第十二話 たけのこ、にょきにょき
「ユウトー、準備できた?」
「んー……」
ぽかぽかの朝だった。
今日は家族みんなで、裏山へ行くらしい。
「たけのこ掘りだぞー!」
お父さんは、しゃきーんっとスコップを持ち上げた。
「おぉー」
たけのこ。
春のこの時期になると、にょきにょき生えてくるらしい。
「わふっ!」
わんわんもしっぽをぶんぶん振っていた。
「わんわんも行くの?」
「わふぅ!」
「やる気いっぱいだなぁ」
お父さんが笑った。
◇
裏山の竹林は、とても静かだった。
「わぁ……」
細長い竹が、まっすぐ空へ伸びている。
さらさら。さらさら。
風が吹くたび、葉っぱが揺れた。
木漏れ日が地面へ落ちる。
「きれい……」
「竹林って気持ちいいわねぇ」
お母さんも笑っている。
地面は、ふかふかだった。
笹の落ち葉。土。春のにおい。
「さて、たけのこ探すぞー!」
「おー!」
「わふっ!」
お父さんは、ずんずん歩いていく。
そして。
「おっ、あった」
「はやい!?」
お父さんは、地面から少しだけ出ている茶色い頭を見つけた。
「これがたけのこだ」
「おぉー……」
ほんのちょっとしか出てない。
「むずかしそう……」
「慣れると分かるんだよ」
ざくっ。 ざくっ。
お父さんは、どんどん掘っていく。
「すごぉい」
「ユウトも探してみな」
「うん、いっぱい見つけるんだ」
◇
でも。
「……ない」
ぜんぜん見つからなかった。
地面、全部同じに見える。
「むぅ……」
お父さんは、もう三本も掘ってる。
お母さんも、小さいのを見つけていた。
「おーい、たけのこさーん、出てきてー」
叫ぶと自分の声がこだまして返ってくる
おぉー、おもしろい。
でもボクだけ、見つからない。
「たけのこさん、かくれんぼ上手……」
「落ち葉が、ちょっとだけ盛り上がってる場所があるだろ?」
「んー、どこぉ?」
「そこに隠れてることが多いんだ」
なるほど。と思い、探すがやっぱり見つからない。全部同じに見える。
その時。
「わふっ!」
「……?」
わんわんが、ある場所でぴょんぴょんしていた。
「どうしたの?」
わんわんは、地面を前足でかりかりしている。
「わふっ! わふっ!」
「あっ……!」
そこに。
ちょこん。
小さなたけのこの頭が見えていた。
「みつけたぁ!」
「わふぅー!」
「わんわんすごい!」
しっぽぶんぶん。
とっても誇らしそうだった。
◇
「よーし、掘ってみるか!」
お父さんがスコップを持ってきた。
「たけのこはな、まわりから掘るんだ」
「まわり……」
「真ん中をがつんすると、折れちゃうからな」
「おぉー……」
ざくっ。 ざくっ。
ボクも一生懸命掘る。
「んしょ……」
土は、思ったより固かった。
「がんばれー!」
「わふっ!」
でも。
「まだある……」
掘っても。 掘っても。
たけのこが終わらない。
「ながい……」
「あははっ、地面の下にいっぱい埋まってるからな」
「どこまで続くの……」
ボクは、ちょっと疲れてきた。
「これ、むりかも」
「後、もう少しだ。ユウト、がんばれー!」
お父さんが笑う。
その時。
「あっ」
土の下に、丸い部分が見えた。
「そこだそこだ!」
「?」
「そこが根っこだ。もう少しで終わりだぞ」
「おぉー……!」
急に、やる気が出た。
「あと少し!」
ざくっ。 ざくっ。
がんばる。
いっぱいがんばる。
「ぬぬぬ!」
そして。
「とれたぁ!」
ぐらっ。 ぽこんっ。
たけのこが抜けた。
「やったー!」
「わふぅー!」
でも。
「あっ」
下のほうが、少しだけ折れていた。
「……あれ」
ボクは、しょんぼりする。
「失敗した……」
すると。
「はははっ、初めてなら上出来だ」
お父さんが、頭をなでた。
「折れたところも食べられるぞ?」
「ほんと?」
「もちろん!」
なんだか、ちょっと安心した。
◇
おうちへ帰る頃には。
「いっぱいだぁ」
かごの中は、たけのこでいっぱいだった。
お母さんが、にこにこしている。
「まぁ、こんなに取れたの?」
「ユウトがんばったんだぞー」
「わふっ!」
「わんわんも!」
「あらあら、すごいわねぇ」
いっぱい褒めてもらった。
なんだか、ぽかぽかした。
「今日の夜は、たけのこごはんね」
「おぉー」
「楽しみだなぁ」
竹林の風は、さらさら気持ちよかった。
春は今日も、のんびりだった。




