第十八話 リーナお姉ちゃん
「お姉ちゃーん!」
「なーにー?」
リーナは、洗濯かごを抱えながら振り返る。
春の風が、そよそよ吹いていた。お庭では、草がゆらゆら揺れている。
「見て見てー!」
リサが、ぱたぱた走ってきた。
「またお花?」
「うん、今度は白いやつ!」
小さな手には、しろつめくさ。
「ほんとだ。かわいいわねぇ」
「えへへー!」
リサは、とっても嬉しそうだった。
◇
「リサー、そんなに持って大丈夫?転ばないようにねー」
「だいじょーぶ!」
手に洗濯物を両手いっぱいに持って走ったその瞬間。
「わぷっ!?」
ころんっ。
「あーもう!」
リーナは、慌てて駆け寄る。
「ほら言ったでしょー?」
「あはは、こけちゃった」
リサの周りには、洗濯物が散乱したいた。
「もぉ〜」
ぺしぺし。リサについた草を払ってあげる。
「痛くなかった?」
「へーき!」
リーナお姉ちゃんは、リサの様子を見た後、周りの洗濯物を集めて、パンパンと草を払っている。
「ほんと元気なんだから」
リーナは呆れながら笑った。
◇
「お姉ちゃん、これなーに?」
「んー?」
リサが指差したのは、小さな虫。
「ありさんよ」
「ありさん!」
リサは、ぺたんとしゃがみこんだ。
「どこいくのかなぁ」
「お仕事中なんじゃない?」
「えらーい!」
じーっ。
リサは、夢中になって見ている。
でも。
「あっ、ちょうちょー!」
ぱたぱたぱたっ。
「今度はそっち!?」
また走っていく。
「待ってー!」
リーナも追いかける。
春の風が、髪をふわりと揺らした。
◇
「ふぅ……」
やっと追いついた頃には、少し汗ばんでいた。
「リサはいっつも元気いっぱいよねぇ」
「えへへっ!」
本人はぴんぴんしている。
「お姉ちゃんも走ろー!」
「えー、走れませーん」
「むぅー」
リサは、ほっぺをふくらませる。
「じゃあ、お花摘みする?」
「するー!」
一瞬で機嫌が直った。
「単純なんだから」
リーナは、くすっと笑う。
◇
二人で並んで、お花を摘む。
たんぽぽ。しろつめくさ。小さな紫のお花。
「いっぱいだぁ」
「春だからねぇ」
風が吹く。花がゆらゆら揺れた。
「ねぇお姉ちゃん」
「なぁに?」
「お姉ちゃんって、なんでも知ってるね!」
「えぇ?」
「お花も、虫さんも、ありさんも!」
「ふふん、当然よ。お姉ちゃんなんだから」
えっへん。と胸を張る。
「うん、お姉ちゃんは何でも知ってる!」
きらきらした目で見上げられる。
「……」
なんだか、ちょっと照れる。
「うん、お姉ちゃんだもん」
そう言うと。
「わぁー!かっこいい!」
「えへへ」
悪い気はしなかった。
◇
「できたー!」
リサが、しろつめくさを持ち上げる。
「冠つくったの!」
「わぁ、上手!」
「お姉ちゃんにつける!」
「えっ、私?」
ぽすっ。
頭に、しろつめくさの冠が乗った。
「お姫さまみたい!」
「わぁ、ありがと~」
「あははっ!」
リサは、大笑いしていた。
でも。
「それじゃ、私が作ったのはリサにあげるね」
「わぁ、やった!ありがと~、お姉ちゃん!」
リサもリーナも、少しだけ嬉しくなる。
◇
ぽかぽか。春の風。やわらかいお日さま。
リサは、摘んだお花を並べながら歌っている。
「るんるんるーん♪」
「変な歌」
「あっ、お姉ちゃん笑ったー!」
「だって変なんだもん」
二人で笑う。
にぎやかで。ちょっと大変で。でも。
「楽しいからいっか」
リーナは、小さく笑った。
春のお庭は、今日ものんびりだった。




