第二十一話 名探偵ユウト
「リサー、まだー?」
「ちょっと待ってぇー!」
ぽかぽかのお昼だった。今日は、リサと一緒に村の広場で遊ぶ約束をしている。
「わふっ!」
わんわんも、しっぽをぶんぶん振っていた。
「おまたせー!」
ぱたぱた。リサが走ってくる。
「あっ」
でも。
「どうしたの?」
リサが、急に立ち止まった。
「……ない」
「?」
「ないの!」
リサは、あわあわしながらポケットを探している。
「どうしたの?」
「お母さんにもらった髪飾りがないのー!」
「かみかざり?」
「お花の形のやつさっきまであったのにぃ……」
リサはすごくしょんぼりして、今にも泣きそうな顔だ。
「だいじなやつ?」
「うん……」
「むぅ」
それは大変だ。
「わかった!」
ユウトは、びしっと指を立てた。
「ボクが探す!」
「ほんと!?」
「わふっ!」
「わんわんも!」
なんだか、探偵みたいだった。
◇
「まずは……」
ユウトは、うーんっと腕を組む。
「さいごに見たの、どこ?」
「えっとねー」
リサは、指を折りながら考える。
「おうち出てー、橋わたってー、お花見てー」
「お花?」
「うん!」
「そこだ!」
「えっ」
ユウトは、びしぃっ!と指をさした。
「きっと、お花見た時に落ちたんだ!」
「おぉー!」
リサが、ぱぁっと顔を上げる。
「名探偵だ!」
「めいたんてい!」
なんだか、かっこよかった。
◇
てくてく。みんなで、お花を見ていた場所へ向かう。
春の風が、そよそよ吹いていた。
「ここだよ!」
リサが立ち止まる。
「おぉー」
道ばたには、小さなお花がいっぱい咲いていた。
「髪飾りさーん!」
ユウトは、しゃがみこんで探し始める。
「どこー?」
「わふっ!」
わんわんも、くんくんしていた。
「ないねぇ」
「むぅ……」
草の間にもない。石の近くにもない。
「ほんとにここかなぁ」
その時。
「わふっ!」
「あっ?」
わんわんが、ぴょこんっと走り出した。
「わんわん?」
くんくん。くんくん。道の端っこを、ずんずん進んでいく。
「まってー!」
◇
わんわんが止まったのは、小さな橋の前だった。
「わふっ!」
「橋?」
「ここ通った!」
リサが言う。
「でも、なんでここ?」
ユウトは、じーっと地面を見る。
「……あっ」
橋の木のところに、なにか引っかかった跡がある。
「これ!」
「ほんとだ!」
「髪飾り、ここにぶつかったんだ!」
「おぉぉー!」
リサが、きらきらした目になる。
「名探偵だぁ!」
「えへへ」
なんだか、もっと探偵っぽくなった。
「じゃあ、落ちたのは……」
ユウトは、橋の下を見る。
さらさら。小さな川が流れていた。
「まさか……」
「川!?」
「わふっ!」
みんなで、川をのぞきこむ。
◇
「どこだろ……」
きらきら。水が光って、ちょっと見えにくい。
「むぅー」
その時。
「わふわふっ!」
「あっ!」
わんわんが、川の近くでぴょんぴょんしていた。
「なにかあるの?」
近づく。
すると。
「あーっ!!」
草の間に、ピンクのお花の髪飾りが引っかかっていた。
「みつけたー!!」
「ほんとだぁー!!」
リサが、ぱぁぁっと笑う。
「わんわんすごい!」
「わふぅー!」
しっぽ、ぶんぶんぶん!
「名探偵わんわんだ!」
「じゃあボクは……」
リサは、ちょっと考える。
「助手!」
「じょしゅ!」
「あはははっ!」
リサが笑った。
◇
「よかったぁ……」
リサは、大事そうに髪飾りをつけ直す。
「もう落とさないようにしなきゃ」
「うん!」
「でも、見つかってよかったねぇ」
「わふっ!」
春の風が、ふわっと吹く。草がゆらゆら揺れた。
「ねぇユウト」
「んー?」
「また探偵ごっこしようね!」
「うん!」
「次はもっとむずかしい事件!」
「おぉー!」
なんだかわくわくした。
「わふぅー!」
わんわんも、やる気いっぱいだった。
さらさら流れる川の音。ぽかぽかのお日さま。春の村は、今日ものんびり平和だった。




