第十五話 おふろで、ぽかぽか
「ユウトー、お風呂入るわよー」
「はーい、入るぅ」
夕ごはんのあとだった。今日はちょっとだけ風がひんやりしている。
でも、おうちの中はぽかぽかだった。
「お風呂、あったかい?」
「今日はちょっと熱めにしてるわよ」
「わぁ、やったぁ」
なんだか楽しみになった。
◇
お母さんは、ぱたぱた忙しそうだった。
「はいはい、タオル持ってー」
「んー」
「着替えはこっち。ユウト、また途中で寝ないの」
「まだ起きてるよぉ」
「半分寝てるわよ」
お母さんは笑いながら、ぱたぱた動いている。
お風呂の湯気。ごはんのにおい。石けんのにおい。
おうちの中が、なんだかふわふわしていた。
「あなたー、お風呂いいわよー!」
「おーう」
お父さんの声が返ってくる。
◇
「わぁ!」
お風呂は、湯気でもくもくだった。
ちゃぷん。
「あったかぁーい」
「だろー?」
お父さんも、肩まで浸かってきた。
お風呂から水がざばぁーん。と少し溢れる。
「ふぃ〜」
なんだか、とっても気持ちよさそうだった。
ボクは、桶をお風呂の中に入れて空気をブクブクさせて遊ぶ。
「気持ちいいなー」
「うん。お風呂好きー。楽しい」
「あははっ、お風呂楽しいかぁ。なら、そぉれぇ」
お父さんが動くと、ちゃぷちゃぷ。お湯が揺れる。
「わふっ!」
「あっ、わんわん!」
脱衣所の向こうから、わんわんの声が聞こえた。
「わんわんも入りたいの?」
「わふぅー!」
「ダメダメ、びしょびしょになるでしょ」
扉の向こうで、わんわんがぺたぺた歩いている音がした。
◇
ちゃぷん。ぽかぽか。
お父さんは、目を閉じていた。
「お父さん、ねそう?」
「んー、こうやってゆっくり目を閉じるとすごぉく気持ちいいんだよ」
「ボクもやってみようっと」
お父さんを真似てみる。なんだかおふとんの中にいるみたいで、気持ちいいい。
「ふぃ〜」
肩までお湯に入って、ゆっくり息を吐く。
そんなお父さんを見てボクは少し笑った。
「今日はお仕事たいへんだった?」
「まぁなぁ」
「どんなことしたの?」
「んー、悪い人がこの村に入ってこないか見張ってたんだよ」
「おぉー」
大変だったらしい。
でも。 お湯はぽかぽかだった。
「お風呂、気持ちいいねぇ」
「そうねぇ」
お母さんが、やさしく笑った。
◇
ちゃぷちゃぷ。
お湯の音。外では、春の風が葉っぱを揺らしている。
さらさら。
小さな窓から、夜の空が少し見えた。
「お風呂みたいな、おふとんあったらいいのになぁ」
「ふふっ、そうだなぁ」
お父さんは、嬉しそうだった。
「お風呂入ると、ぽかぽかになるものねぇ」
「わふー!」
脱衣所から、またわんわんの声。
「あははっ、わんわんも仲間に入りたいのかな」
「わふっ!」
返事していた。
◇
「お風呂からあがる前に10まで数えてあがるんだぞー。」
「んー、いーち、にー……」
「もうとけそうな顔してる」
「……はーち、きゅーう、じゅーう!」
よし数え終わった。あつい、あつい。お風呂から出る。ぽかぽかっと体が軽かった。
居間へ戻ると。
「わふぅ!」
わんわんが駆け寄ってきた。
「ただいまぁ」
ぽふっ。
わんわんが、ボクの足にくっつく。
「あったかい……」
「わふぅ」
しっぽ、ぱたぱた。
お父さんも、お母さんも、なんだか眠そうに笑っていた。
春の夜は静かだった。 おうちの中は、ぽかぽかだった。
「……すぅ」
「あっ、ユウト!髪乾かしてから寝なさーい!」
でも。 今日はなんだか、いつもよりもっと安心して眠れそうだった。




