第二十二話 かえる、ぴょんぴょん
「わぁ……!」
田んぼの近くまで来た時だった。
ぴょんっ。
「おぉ?」
草むらの中で、何かが跳ねた。
「今のなに!?」
「わふっ!」
わんわんも、ぴこんっと耳を立てる。
ぴょん。ぴょんっ。
「あっ、また!」
緑色の小さな影が、草の間を飛んでいく。
「かえるさんよ」
後ろから、お母さんが笑った。
「かえるさん!」
ユウトは、ぱたぱた駆け寄る。
◇
田んぼのまわりは、春の水でいっぱいだった。
きらきら。お日さまの光が、水面で揺れている。
ぴょこん。
「あっ、いた!」
小さなかえるが、石の上に乗っていた。
「ちっちゃい……」
みどり色で、つるんとしてる。目が、まんまるだった。
「かわいいわね」
「わふぅ」
わんわんも、じーっと見ている。
でも。
ぴょーんっ!
「あっ!?」
かえるは、急に跳ねた。
「飛んだ!」
ユウトも、ぴょんっと追いかける。
◇
「まてまてー!」
ぴょんっ!
「あっちいった!」
ぴょんぴょん。かえるは、草の間を飛んでいく。
「わふっ!」
わんわんまで追いかけ始めた。
「あははっ、わんわんも!?」
でも。
ぴょーんっ!
「わふぅ!?」
急に目の前を跳ねられて、わんわんがびっくり。
ぴたっ。
「……」
わんわん、固まる。
「あはははっ!」
ユウトは、大笑いした。
「びっくりしたの?」
「わふぅ……」
ちょっとだけ恥ずかしそうだった。
◇
その時。
「ユウトー、そーっとだよー」
お母さんが、手を振る。
「急に追いかけると逃げちゃうからね」
「そーっと……」
ユウトは、こそこそ歩く。
かえるさん。じーっ。
「……」
かえるも、じーっ。
「こんにちは」
ぴくっ。
「ボク、ユウトだよ」
かえるは、まだ動かない。
「おともだちになれるかなぁ」
その瞬間。
ぴょーんっ!
「あーっ!」
また逃げた。
「むずかしい……」
「ふふっ、かえるさん元気いっぱいだからね」
◇
ぴちゃん。
「あっ」
今度は、小さな水たまりにかえるが飛びこんだ。
波紋が、まるく広がる。
「おぉ」
ユウトは、しゃがみこんだ。
「泳げるんだ」
「そりゃ、かえるさんだもの」
「すごいなぁ」
わんわんも、水たまりをのぞきこむ。
くんくん。
すると。
ぴょんっ!
「わふぅっ!?」
また跳ねた。
「あははっ!」
今日二回目だった。
◇
「ボクも、かえるさんみたいに跳べるかなぁ」
「えぇー?」
ユウトは、ぴょんっと飛ぶ。
「ぴょん!」
「わふっ!」
わんわんも飛ぶ。
「ぴょーん!」
「あははっ、わんわん上手ー!」
ぴょんぴょん。ぴょんぴょん。
なんだか楽しくなってきた。
「お母さんもやる?」
「お母さんはやめとくわ」
くすくす笑っている。
◇
そのあとも。
かえるを見つけて。追いかけて。逃げられて。
ぴょんっ。ぴょんっ。
田んぼのまわりは、とってもにぎやかだった。
「いっぱいいるね」
「春だからかしらねぇ」
風が吹く。草がさらさら揺れる。
遠くで。
けろけろ。けろろ。
「あっ、鳴いてる!」
「ほんとだ」
田んぼの向こうから、かえるの声が聞こえてくる。
「なんて言ってるのかなぁ」
「こんばんはー、とか?」
「そっかぁ!」
ユウトは、なんだか納得した。
◇
「ふぁぁ……」
「いっぱい遊んだ?」
「うん……」
ぽかぽかのお日さま。さらさらの風。ぴょんぴょんのかえるさん。
なんだか、いっぱい動いた気がする。
「わふぅ」
わんわんも、ぺたんと座った。
「わんわんも疲れた?」
「わふ」
しっぽ、ぱたぱた。
田んぼの水は、きらきら光っていた。春のかえるさんたちは、今日も元気いっぱいだった。




