第三十六話 おてがみ
昼すぎ。
ユウトは、縁側でタオルケットをもって、ごろーんとしていた。
「むにゃむにゃ」
ひゅーっと涼しい風が通り、きもちいい。
でも、汗で髪はぺたーん。
やっぱり夏だった。
◇
その時。
ぱたぱたぱたっ。
「こんにちはー」
空から、大きな影が降りてきた。
「むにゃむにゃ……んっ、おはよぉ?」
ぼくは眠気まなこでぼーとしてる。
白い羽。大きなくちばし。大きな黒いカバン。白いとりさんだ。
「んー、だれぇ?」
「はははっ、起こしたかな?申し訳ないね。私はペリカーン。よろしく。町からお手紙を届けにきたんだ。お父さんかお母さんはいるかい?」
ペリカーンさんは器用に頭を下げる。
毛はふわっとして触ったら気持ちよさそうだ。
「んーと、今はねぇ、いないよぉ」
「ならこのお手紙をお父さんかお母さんに渡してもらえるかな?町の魔法士であるカメ先生からユウトくん宛てにお手紙を預かってきたんだ。きっと君宛だろ!?」
とボクにパチリとウィンクした。
「ぼくあてぇ!?」
ユウトは、ぱちぱち瞬きした。
「ほんと!?」
「あぁ、ホントだとも。しかもカメ先生からだよ」
ペリカーンさんは、カバンから一通のきれいな封筒を取り出した。
封筒には、きれいな文字が書かれている。読めないけど。
「わーい、おてがみだー!」
ユウトの顔が、ぱぁっと明るくなった。
◇
サルーキさんに石を渡してからどうなったのか気になっていた。
「サルーキさん早くこないかなー」
お母さんの手伝いをしながらよくそう言っていた。
それが、まさかのてがみ!!しかもまほうしせんせいからちょくせつ!!
ふふふんっと嬉しくて空を飛べそうな気がした。
「あっ、リサも呼ばなきゃ」
◇
リサと一緒におうちに戻ると、もうお父さんもお母さんも帰ってきてた。
「おとうさーん!」
ユウトは、お父さんのところへ駆けていく。
「お手紙きたー!!」
「おっと」
お父さんが、びっくりした顔をした。
「そんなに慌てると転ぶぞ」
「まほうしせんせいから!!」
「おぉ」
お父さんは、少し笑った。
◇
「なんて書いてるのー!?」
リサも、目をきらきらさせている。
「おてがみ読んで!」
「あぁ、いいよー。お手紙ちょーだい」
ユウトは、封筒をぎゅっと抱えた。
お父さんは、くすっと笑いながら手を差し出す。
「じゃあ、読むよ」
かさっ。
お父さんは、丁寧に封筒を開いた。
「うん!!」
みんなで縁側へ座る。
夏の風が、ふわっと吹いた。
◇
「えーっと、なになに」
ユウトとリサは、ぴたっと静かになる。
「“ユウトくんへ”」
ボクはリサと思わず顔を見合せて、にへらっと笑った。
「“先日は、不思議な石を見せてくれてありがとうございました”」
ユウトは、なんだか嬉しくて背筋がぴーんとなった。
◇
「“サルーキさんから、確かに石を受け取りました”」
「サルーキさん、ちゃんと渡してくれたんだねぇ」
リサが、ほっとしたように笑う。
「“石に刻まれていた模様を、わたしなりに調べてみました”」
お父さんは、ゆっくり読んでいく。
「“その結果――あの石は、古代遺跡でよくみられる模様だと分かりました”」
「いせき!」
リサが、ぱちっと目を開いた。
「おぉー」
ユウトも、なんだかすごそうだと思った。
◇
「“わたしは普段、魔法の紙を作るお仕事をしていますが、古代遺跡の研究もしています”」
「まほうといせき?」
「忙しそうだねぇ」
リサが言う。
お父さんは、はははっと笑った。
「先生ってのは、色々やるんだろうな」
◇
「“ですが、正直に言えば――石ひとつだけでは、よく分かりませんでした”」
「せんせいでも?」
ユウトは、びっくりした。
「難しいんだなぁ」
お父さんも、少し感心したように頷く。
「“ですので、できれば石を見つけた場所を、直接見てみたいと思っています”」
「おぉー!」
ユウトの目が、きらきらする。
◇
「“ただ、わたしは歩くのが少し遅いので、村へ着くまで時間がかかりそうです”」
一瞬、しーん。
それから。
「あははははっ!!」
リサが、ころころ笑った。
「カメ先生だもんねー!」
「たしかに遅そうだ」
お父さんまで笑っている。
ユウトも、なんだか想像してしまった。
のそのそ。のそのそ。
お母さんが、台所からくすっと笑った。
「いつかなぁ」
「おっと、まだ続きがあるぞ」
ボクとリサはお父さんをぱっと見る。
◇
「“もしよければ、その時は一緒に遺跡を探してくれませんか?”」
「いっしょに!?」
ユウトは、ぱぁっと顔を輝かせた。
「ぼくもいくの!?」
「みたいだなぁ」
お父さんが笑う。
「やったぁ!!」
ユウトは、思わず立ち上がった。
でも。
「まだ行くって決まったわけじゃないぞ?」
「えーっ」
「あははっ」
リサが笑う。
◇
「ひみつきみのちかくかなー?」
ぼくはわくわくしてる。
「そうかも!」
「いせきって、どんなところかなぁ」
リサが空を見上げる。
「もしかしたら宝物もあるかも!?」
「もしかしたら見たことのない動物に会えるかも!?」
考えれば考えるほどわくわくする。
森の奥のどこかに。もしかしたら。
なんだかボクはとってもわくわくしてきた。
◇
みーんみんみんみん……。
セミの声が、夏空へ響いている。
ユウトは、手紙を大事そうに抱えた。
まだ見たことのない遺跡。まだ会っていないカメ先生。
冒険が始まる予感がした。




