第三十話 強敵!!蚊、ぶーん
ぶぅぅぅぅぅん……。
「…………」
夜だった。
ユウトは、おふとんの中でぴくっと目を開ける。
しーん。
静かな部屋。
でも。
ぶぅぅぅぅぅん。
「……なんかいる」
ユウトは、ゆっくり起き上がった。
夏の夜。窓は少し開いている。
そこから入ってきたのだ。
強敵が。
◇
ぶぅぅぅぅん。
「どこぉ」
ユウトは、きょろきょろする。
暗い部屋。よく見えない。
その時。
ぷすっ。
「ひゃっ!?」
足が、ちくっとした。
「かっ!!」
ユウトは、ばっと足を見る。
ぷくぅ。
もう赤くなっている。
「うわぁぁぁ……」
かゆい。
とても、かゆい。
ぽりぽりぽり。
すると。
ぶぅぅぅぅぅん。
「またきたぁ!!」
夜の襲撃はとまらない!!
◇
翌朝。
「ねむい……」
ユウトは、ふらふらしていた。
「どうしたの?」
お母さんが笑う。
「いっぱいさされた。かゆい」
「あらまぁ、蚊にいっぱい刺されたわねー」
お母さんは、くすっと笑った。
「うん、かゆいぃ」
「うんうん、かゆいよねー。それじゃ、薬草を塗ってあげるわね」
「うん、ぬってー」
ユウトは、腕を見せる。
ぷくっ。
っとなってるところに、お母さんが、薬をぬってくれた。少しかゆみがなくなった気がするけど、じーっと見てるとなぜかまたかゆくなる。
「わふっ」
わんわんが前足が顔をこすってる。よく見るとわんわんの鼻にも小さいぷくっとした跡がある。
「わんわんもやられたの!?」
「くぅーん」
なんだか悲しそうだった。
「よし、わんわん、おさんぽ行こ!」
「わふっ!」
◇
おさんぽに行くと広場の方からガンツたちの声が聞こえる。
「くそー、かゆいなー」
ガンツは、腕をぼりぼり掻いていた。
「ガンツもさされたんだね。ボクも昨日、さされたよ」
「ユウトはどこさされた?オレはほら見ろこれ!」
「うわぁ」
腕が、ぷくぷくだ。
「おれも両足とも三か所ずつ!!」
ポルンが、足を見せてくる。いっぱい掻いた後がある。
「お前、刺されすぎだろ!」
ミックは笑った。
でも。
「……お前もほっぺ刺されてるぞ」
「えっ」
ミックのほっぺも、ぷくっと赤かった。
「ぎゃははははっ!!」
みんな、大笑いする。
◇
「よし」
ミックが、えらそうに言った。
「今日は蚊対策だ」
「おぉー!!」
「どうするんだ?」
「さっきねー、お母さんに薬を塗ってもらったらかゆくなくなったよ」
「おっ、ユウト。良いこというなぁ。薬かぁ」
ミックに褒められ、なんか嬉しい。
「薬草っていってたから、森にある草なのかな?」
「おぉー、薬草かぁ。誰か知ってるか!?」
ガンツが聞くがボクもポルンも首をぶんぶんと横にふる。
「あっ、オレ分かるかも!?」
ミックが何か思いついたみたいだ。
「たぶん、あれだな」
ニヤリと笑う
◇
みんなで、森の入口へ向かう。
外は暑いが森の木陰に入ると涼しい。
みーんみんみんみんっ!!
ワシワシワシワシ!!
森の中はセミさんの大合唱が響いてる。
「わふっ!」
わんわんは楽しそうだ。
「かゆいー」
ポルンは、ずっと掻いていた。
「掻くともっと痒くなるぞ」
ミックが言う。
「でも、かゆいんだよー。早くミック薬草を見つけてくれよー。ところでどんな草なんだ?」
「匂いがすーっとする草だ」
「匂いかぁ。ミックは、なんでも知ってるなー」
ガンツがほめる。
「へへっ、こないだお母ちゃんが言ってたんだ」
ミックは得意気に言う。
「よし、早く薬草を探そうぜ!」
「おぉー!」
◇
「きっと、これだ!」
ミックが、草を指さす。
丸い葉っぱだった。
「ほんとに効くの?」
「んー、しらねー!」
「しらんのかよ!!」
ガンツがつっこんだ。
でも。
葉っぱを潰すと、すーっとした匂いがした。
「なんかへんな匂い!」
「よし、ぬってみるぞー!」
ポルンが刺された足にぺたぺた塗る。
みんな、腕や足へ塗っていく。
「うぇぇ」
ポルンが、変な顔をした。
ボクはわんわん塗ってあげようとしたが、わんわんは逃げた。
「においがいやだったかな」
でもみんなは、すーっとして、かゆみが引いたーって叫んでる。効果はあるようだ。
「よし、これでもう蚊なんて怖くないぞ!」
ガンツが、ぐっと拳を握る。
◇
その時。
ぶぅぅぅぅぅん。
「!!」
みんな、固まる。
いた。
蚊だ。
「きたぁぁぁ!!」
ガンツが、バチンっと叩く。
空振り。
「はやっ!?」
ぶぅぅぅぅん。
今度は、ポルンの周りを飛び始めた。
「やだぁぁぁ!!」
ぶんぶん手を振る。
「こっちくんなー!!」
ばたばたばたっ。
その勢いで。
ずるっ。
「わぁっ!?」
ポルンは、草むらへ転がった。
「ぎゃははははっ!!」
ユウトたちは、お腹を抱えて笑う。
◇
結局。
「また刺された……」
ガンツが、しょんぼりしていた。
「ボクも……」
ユウトも、腕を掻く。
「か、つよい」
ポルンは、かゆいかゆいと言った。
「わふぅ」
わんわんまで、しょんぼりしている。
◇
夕方。
空が、赤くなっていた。
昼より少し涼しい風が吹いている。
りりりりり。りりりりり。
夜の虫の声が聞こえ始めていた。
「じゃーなー!」
「またねー!」
ガンツたちは、手を振って帰っていく。
ユウトも、手をぶんぶん振った。
◇
夜。
おふろへ入って。
ごはんを食べて。
ぽふん。
ユウトは、おふとんへ倒れ込む。
「あつかったぁ……」
今日はいっぱい遊んだ。
いっぱい笑った。
でも。
かゆい。
ぽりぽり。
「うぅ……」
その時。
ぶぅぅぅぅぅん。
「!!」
ユウトは、がばっと起き上がる。
「またきたぁぁぁ!!」
夏の戦いは、まだ終わらなかった。




