第十六話 サンドイッチでピクニック
「ユウトー、起きなさーい!」
「んぅ……」
朝だった。お日さま、ぴかぴか。窓の外では、小鳥さんがちゅんちゅん鳴いている。
「今日はピクニック行くんでしょー?」
「ぴくにっく?」
「リサちゃんたちと一緒に!」
「おぉー!」
思い出した。今日はみんなでお出かけの日だった。
ボクは、がばっと起き上がる。
「サンドイッチ作る!」
「ふふっ、ちゃんと起きられたわね」
お母さんが笑った。
◇
台所は、朝からいいにおいだった。
「わぁ……」
パン。たまご。ハム。しゃきしゃきのレタス。テーブルにいっぱい並んでいる。
「ユウト、パン押さえててね」
「うん……!」
ぺたっ。
お母さんが、パンにバターを塗る。その上に、たまごをのせる。
「たまごサンド、美味しいよね。ボク大好きなんだぁ。ねぇねぇ、お母さん、いっぱい作って。いっぱい」
「ふふふっ、いいわよー。たまごサンドいっぱい作ろうね」
「でも、次はこっち。ハムときゅうりね」
「サンドイッチいっぱいだぁ」
わんわんも、台所の下でしっぽぶんぶん。
「わふっ!」
「あっ、わんわんも食べる?」
「わふ!」
わんわんもサンドイッチが楽しみみたいだ。
しっぽをぶんぶん振っている。
◇
「ユウト、おはよー。早くっ早く!いこっ!」
外から、リサの声。
「はーい!リサ待ってー」
サンドイッチを持って外に出ると、今日は、リサの家族も一緒だった。
「おはよー!」
「おはよう」
リサは元気いっぱい。その後ろには、やさしそうなリサのお母さん。
「おはよー、ユウトくん」
「リサママ、おはよー」
さらに。
「ふふっ、ユウトくん。おはよ。」
「……?」
長い髪のお姉さんが笑った。
あっ、リサのお姉ちゃんのリーナお姉ちゃんだ!
「リーナお姉ちゃん、おはよ」
なんだか大人っぽかった。
「わふっ!」
「あっ、わんわんちゃん!」
リーナお姉ちゃんがしゃがみこんで、わんわんをなでなでする。
「真っ白でふわふわ〜!」
「わふぅ〜」
わんわん、とろけそうだった。
◇
みんなで村の外へ歩く。
春の風が、そよそよ吹いていた。草のにおい。お花のにおい。空は青い。
「どこまで行くのー?」
「丘のところよ」
「おぉー」
わんわんは、てってってっと楽しそうに先頭を歩いている。
「わふっ!」
「案内してるみたい!」
「あははっ、ほんとだ」
リサママが笑った。
◇
「わぁぁ……!」
丘の上は、とっても広かった。
草がゆらゆら揺れている。お日さまがぽかぽか。風が気持ちいい。
「ここで食べるの?」
「その前に遊ぼー!」
「うん、いいね」
リサが走り出す。
わんわんも、だだだーっ!
「わふぅー!」
ボクも、とことこ追いかける。
◇
「見て見てー!」
リサとリーナお姉ちゃんは、お花を集めていた。
「おぉー」
「これはたんぽぽ!これはしろつめくさ!」
「お花いっぱいだねぇ」
その時。
びゅうううっ!
「あっ!?」
急に強い風が吹いた。
「キャッ!」
リサママの帽子が飛んでいく。
「あーっ」
ころころころっ!
帽子は、丘の下へ転がっていった。
「待ってぇー!」
リサが追いかける。
でも。
「わっ!?」
斜面の途中で転びそうになった。
「リサ!」
「危ない!」
みんな、あわあわする。
帽子は、もっと下へ。
「どうしよう……」
その時。
「……おふとん」
ぼふんっ!!!
「出たぁー!?」
巨大おふとん召喚。
ふわぁっと草の上へ広がる。
「ユウトくん、それ何!?」
「おふとんだよ?」
「見れば分かるよぉ!?」
でも。
「これなら転んでも痛くない!」
「リーナお姉ちゃんも乗って!」
リサとリーナお姉ちゃんを乗せてボクは、おふとんを斜面へ押す。
すると。
すぃーーーっ。
「わわっ、滑った!?」
おふとん、丘をすべり始めた。
「わぁぁー!」
「速い速い!」
「わふぅー!」
わんわんまで乗ってる。
ふかふか。すぃーーーっ。
そして。
ぽふっ。
飛んでいた帽子を、リサがキャッチした。
「あっ!」
「取れたー!!」
おふとんは、そのままゆっくり止まる。
「すごぉーい!」
「でも、びっくりしたー。急におふとんが出てくるんだもん」
リーナお姉ちゃんがびっくりしていた。
「でもお姉ちゃん、楽しかったよね」
「うん、とっても。最高だったわ」
「わふっ!」
みんなの笑い声が空高く舞い上がった。
◇
「それじゃ、お昼にしましょっか」
「やったー!」
草の上にシートを広げる。
サンドイッチを並べる。
「わぁぁ……」
たまご。ハム。きゅうり。いちごジャム。
いっぱいだった。
「いただきまーす!」
『いただきます!』
ぱくっ。
「おいしぃ……」
「ユウトくん、ほっぺ落ちそうだよ?」
リーナお姉ちゃんが笑う。
「サンドイッチって、お外で食べるともっと美味しいね!」
「うんっ!」
風が吹く。草がさらさら揺れる。
「わふっ!」
わんわんも、サンドイッチを食べていた。
「わふぅ〜」
しっぽぶんぶん。
◇
食べ終わったあと。
「ふぁぁ……」
「ユウトくん、眠そう」
「ぽかぽかだから……」
お日さま。春の風。やわらかい草。
とっても気持ちよかった。
「うーん、おふとん」
ぽふっ。
「あははっ、また出した!」
みんなで、おふとんにごろんっと寝転がる。
「ふかふか〜!」
「気持ちいいー!」
「わふぅ」
わんわんも真ん中で丸くなる。
空は青かった。雲がふわふわ流れていく。
「なんだか、とってもしあわせね」
リサが、小さく言った。
「うん」
ボクは、眠そうにうなずく。
春の風が、みんなの上をやさしく通り過ぎていった。
「…………」
「…………」
「すぅ……」
ぽかぽかのピクニックは、お昼寝の時間へ変わっていった。




