第三十九話 ユウトとおさんぽ
※わんわん視点のお話です。
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「わふぅ」
あつい。
とってもあつい。
みーんみんみんみんっ!!
セミさんたちが、いっしょうけんめい鳴いている。
でも。
「わんわーん!」
その時。
聞きなれた声がした。
「わふっ!?」
ぴこんっ!
耳が立つ。
ユウトだ。帽子をかぶっている。
「おさんぽいこー!」
「わふぅーっ!!」
だだだだっ!
ぼくは飛び起きた。
暑いのなんて忘れた。
◇
てってってってっ。
てってってってっ。
村の道を歩く。
草のにおい。
土のにおい。
夏のにおい。
「きょうはねー」
ユウトが楽しそうに話している。
「そうげんまでいくよ!」
「わふっ!」
知ってる。
風がいっぱい吹く場所。
いっぱい走れる場所。
大好きな場所だ。
◇
やがて。
草原が見えてきた。
「わぁーっ!!」
ユウトが走る。
「わふぅぅぅーっ!!」
わんわんも走る。
だだだだだだだっ!!
夏の草は高かった。
わんわんの体が半分隠れるくらい。
風が吹くたび。
ざわわわっ。
ざわわわっ。
草の海みたいだった。
◇
「わんわーん!」
ユウトが木の枝を拾う。
「それーっ!」
ひゅーんっ!
枝が飛んだ。
「わふっ!!」
だだだだだっ!!
追いかける。
風を切る。
草をかき分ける。
枝はどこだ。
どこだ。
あった!
「わふぅ!」
ぱくっ。
くわえた。
みつけた。
ユウトのところへ戻ろう。
◇
その時。
「わふ?」
ふと。
地面で何かが動いた。
小さい。
とっても小さい。
黒い点。
「わふ?」
くんくん。
ありさんだった。
しかも一匹じゃない。
いっぱい。
ずらーっと並んでいる。
「わふぅ?」
どこへ行くんだろう。
わんわんは枝をくわえたまま後ろをついていった。
◇
てくてく。
てくてく。
ありさんたちは歩いている。
葉っぱを持っている子もいた。
草の種を持っている子もいた。
みんな忙しそうだ。
「わふぅ」
すごい。
わんわんよりずっと小さいのに。
みんな働いている。
てくてく。
てくてく。
ありさんの道は続いていた。
◇
やがて。
「わふっ!」
みつけた。
草の根元に小さな穴。
ありさんたちは、その中へ入っていく。
次から次へ。
てくてく。
てくてく。
「わふぅー」
おうちだ。
ありさんのおうち。
わんわんは穴をじーっと見つめた。
みんな頑張っている。
出たり。
入ったり。
忙しそうだ。
◇
わんわんは前足を出した。
でも。
「……わふ」
止めた。
踏んだら大変だ。
おうちが壊れてしまう。
だから。
そっと座った。
見るだけ。
じーっ。
ありさんたちは、変わらず働いていた。
◇
「わんわーん!」
ユウトの声が聞こえた。
「わふっ!」
尻尾がぶんぶん動く。
ユウトが草をかき分けながらやってくる。
「どうしたのー?」
「わふっ!」
こっち。
こっち。
わんわんは鼻先で地面を示した。
「ん?」
ユウトがしゃがむ。
「あっ」
目が丸くなった。
「ありさんのおうちだ!」
「わふぅ♪」
そう。
みつけた。
ぼくがみつけた。
◇
「すごいねぇ」
なでなで。
ユウトが頭を撫でてくれる。
「わんわんが見つけたの?」
「わふっ!」
しっぽぶんぶん。
胸を張る。
ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ。
得意だった。
「ありさん、がんばってるねぇ」
「わふぅ」
うん。
頑張ってた。
小さいのに。
いっぱい働いてた。
だから。
壊しちゃだめだ。
わんわんは、なんとなくそう思った。
◇
それから。
またいっぱい走った。
風を追いかけた。
草の中を駆け回った。
でも。
帰る前に。
もう一度だけ。
ありさんのおうちを見に行った。
みんな、まだ働いていた。
「わふぅ」
なんだか嬉しかった。
◇
帰り道。
てくてく。
てくてく。
ユウトと並んで歩く。
夕方の風は少し涼しい。
草のにおい。
土のにおい。
夏のにおい。
「今日はいっぱい遊んだねぇ」
「わふっ!」
そして。
ありさんのおうちも見つけた。
なんだか今日は。
いつもより少しだけ。
大人になった気がした。
「わふぅ♪」




