第二十四話 うにうに日和
「ユウトー!早く行こー!」
「待って待ってぇー!」
今日もぽかぽか陽気だった。でも、春の終わりが近いからか、少しだけ夏みたいな暑さを感じる。
さわさわ吹く風が、とても気持ちよかった。
「今日は秘密基地に行くよ!」
「うんっ!」
村を出て、森へ入る。木陰から差し込む光がきらきら揺れていて、森の中は少しだけ涼しかった。
今日は、あの大きな木のところで、ゆっくりお昼寝したいなぁ。
絶対に気持ちいい。
ユウトは、なんとなくそう思っていた。
「わふっ!」
わんわんも、しっぽをぶんぶん振っている。
「わんわんも来る?」
「わふっ!」
二人と一匹は、てくてく森の奥へ進んでいった。
◇
森の中は、葉っぱのにおいでいっぱいだった。
ぴぃぴぃぴぃ。ちゅんちゅん。
いろんな小鳥さんの声が聞こえる。
さらさら揺れる葉っぱ。木漏れ日が、地面へきらきら落ちていた。
「わぁ……」
リサが空を見上げる。
「今日はなんか、森がきらきらしてるね」
「うん。なんか冒険っぽい!」
「わふっ!」
わんわんが、先を走る。
「あっ、待ってー!」
二人も笑いながら追いかけた。
◇
そして。
「ついたぁー!」
大きな木が目印のボクたちの秘密基地。
太くて、古くて、とても大きな木。枝は空いっぱいに広がっていて、葉っぱが強い日差しをやさしく隠している。
「やっぱりここ好きー」
リサが、ぽふっと木の根元へ座る。
「うん、ボクも」
「涼しいね」
「ほんとだね」
うふふっと笑い合う。
その時。
ひゅうう。
風が吹いた。
さらさらさらー。
葉っぱが揺れる。
まるで、大きな木が二人を歓迎してくれてるみたいだった。
木漏れ日が、ゆらゆら揺れている。
「すごくお昼寝日和だ」
ユウトは、大きく伸びをする。
「ふぁぁ、もう眠くなってきた」
「えー!?まだ来たばっかりだよ?」
「だってぽかぽかだもん」
その時。
「おふとん」
ぼふんっ!
「えー、もうおふとん出したのー?早いよー」
巨大おふとん召喚。
ふわふわのおふとんが、秘密基地の中に広がった。
「いいから、いいから、今日はここでゆっくりお昼寝しようよ」
「もう仕方ないなぁ。今日だけだからね。お昼寝終わったら冒険ごっこするよ」
「うん、そうしよう」
ぽふっ。
リサが飛び込む。
「ふかふか〜!」
「わふぅ〜」
わんわんも、おふとんの上でくるんっと丸くなった。
◇
さらさらさら。
やさしい風が吹く。
ぴぃぴぃぴぃ。ちゅんちゅん。
遠くで鳴く小鳥さん。
「きもちいいねぇ」
「うん」
木漏れ日が、ゆらゆら揺れている。
「…………」
「…………」
うとうと。
うとうと。
「すぅすぅ」
ユウトが眠る。
「すぅすぅ」
リサも眠る。
「わふぅ」
わんわんも眠る。
みんなが眠っていると。
しゅたっ。
白い影が、おふとんへ飛び乗った。
「にゃーん」
しろにゃーだ。
しろにゃーは、丸くなって眠っているわんわんを見る。
「にゃ」
ぽすっ。
その隣へ座った。
すると、さらに。
ぴょこん。
草むらから、小さなうさぎが現れる。
「ぴぅ」
きょろきょろ。
そして、ぴょんっとおふとんへ飛び乗った。
ごそごそ。ふかふかのおふとんへ潜り込む。
「ぴぅ〜」
とっても気持ちよさそうだった。
木漏れ日が揺れる。風が吹く。
いつの間にか。
秘密基地は、小さな動物たちのお昼寝場所になっていた。
◇
ふわり。
その時だった。
葉っぱの奥で、淡い光が揺れた。
小さな光。
花びらみたいに、ふわふわしている。
それは、木の枝の間をくるりと飛ぶ。
しろにゃーが、ぴくっと耳を動かした。
「にゃ」
うさぎも、そっちを見る。
わんわんだけが、うっすら目を開けた。
「わふ?」
光は、ふわふわ森の奥へ飛んでいく。
まるで。
『おいで』
そう言っているみたいに。
◇
「んぅ」
最初に起きたのは、ユウトだった。
「あれ?」
けっこう寝ちゃったみたいだ。
ん?と、足元がゴソゴソしたのでおふとんの中を覗いてみると
「わっ、しろにゃー!」
「にゃー」
「うさぎさんもいる!」
「ぴぅ」
「わぁぁ!」
リサも起きた。
「なんでこんなに集まってるの!?」
「おふとん気持ちいいからかなぁ」
「わふっ!」
わんわんもしっぽを振る。
その時。しろにゃーがすっと立ち上がった。
「にゃ」
そして。
とことこと歩き出す。
「あれ?」
「どこ行くのかな」
さらに、うさぎもぴょんぴょんついていく。
わんわんまで。
「わふっ!」
「あっ、待ってぇ!」
二人は、慌てて追いかけた。
◇
森の奥。
そこは、あまり来たことのない場所だった。
「こんなとこあったんだ……」
草がいっぱい生えている。木の枝も多くて、少し暗い。
でも。
しろにゃーは、迷わず進んでいく。
「にゃー」
うさぎも、ぴょんぴょん。
「わふっ!」
わんわんも元気いっぱいだった。
「なんか案内されてるみたい!」
「冒険だぁ!」
二人は、わくわくしていた。
◇
そして。
「あっ」
リサが立ち止まる。
「なにこれ?」
草の向こう。
そこに、石が見えていた。
「ほんとだ」
大きな石。
でも、ただの石じゃない。
「なんか四角い?」
土に埋まっているけど、まっすぐだった。
「自然の石じゃないみたい」
「おぉー」
ユウトは、ぺたんっとしゃがみこむ。
つるつるしていた。
「変な石だねぇ」
その時。
ふわりと小さな光が揺れた。
「……?」
リサが顔を上げる。
「今、なんか光らなかった?」
「え?」
でも。
ユウトには見えなかった。
「気のせいかなぁ」
光は、すぐ消えてしまった。
◇
「これ、掘ったらなんか出てくるかな?」
「宝物!?」
「かも!」
二人は、近くの木の枝を使って土を掘り始める。
「んしょ、んしょ」
「かたーい!」
でも。
「うーん、枝じゃ無理だね」
「うん、そーだね。」
なかなか掘れない。
「つかれたぁ」
その時。
ふわっ。
おふとんが、するすると近くまで寄ってきた。
「あっ」
「おふとん来た!」
二人は、そのままぽふっと座り込む。
「ふかふか」
「楽ちんだねぇ」
少し休憩してから、また掘る。
すると。
「わっ!」
リサが、何かを見つけた。
「これっ!」
土の中。
そこには、模様が刻まれた石が埋まっていた。
「なにこれぇ」
ぐるぐる。線みたいな模様。
「なんか、かっこいいね!」
「うん、すごくかっこいいね!」
二人は、目をきらきらさせる。
なんだか。
すごいものを見つけた気がした。
◇
その時だった。
さらさら。
大きな木の葉っぱが揺れる。
風が吹く。
ふわり。
今度は、二人とも見えた。
「あっ……!」
小さな光。
花びらみたいに、淡く光っている。
「な、なにあれ……!」
光は、石のまわりをくるくる飛ぶ。
楽しそうに。
そして。
森のもっと奥へ、ふわっと飛んでいった。
「消えた……」
「今の、なに?」
どきどきする。
でも、怖くはなかった。
なんだか。
『こっちだよ』
そう言われた気がした。
◇
「ね、これ、お父さんたちに教えたほうがいいよね!?」
「うん、そうだね!」
二人は顔を見合わせる。
「もしかしたら大発見かも!」
「わふっ!」
「にゃー」
「ぴぅ!」
動物たちまで、なんだか嬉しそうだった。
◇
帰り道。
さらさらと風が森を揺らしている。
「なんだったんだろうねぇ」
「ねー」
ユウトは、少しだけ後ろを振り返った。
大きな木。
秘密基地。
その向こうの森。
葉っぱが、さらさら揺れている。
そして、一瞬だけ。
木漏れ日の奥で、小さな光が揺れた気がした。
「……?」
でも、今はもう見えない。
「どうしたの?」
「ううん」
ユウトは、にこっと笑った。
「また行こうね!」
「うんっ!」
春の風が、二人の背中をやさしく押した。
森の奥には、まだまだ冒険がたくさん詰まってそうだった。
作者のあーのるどです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!ここで第1章完結です。
明日からは第2章夏編がスタートします。
ユウトたちがのんびりとした世界で過ごす暑い夏をお楽しみ!
また皆様の声がすごく力になります!
面白かったよの一言が、すごく力になりますので、感想や評価等お待ちしてます!
明日25話もいつも通り朝7時10分更新予定です。お楽しみに!




