第二十三話 晩ごはんは、シチュー
「ユウトー、お手伝いするー?」
「するー!」
夕方だった。お外は、少しだけオレンジ色になっている。
「今日はシチューにするわよー」
「わーい、しちゅー!やったぁ」
ユウトの目が、ぱぁっと輝いた。
「やったぁ!」
「わふっ!」
わんわんまで、しっぽをぶんぶん振る。
「まだ食べられないわよー?」
「わふぅ」
ちょっとしょんぼりしていた。
◇
台所には、いいにおいが広がっていた。
「今日はねぇ、畑のお野菜いっぱい入れるの」
「おぉー」
テーブルの上には、にんじん。じゃがいも。玉ねぎ。それから、大きな白い根っこ。
「これなぁに?」
「カブよー」
「かぶ!」
まんまるだった。
「ユウトは、じゃがいも洗ってくれる?」
「うん!」
ごしごし。水で洗う。
「つるつるになった!」
「上手上手」
なんだか嬉しかった。
◇
「次は、皮むきね」
「ボクもやる!」
「んー、それじゃあ、危ないから、お母さんと一緒にね」
しゅっ。しゅっ。お母さんが、器用に皮をむいていく。
「おぉー」
「ユウトは、ここ持って」
「うん!」
そーっと持つ。
「危ないから、指ちょっきんしないようにね」
「わかった!」
ちょっとどきどきした。
でも。
するっ。
「あっ、むけた!」
「すごーい!」
ユウトは、なんだか職人みたいな顔になった。
◇
「わふっ!」
「あっ、わんわん!」
いつの間にか、わんわんが足元にいた。
くんくん。 くんくん。
「いいにおいする?」
「わふぅ〜」
しっぽ、ぱたぱた。
「まだだよー」
「わふ」
分かってるのか、分かってないのか。おすわりして待っていた。
◇
ぐつぐつ。
「わぁ……」
大きなお鍋の中で、シチューが煮えている。
白い湯気。お野菜のにおい。お肉のにおい。
「おなかすいたぁ……」
「もう少し待ってねぇ」
お母さんは、木のスプーンでゆっくり混ぜる。
とろーり。
「おいしそう」
見てるだけで、ぽかぽかしてきた。
◇
「ただいまー」
「あっ、お父さん!」
玄関から、お父さんの声が聞こえた。
「おぉ、今日はシチューか!」
「ユウトも手伝ったんだよ!」
「ほんとかー?」
「じゃがいも洗った!」
「皮もむいたぞー」
「おぉー、すごいじゃないか」
頭をなでられる。
えへへ。なんだか誇らしかった。
「わふっ!」
「わんわんも手伝ったのか?」
「わふぅ!」
「ずっと見てた!」
「あははっ、それは大事な仕事だなぁ」
◇
「はい、できたわよー」
「やったぁ!」
テーブルの上に、シチューが並ぶ。焼きたてのパンもある。
「いただきまーす!」
『いただきます』
ぱくっ。
「あつっ。でも、おいしぃ!」
ほかほかだった。
じゃがいも、ほくほく。にんじん、やわらかい。お肉も、とろとろ。
「おかわりしたい」
「まだ一口目よ?」
お母さんが笑う。
「でも、いっぱいあるから大丈夫よぉ」
「やったぁ!」
◇
外は、だんだん暗くなっていた。
でも、おうちの中はぽかぽかだった。
シチューの湯気。みんなの笑い声。カチャカチャ鳴るスプーンの音。
「こういうごはん、なんだか落ち着くなぁ」
お父さんが、ゆっくり言った。
「そうねぇ」
「ボク、シチュー大好き!」
「わふっ!」
「わんわんも好きだって」
「あははっ」
なんだか、みんな嬉しそうだった。
◇
「ふぁぁ」
「眠そうねぇ」
「いっぱい食べたから」
おなかいっぱい。ぽかぽか。
なんだか、おふとんみたいな気分だった。
「今日はいっぱいお手伝いありがとうね」
「うん……」
ちょっとだけ、えらくなった気がする。
窓の外では、夜の風が静かに吹いていた。 でも、おうちの中は、今日もあったかかった。




