 ぽりぽりぽり。


「あらあら、また刺されたのね」


 お母さんが薬草を塗ってくれる。

 ひんやりして気持ちいい。


「なんでぼくばっかりぃ……」


 ユウトは少しだけ不満そうだった。


「ユウトがおいしいのかもね」


「やだぁ」


 お母さんは、くすくす笑った。


   ◇


 その日の夜。

 ボクはおふとんの中で考えていた。


 うーん、どうすれば刺されないのかな?


 逃げてもやって来る。

 隠れてもやって来る。

 とてもすばしっこくて強い。


 もう刺されたくなかった。


「むむむ……うーん」


 腕を組む。

 でも良い考えは出てこない。


 その時。


 ぶぅぅぅぅぅん。


「また来たぁ!!」


 ユウトは思わず叫んだ。

 暗い部屋の中。

 どこを飛んでるか分からない。


 でも、そのぶーんという音が。

 自信満々に部屋を飛んでいるように感じてまるで、


『今日も来たよ』


 と言っているみたいだった。


「うぅぅ……」


 眠い。

 でも刺されたくない。

 どうしよう。

 ぎゅっと、おふとんを握った。


 「助けてー、おふとん!!」


 その瞬間だった。


 頭の中で音が鳴る。

 チャラララッラッラッララーン。


《おふとん防御スキル・蚊帳(かや)を覚えました》


「へっ?」


 ユウトは、ぱちぱち瞬きをした。


「かや?」


 聞いたことがない。


 でも。


 なんだか使えそうな気がする。


「おふとん召喚!それと、えーと、かやも!」


 ぽふんっ。

 すると。

 おふとんが、ふわっと光った。


「おぉ?」


 おふとんの周りに、薄い網目の光の幕が広がっていく。

 おふとんは、まるで透明な小さなお城みたいになった。


 触ろうと手をのばすけど、うまく触れない。

 でもやさしい光に包まれているのは分かった。


   ◇


 ぶぅぅぅん。


 蚊が飛んでくる。


 そして。

 こつん。


「おぉ!」


 入れない。


 ぶぅぅぅん。


 またしばらくして来た。


 こつん。

 やっぱり入れない。


 蚊は、おふとんの周りをぐるぐる飛び回った。


 でも。

 中には入れなかった。


「すごい!!」


 ユウトは目をきらきらさせた。


「これなら刺されない!」


 さらに。

 腕のかゆいところが、じんわり光る。


「あれ?」


 みるみる赤みが消えていく。


「かゆくない!」


 すっかり治っていた。


「すごぉーい!!」


   ◇


 そこへ。


「どうしたの?」


 お母さんが様子を見に来た。


「みてみて!」


 ユウトは得意げだった。

 お母さんが光の幕を見て目を丸くする。


「まぁ、コレどうしたの?」


「蚊が入れないんだよ!」


「本当に!?」


 蚊は外を飛んでいる。


 でも入れない。


 ぶぅぅぅん。

 ぶぅぅぅん。

 どこか困っているようにも見えた。


「なんかしょんぼりしてるねぇ」


「そうだねぇ」


 お母さんは笑った。


「でも、ユウトも眠らなきゃいけないからね」


「うん」


 それは大事だった。


   ◇


 ユウトは、おふとんの中へもぐり込む。

 あったかい。

 安心。

 外ではまだ蚊が飛んでいる。

 でも。

 もう怖くなかった。


「えへへ」


 よかった。今日は刺されない。明日も刺されない。これでもうぐっすり眠れる。


 強敵だったけど。

 ちゃんと勝てた。


「おやすみ、ユウト」


 お母さんの優しい声が聞こえる。


「おやすみなさーい」


 うにうに。

 おふとんの中で丸くなる。


 ぶぅぅぅん。

 羽音は聞こえる。

 でも、もう届かない。

 夏の夜。

 ユウトは安心して目を閉じた。

 そして、あっという間に夢の中へ旅立っていった。

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