第三十五話 夏の川遊び
じりじり。
おひさまは今日も元気だった。
「あつい」
ユウトは、道の真ん中で座りたくなる。でも道もあつい。日陰がほしい。
みーんみんみんみんっ!!
遠くのセミは全力だ。
「こんな日は川だろー!!」
ガンツが木の棒を振り回しながら叫んだ。
「おー、いいねー!!行こうぜ」
ミックとポルンも元気いっぱいだ。
「わふっ!」
わんわんまで、ぴょんぴょん跳ねている。
◇
村の近くの川。
春にも遊びに来た場所だけど、今日は全然違った。
「うわぁぁっ!!」
ユウトは目をきらきらさせる。
夏の川はきらきら光っていた。
せせらぎが耳まで楽しい。
おひさまの光が水の上で踊っている。
草は青々していて。大きな入道雲はかき氷みたいに美味しそうだ。
「オレ、いっちばーん!!」
ガンツは、もう川へ飛び込んでいた。
ばしゃぁぁぁんっ!!
「ぎゃははははっ!!」
「つめてぇー!!」
ユウトも、靴を脱いで急いで川へ入る。
ちゃぷん。
「ひゃぁっ!?」
冷たい。
でも。すごく気持ちいい。
「たのしいぃ!」
足の周りを、水がさらさら流れていく。
暑さが一気に消えていくみたいだった。
◇
「おーい、こっち来てみろー。いいもん見つけたぞー!!」
ガンツが大きな石をひっくり返した。
すると。
しゃしゃっ!!
「あっ!!」
小さなカニがしゃかしゃかと横に逃げる。
「サワガニー!!」
ポルンが、慌てて捕まえようとする。
「まてまてまてー!!」
ばしゃばしゃっ!!
でも。
つるっ。
「うわぁっ!?」
ポルンは、そのままおしりから川へ落ちた。
ざばぁっ!!
「ぎゃははははっ!!」
みんな、大笑いする。
「あははっ、ポルン転んでるー!」
「いてて、すべったー」
ポルンは、びしょ濡れだけど笑って楽しそうだ。
◇
ユウトは、そーっと石の隙間をのぞく。
「いるかなぁ」
水は、透き通っていた。
小さい魚たちが、すいすい泳いでいる。
「あっ!」
ユウトは、ぱっと手を伸ばした。
しかし。
するっ。
「にげたー!」
魚は、一瞬で逃げていった。
「魚はむずいぞー」
ミックが言う。
「速いからなー。みんなで周りに石を積んで逃げないようにしようぜ」
「おーい、手伝ってー」
ユウトは真剣な顔になる。
「つかまえるぞー!」
がんばったが、お魚さんはすばしっこかった。
◇
しばらくすると。
「とったぁぁぁ!!」
ガンツが、両手を上げる。
その手の中には、小さなサワガニがいた。
「おぉー!!」
「すげぇ!!」
サワガニは、しゃかしゃか足を動かしている。
「はさみちっちゃ!」
「かわいい」
ユウトは、じーっと見つめた。ちょっとだけ触ろうとしたら
「いてててて、はなしてー!?」
指を挟まれぶんぶん腕をふる。
「ぎゃははははっ!!」
「挟まれてるー!!」
「あはははっ!」
ユウトは痛かったけどみんな笑っててなんだか楽しかった。
◇
お昼になるころには。
みんな、びしょ濡れだった。
「つかれたー」
ガンツが、大きな石の上へ寝転がる。
「おなかすいた」
ポルンのお腹が、ぐぅぅと鳴った。
「わふっ」
わんわんも、石の上でべろーんとしている。
川の風は、ひんやりして気持ちよかった。
チョロチョロチョロ。
ピヨピヨピヨ。
チョロチョロチョロ。
水の音や小鳥さんの声。
空は真っ青ですごく高かった。
◇
「なぁ」
ミックが、川を見ながら言った。
「春に来た時とちがうなー」
「うん、全然ちがった!」
ユウトは、大きくうなずく。
春は春で楽しかったけど夏は、
光っていて。にぎやかで。なんだかとっても元気だった。
「夏の川って感じ!」
「わかる!」
ガンツも笑った。
◇
その時。
ぽとん。
「あれ?」
ユウトの頭に何か落ちてきた。水滴だ。
見上げると。
木の枝に小さなサワガニが乗っていた。
「なんでそんなとこいるの!?」
みんなぽかんとする。
サワガニもぽかんとしていた。
そして。
ぽちゃん。
「あっ」
カニはそのまま川へ落ちて逃げていった。
「ぎゃははははっ!!」
またみんな、大笑いした。
◇
帰るころには。
空はオレンジ色になっていた。
服は乾きかけで、ぱりぱりしている。
でも。
足はまだ冷たくて気持ちよかった。
「また来ようなー!」
「うんっ!!」
ユウトは、大きくうなずく。
夏の川は。
暑いのに涼しくて。
疲れるのに楽しくて。
なんだかずっと遊んでいたくなる場所だった。
みんみんみん。
セミの声が、夕焼けの空へ響いていた。




